落ち込む瑞稀
私は動揺していた。 憧れの榊原結衣様に嫌われていたのだ。
朝、私が事務所に来た時、黒田先輩と新田先輩は目で合図をして来た。
結衣を休ませてあげてーー
二人とも、榊原さんのことが心配なようだ。 後から聞いた話しによると、彼女は私と別れた後、まっすぐに事務所へ来たらしい。
それを聴いて、私は榊原結衣という一人の女性について興味を持った。
それは、高校生でもアイドルでもない彼女のことだーー
昼休憩の時、榊原さんに詰め寄られた。
「アンタ! どう言うことよ! 普通事情を確認して、私を救助するでしょう? なんで、スルーした挙句⋯⋯そのまま、どこかへ行っちゃうの?」
彼女は、私に疑問を投げかけてくる。 その態度はなぜか寂しげだった。
ふと、昨日のことを思い出す。 私が寝る前、榊原さんは寂しそうだった。 そこで、私が、彼女の体に触れると、とても嬉しそうに微笑みを浮かべていたーー
あんな榊原さんの表情を、私は見たことがなかった。 彼女はアイドルーーいつもライブでは笑顔。 学園歓迎会の時も、子供たち相手に笑顔を浮かべていた。
けれど、この表情はいままでのどれとも違うーー本来の笑顔に見えた。
私は思った。 今回のコンサートで、榊原さんに本来の笑顔で微笑んで貰おうとーー
「⋯⋯ふん。 アンタの今回の目的がわかったわよ」
「ギク。 えっと、なんのことでしょう?」
「私たちを利用して、なにかをするつもりだったんでしょ?」
さっそくバレた! でも、悪いことじゃないからね!
「⋯⋯それがどうしたんですか? 貴方に今の所は関係ないですよね?」
「関係おおありよ。 アンタに変なことをされて、私の晴れ舞台がアンタの独断場にされる妄想を考えるだけで身も毛もよだつわ。 絶対、そんなことはさせない! コンサートの主役は私なの! アンタは、せいぜい影で私の栄光に嫉妬していればいいの⋯⋯ 話しは以上よ! 家に帰るわよ」
そう言うと榊原さんは歩き出した。 彼女の顔は見えなかった。
彼女の家に着いたけど、何も置いてなかった。 生活感がまるでない箱のようだった。
ーー彼女はここで、どう過ごしているのかな? 彼女の視線を感じる。 ーーなんだろこの違和感、どこかで感じたことがある? 姫様? ーーおかしい。 姫様にはことねがいるから、孤独じゃないはずなのに、何故かそのイメージーが頭から離れない。
しばらくすると、榊原さんが呆れた様に口を開く、帰れとーー
私は拒否した。 気づけば口から出ていた。
そして言われた。
「私、アンタのこと嫌いなの。 わかったら、さっさと帰りなさい」
彼女はそう言うと、バツが悪くなったのか、私から視線を逸らす。
私は榊原さんの家を後にしたーー
「⋯⋯アンタ! 帰ったんじゃなかったの!」
「え? お腹が空いたから晩御飯を買いに行ってましたけど?」
私があっけらかんに答えると、彼女は心底呆れた表情をしていた。
「⋯⋯あの、先輩の分も買って来ましたよ?」
「⋯⋯別にいらないわ! アンタと違って私は⋯⋯」
その時、大きな腹の音が聞こえた。 榊原さん、朝も昼も食べてないよねーー
「あれれ? なんの音かな? 大きな音がしましたけど?」
「⋯⋯アンタ」
怖いよ! 目力強いってーー 私はビクビク震える。
「ふふ。 アンタの怯えた表情、面白いわね」
「サディスティックですの!」
「あら。 なんでお嬢様風なの?」
ヤバイよ。 なんだか、嫌な予感がするんだけど、気のせいかな?




