姫様をおだてよう
「おやおや、これは生徒会長さんじゃないですか? もう、昼休みですよ? 結構な重役通勤ですこと」
「姫様。 おはようございます⋯⋯」
授業が終わって早々に、姫様が私の元にやって来た。 彼女は、私に対して嫌味を隠さない。
そこで二学期になってからずっと気になっていたことを、聴いてみた。
「⋯⋯姫様。 いつもの元気で、気安い『ことね』はどこに行ったんです?」
「ふん。 そんなの私が聴きたいぐらいよ」
姫様は、悩ましい気に、高坂さんの方を向く。
「湊と話す時だけ、勝手に出て来て、後はだんまり。 イライラするわね。 ⋯⋯そして貴方にも」
姫様はそう言うと、私の机に座る。
「⋯⋯ふん。 寝不足ね、体つきも以前よりも落ちているわね⋯⋯」
「えっと、姫様?」
「なに? 自分は裏で頑張っていますアピール? ハア、そんなことをしたって、彩乃と同じことになるだけなのに⋯⋯」
あれ? そういえば、彩乃は? 見当たらない。
「彩乃は休みよ。 アイツ、深夜とかに毎日山登りをしているから、疲れが溜まっていたんでしょ。 舞香に心配ばっかりかけて、しょうがない姉ね」
私は、罪悪感でいっぱいになった。 もしかして私のせいでーー
「あれ? 美羽はどこ行ったの? 貴方知らない?」
そう言えば、いつもことねか私のそばにいる、ミウミウがいない。 その時、校内放送が流れた。
「ピーポパーポですわ! みなさん。 貴方達の昼飯である、購買のパンは全部、私がいただきましてよ! 悔しかったら、私の元に来るといいですわ! 先着で私の特性弁当を差し上げましてよ。 オーホホホ」
私たちは、お互いに顔を見合わせて苦笑するのであったーー
「⋯⋯ところで、瑞稀。 このままじゃ、学園祭は中止ね」
姫様は、まるで明日の天気を言うように、事実を告げる。
「さて、なにか言いたいことがあるでしょう? 瑞稀?」
姫様は、私に期待するような眼差しを向けた。
私には彼女の考えが理解出来た。 どうやら、怒ってもらうために悪戯をしたようだった。 嬉しそうな表情の姫様に私は言う。
「姫様。 貴方が、なにをしても文化祭は開催されますよ⋯⋯」
「⋯⋯へえ。 ただの生徒会長が、啖呵をきるじゃない」
「貴方こそ、ただの生徒でしょ。 川端ことね」
私がそう言うと、彼女は満面の笑みを浮かべた。
「ふふ。 そうね、私はただの生徒だったわ」
「ですから、貴方はせいぜい、一人の生徒として、文化祭を楽しんでください」
「ははは⋯⋯いいわね。 瑞稀、貴方最高よ」
そう言うと姫様は私に、一瞬ニコニコとして、ウインクをするのでした?
あれ! 『ことね』。
「はあ、『私』。 ⋯⋯まったくこれもあの子の作戦通りって訳ね」
「さすが『ことね』妹の扱いが上手いですね」
「⋯⋯瑞稀。 それよりも、貴方にはやらないといけないことがあるわよ。 はい、これが貴方のサボった時間のノートよ。 これを彩乃に届けなさい」
「もしもし、柳田です」
「お疲れ様です、高坂湊です。 文化祭の件ですが、行事継続でお願いします」
「あい、わかった。 ⋯⋯まったく板挟みは困るのう」




