瑞稀VS姫様 消えた『ことね』
ホームルーム。 今日は文化祭で、具体的なことを決める時間だ。
前には、クラスの文化祭実行委員の、桐原さんが立っている。 その横には櫻井さんと、川端さんもーー
「⋯⋯では、私たちが考えた内容は、こちらです」
彼女たちが、いつの間にか用意した紙を配る。
「私たちの出し物は、前回の話し合いで、模擬店に決まりました。 それで、今回はメニューを決めたいと思います」
配られた用紙には、メニューの候補が並んでいる。 彼女たちが考えて、候補を絞ったのだろう。
しかし、私は生徒会長として、ここで発言をしないといけないようだ。
「桐原さん。 ⋯⋯残念なことを貴方にお伝えしなくてはなりません」
「瑞稀? ⋯⋯なによ、そんなに改まって⋯⋯」
「メニューは決定されていると言う事実をです⋯⋯」
「⋯⋯? どう言うことですの、瑞稀?」
60、文化祭の内容を私が決める
クラスメイトたちが私に注目する中、私は答える。
「今年の文化祭は、大規模です。 ⋯⋯そのため、既に場所決め等は、完了済みです。 今更変更はありません」
「瑞稀? ⋯⋯まさか、用事ってこのことでしたの? 水臭いですわよ! それでしたら私も⋯⋯」
「櫻井さんは大丈夫です。 このまま、次の計画を進めましょう」
私は席を立ち、黒板に文字を書く。
「瑞稀⋯⋯どうかしまして? この前から、様子が変ですわよ⋯⋯」
「櫻井さん。 私は正常ですよ」
「瑞稀⋯⋯」
「⋯⋯瑞稀。 貴方、今辞めないと後悔するわよ」
「後悔? 川端さん、私にはよくわからないです」
「そんな風に、人を遠ざける発言と口調。 貴方らしくないわよ」
「貴方こそ」
「そうね。 ⋯⋯でも、今の貴方を見たら、絶対に『私』は怒るでしょね」
川端さんは、私を睨む。 凄い目力だ。 でも私はーー
「仕方ないことです。 私は生徒会長としての、責務を果たすだけのこと。 桐原さん。 どいてください」
「彩乃です⋯⋯」
「⋯⋯桐原さん」
「彩乃って呼んでくれないと、どかない! ⋯⋯いや、それだけじゃないわ。 後、ミウミウとことねって二人に向かって言わないと駄目!」
桐原さんの悲鳴が教室に響く。 クラスメイトたちは、私たちを唖然とした表情で見ている。
「おいおい。 お前たち落ち着けよ。 今、授業中だろ⋯⋯」
様子を観察していた、高坂湊が中介に入りこの場は、閉じた。
「⋯⋯で、倉石さん。 どのように決まったんですか?」
放課後の教室の中で、私たちは残っていた。 ーー私としては、この後に予定があるので早く解散したいがーー
私は、出来るだけ業務的に事実を告げる。
「⋯⋯以上が今回の文化祭の概要です。 では、私はこの辺で⋯⋯」
「待ちなさい、瑞稀」
「川端さん⋯⋯なにか問題が?」
「⋯⋯認めないわ」
「⋯⋯なんです?」
「こんな文化祭、川端家の名において認めないって言ってるの」
川端さんが大声で叫んだ。 他の三人は、悲しげな表情で俯いていた。
私はーー
「⋯⋯失礼します」
ーーまた、逃げた。
「校長、失礼するわ」
「これは⋯⋯ことね様。 どのような用事でしょう?」
「ああ。 ちょっと、今回の文化祭⋯⋯やめてもらえない?」
「文化祭をですか? ですが⋯⋯」
「いいわよね? 校長?」
「はい! かしこまりました!」
「じゃあよろしくね」
「ことね? 本当に文化祭をやめなくても⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
『大丈夫! 私にも考えがあるから!』
「え⋯⋯『私』?」
「どうしたんだ? ことね?」
「なんでもないわ⋯⋯」




