彼女たちの時間
「⋯⋯はは、ほとんど寝れてないや⋯⋯」
あの後、家に帰った私は、眠れずにいた。
理由は簡単。 クラスメイトたちと会うことに緊張しているからだ。
ーーでも、私は逃げない。 だって孤独じゃないからーー
「行ってきます⋯⋯」
まだ、家族が寝ている中、私は学校へ向かった。
「さて! 昨日のやり残しから作業しますか!」
私は、朝のホームルームが始まるまで、生徒会室で一人作業をこなすのであった。
そして、教室の前。 閉まったドアの前に立っている私がいた。
中からは、賑やかなクラスメイトたちの声が聞こえる。 入るのが怖い。 きっと私が入った途端、みんなの冷たい視線が、私に向くに違いないーー
でも私は逃げない。 逃げーー
「はは、なにやってるんだよ私⋯⋯」
気がつくと、私は校舎裏のベンチに座っていた。 なぜか、ここにいると落ち着く気がする。 私はただ呆然と時間を潰した。
「⋯⋯ちょっと、横よろしくて?」
「⋯⋯⋯どうぞ」
私は不意に聞こえた声に返答する。
「ちょっと、どいてくださいまし」
「ああ、ごめんなさい。 失礼しました⋯⋯」
私は慌てて席を譲り、その場を去ろうとしたーー
「ちょっと! 瑞稀! どこへ行くのかしら?⋯⋯貴方のお母様から聴いてましてよ! 最近、ご飯を食べていないそうですわね。 ふふ、そんな時には、この私のご飯カバンの出番ですわ!」
私は顔を上げた、 目の前には自慢気な表情のミウミウと、大きなカバンがあったーー
「⋯⋯なぜカバンを持ち歩いているのですか?」
「これは手作り弁当ですの。 あまりにも多いから、カバンに入れて運んでいるのですわ! そうですの手作り弁当! 私のお手製ですわよ! 湊に作り方を教わりましたの。 これで好きな量を持って来れますわ!」
目をキラキラに輝かせたミウミウに、私は頭を下げた。
「⋯⋯ごめんなさい。 私、怖くてまた逃げちゃった⋯⋯私、駄目だね。 どうしても、人の目が気になって仕方なくて⋯⋯」
「美味しいですわ! さすが私。 完璧ですの!」
「⋯⋯やっぱり、私はミウミウみたいにはなれないよ⋯⋯ごめんなさい」
「うんうん、幸せ!」
私は、ベンチから立つと今度こそ、去ろうとするーー
「あ! あまりの美味しさに、我を忘れてむさぼり喰らってましたわ! ゴホン! 瑞稀! 私のお手製弁当を食べるのですわ! これを食べたら一緒に、教室に帰りますわよ!」
そう言うと、ミウミウは私に、お弁当を渡す。
そのお弁当はとても美味しいそうで、体がその弁当を求めていた。
一口、二口。
「うんうん、ですわ! 瑞稀も私の弁当の虜ですわね!」
「⋯⋯ご馳走さまでした」
「いい食べっぷりですわ! おかわりもありますわよ?」
「え? いやいいよ⋯⋯」
「そうですの? じゃあ教室に戻りましょ」
そう言うと、ミウミウが私を引っ張るように、教室へ連れて行く。
あれ? 授業中だったの! ミウミウやめて、みんなが私たちを見てるよ! 恥ずかしいよ!
「戻りましたわ!」
「⋯⋯おはようございます」
当然、授業中だったようで、クラスの視線が私に集中した。
「櫻井、倉石。 さっさと席につけ」
先生に促され、席に着く私。
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
姫様の視線が怖い。 彼女は、私をずっと睨みつけるのであったーー




