櫻井美羽とお話ししよう
「櫻井美羽さんですね。 始めまして。 私の名前は倉石瑞稀と言います。 このクラスの学級委員をしています。 よろしくお願いします。 それでお話しがありまして、間近に迫っている体育大会について⋯⋯」
「そんなことは、貴方より理解しています」
「なんですって! だったら説明してもらおうじゃない!」
私は怒った。
理由は簡単だ、私はこの土地のことはよく知っているつもりだ。
ーーでも、そんなことはどうでもよかった。
ただ単純に、彼女の態度が気に入らないだけである。
自己紹介で名前しか言わないことーーまるで私達は眼中にない、その態度を私が、委員長として、改心させてあげる!
10、生徒を改心させる
「⋯⋯⋯以上がこの学校の体育大会の歴史です。 偉大なる川端家の道筋とこの学校の繋がりが、よくわかりましたか? これで貴方もことね様の凄さが、理解出来ましたね」
ーー長い、長すぎるよ。 普通にめちゃくちゃ喋るじゃん櫻井さんーー
私は、とんだ検討違いをしていた。 彼女はただの人見知りだったんだ。
それなのに私は、勘違いして馬鹿にされていると誤解してーー
私は、頭を下げて俯いて現実逃避をした。
「⋯⋯うう。 サイン、コサイン、タン塩牛タン、食べたい⋯⋯」
「⋯⋯なんですの! 寝てしまいましたわ! ⋯⋯ちょっと起きるのですわ!」
「はい、おはようございます。 ⋯⋯えっとなんでしたっけ? 理想が世界を闇に覆う時⋯⋯」
「めっちゃくちゃ序盤ですわ! 偉大さが全然伝わってないですわ! ⋯⋯こうなったら放課後、最初から講義しないと⋯⋯」
「え~、ゲームしたり、漫画、読みたいから嫌! あ、しまった! ゴホン⋯⋯体育大会が近づいていますので競技の練習を行います」
「貴方! 全然ごまかせてないですわ⋯⋯ ところで、私はことね様と常に一緒の種目ですよね?」
ーーついに来たか、やっぱり質問して来るよね。 私は用意していた言い訳を彼女に話す。
「じゃん! おめでとうございます。 貴方の役割は応援マスコットです!」
「なんですの? ⋯⋯マスコット? どういうことですの!」
「⋯⋯だって今から役割変更するの面倒⋯⋯ゴホン。 転校生である貴方に、配慮した結果です!」
「後で誤魔化しても丸聞こえですわ! この怠慢委員長!」
私の体を揺さぶる櫻井さん。 ーーところでさっきから口調が変わった?
ですます口調じゃなくてお嬢様口調なんだね、ふーん。
「マスコットの名前は『ミウミウ』に決定だね。 じゃ、一緒に頑張ろ」
「一緒に頑張ろ、はて? どう言うことですの?」
「⋯⋯体育大会当日は、私と一緒に司会しよう!」
「貴方は出ないのですか?」
「そうだね、私は出ないね」
「競技が少ないからかしら? ⋯⋯まあ、でしたらしかたありません」
よし! 騙されてくれた。 これで本番まで、護摩化そっと。
「ふう、気持ちいいな」
はあ、それにしても綺麗な金髪だったな櫻井さん。 口調も相まって、完全にお嬢様だよ。 なんだろ、彼女と話してると楽しい気持ちになるのはーー
どうしたのかなぁ私? まあ、いっか! それよりも久しぶりに凄く気分がいいな!
体育大会、櫻井さんと一緒か。 頑張るぞ!
風呂から出るとお母さんと目が合った。 私にお母さんが微笑んでくれる。
「瑞稀。 安心したわ」
「お母さん? どうしたの?」
「なんでもないわ」




