塞ぎ込む彩乃 ーー桐原彩乃視点
彩乃は自分に対して責任を感じていた。
瑞稀に、変なことを言ったせいで、みんながギクシャクしちゃった。
私はただ、瑞稀が悩んでいるから、少しでも元気を出してもらいたくて、励まそうとしただけなのにーー
夏休みの海水浴場。 私は、うなされている瑞稀を見かけた。
「川端さん。 申し訳ございません。 許してください。 ⋯⋯だから、どうか⋯⋯家族には手を出さないで! ⋯⋯私だけ⋯⋯私が全部⋯⋯」
彼女の寝言には、こころあたりがあった。 私の推測によると彼女はーー
私は、頭に触れる。 瑞稀に触れてもらった頭にーー
彼女の笑顔が見たい! そして、褒めてもらって、その時はまた頭を撫でて欲しい、とそう思ったのだった。
「こんなことになるなら、なにも言わなければ良かった⋯⋯」
一人、自宅の部屋の中で泣き崩れる私。
その時、遠慮がちに、舞香が私を呼ぶ声がした。
「⋯⋯ごめん。 お姉ちゃん⋯⋯その、健ちゃんが来たよ⋯⋯」
「彩乃。 今いいか?」
少し遠くに健太の声がした。
「⋯⋯今日は、いつまで経っても来ないから、様子を見に来たんだよ。 ⋯⋯おいおい、どうしたんだ? いつものおまえらしくないぞ」
健太のことに、好意を持ち始めていた私にとって、この状況はとても恥ずかしいことだった。
「は、恥ずかしいわよ⋯⋯あまり見ないでよ!」
「ふ。 安心した、どうやら少し余裕が出来たみたいだな」
そう言うと、健太はソッポを向きながら、話しを続ける。
「文化祭な。 中止の打診が俺の親父に届いた」
「え! ⋯⋯と言うことは⋯⋯」
「そうだな⋯⋯このままじゃ中止だ」
「それは駄目! 絶対に駄目」
なんかしないと! このままじゃーー
私が動こうとした時、体のスイッチが切れたように倒れた。
「おいおい。 大丈夫かよ⋯⋯」
「え、ちょっと! なにするのよ!」
健太に抱えられた私は、布団に入れられた。
「⋯⋯今日は、ぐっすり寝とけ。 明日からも頑張れよ⋯⋯」
私はいつのまにか、夢の中へ落ちて行った。
「健ちゃん。 ありがとうね⋯⋯」
「いいってことさ⋯⋯おい! お前も来いよ」
「こんばんは⋯⋯」
「みずちゃん。 もうお姉ちゃんは寝てるよ⋯⋯」
「⋯⋯そうだよね。 ⋯⋯ごめんね彩乃⋯⋯」
「⋯⋯こいつ、頭を撫でられて、嬉しいそうだぜ」
「みずちゃん、お姉ちゃんを、あまり困らせないでよ」
「はは、本当にごめんね彩乃⋯⋯」
「さあ、行くぞ瑞稀! 俺たちの文化祭だ」
「ええ、その通りですね」




