転校生とお話ししよう
私はさっそく、櫻井さんの前に立つ。 彼女の顔をよく観察して見ていると、泣き腫らした後が見えた。 どうしたんだろ? なにかあったのかなぁ?
「櫻井美羽さんですね。 初めまして。 私の名前は倉石瑞稀と申します。 今はこのクラスの学級委員をしています。 どうぞよろしくお願いします。 それでお話しがありまして、間近に迫っている体育大会について⋯⋯」
「⋯⋯なんですかそんなことは、貴方より理解しています」
「なんですって! だったら説明してもらおうじゃない!」
「⋯⋯⋯わかりました」
私はキレた。 この土地のことはよく知っているつもりだ。
ーーでも、今はそんなことはどうでもよかった。
ただ単純に、櫻井美羽の態度が気に入らないだけである。
自己紹介で名前しか言わないこと! まるで私達は眼中にないって態度! 私がこのクラスの委員長として、絶対に改心させてあげるから!
10、生徒を改心させる
そう、息巻いていた私だけど、すぐに間違いだって気づいた。
最初は抑揚のなかった櫻井さんだったが、私が相槌を入れて会話しているうちに、段々声に元気が出始める。
次第にはドヤ顔までする始末。 彼女の笑顔が眩しくて私は嫉妬した。
「ふふ。 以上がこの学校の体育大会の歴史です。 偉大なる川端家の道筋とこの学校の繋がりが、よくわかりましたか? これで貴方もことね様の凄さが、理解出来ましたね」
私は、とんだ見当違いをしていた。 彼女はただの人見知りだったんだ。
それなのに私は勘違いして、馬鹿にされていると誤解して。
私は、頭を下げて俯いて現実逃避をした。
「⋯⋯うう。 サイン、コサイン、タン塩牛タン、食べたい⋯⋯」
「⋯⋯なんですの! 寝てしまいましたわ! ⋯⋯ちょっと貴方、起きるのですわ!」
「はい、おはようございます。 ⋯⋯えっとなんでしたっけ? 理想が世界を闇に覆う時⋯⋯」
「めっちゃくちゃ序盤ですわ! 偉大さが全然伝わってないですわ! ⋯⋯こうなったら放課後、最初から講義しないと⋯⋯ふふ。 楽しみですわね」
「え~、ゲームしたり、漫画、読みたいから嫌! あ、しまった! ゴホン⋯⋯体育大会が近づいていますので競技の練習を行います」
「貴方! 全然ごまかせてないですわ⋯⋯ ところで、私はことね様と常に一緒の種目ですのよね?」
「えっと。 それはね⋯⋯」
ついに来たか、やっぱり質問して来るよね。 私は昨日から考えていた言い訳を彼女に話す。
「じゃん! おめでとうございます。 貴方の役割は応援マスコットです!」
「なんですの? ⋯⋯応援マスコット? それは、どういう役割ですの?」
「競技に出ないで、応援だけする係だよ~」
「Why? どうしてですの⋯⋯」
「⋯⋯だって今から役割変更するの面倒⋯⋯ゴホン。 転校生である貴方に、配慮した結果です!」
「後で誤魔化しても丸聞こえですわ! この怠慢委員長!」
私の体を揺さぶる櫻井さん。 ーーところでさっきから口調が変わった?
ですます口調じゃなくてお嬢様口調なんだね、ふーん。
「マスコットの名前は『ミウミウ』に決定だね。 じゃ、一緒に頑張ろ」
「一緒に頑張ろ、ですの? はて、それはどう言うことですの?」
「⋯⋯体育大会当日は、私と一緒に司会しよう! 私もマスコット係だから」
「貴方は大会大会に出ないのかしら?」
「⋯⋯そうだね、私は出ないね。 だから、そのかわりに司会だよ」
「競技が少ないからかしら? ⋯⋯まあ、でしたらしかたありませんわね」
よし! 騙されてくれた。 これで本番まで、誤魔化そっと。
「ふう、気持ちいいな」
はあ、それにしても綺麗な金髪だったな、櫻井さん。 口調も相まって、完全にお嬢様だよ。 なんだろ、彼女と話してると楽しい気持ちになるのはーー
心がポカポカするよ。 どうしたのかなぁ私? まあ、いっか! それよりも久しぶりに凄く気分がいいな!
体育大会、櫻井さんと一緒か。 よし頑張るぞ!
風呂から出るとお母さんと目が合った。 私にお母さんが微笑んでくれる。
「瑞稀。 安心したわ⋯⋯」
「お母さん? どうしたの?」
「なんでもないわ。 よかったわね、瑞稀⋯⋯」




