櫻井美羽登場
「倉石さんちょっといいかな?」
「えっと⋯⋯なんでしょうか?」
そう、担任の先生に声をかけられたのは、放課後のことだった。
私は焦った。
ーーまさか、私が体育大会の種目に参加してないのがバレた?
私は、冷や汗をかきながら、職員室に向かう。
「明日、クラスに転校生が来るんだ」
「あ、はい。 えー。 そうなんですね!」
よかったー、違ったー。 それにしても転校生? ずいぶんと間の悪いタイミングだなぁ。 体育大会は、今週末だぞ?
「⋯⋯お前の考えていることはわかった。 別に今更メンバーを変更しろとは言わない。 川端様が了承したんだろう?」
「はい。 そうです」
「問題はな、転校生がその川端様の関係者だと言うことだ⋯⋯言っている意味わかるか?」
「なんですって!」
私の顔色を見て、察した先生は「もう、いいぞ」とだけ伝えて私を帰らせた。
今は、クラスの連中と合流する気持ちになれず、家に帰りシャワーを浴びる。
やば! 川端家の関係者! また、お目付け役が増えるのかよ!
ーーまさか、また男じゃないだろうか?
嫌、教室がリア充の巣窟になってしまうわ! あんな、毎日、羨ま⋯けしからん雰囲気で楽しく会話して! 私も恋人が欲しいわよ!
ーーでも、それよりも欲しいのは友達だったーー
入学式デビューのせいなのか、クラス委員長になったからか、誰もが私のことを『委員長』として見ていた。
委員長としてや一人の生徒としての会話はあったが、みんな態度がどこかよそよそしい。
このままでは、私の高校生活のやりたいことリストは遂行できなさそうだ。
私は寂しさと悲しさでいっぱいになった。 でも、ここで号泣したら、お母さんに心配されてしまう。
シャワーの水滴に混じって、私は人知れず静かに涙を流すのであった。
「今日からみなさんと少し遅れて、同じクラスの学生になった、櫻井美羽さんだ。自己紹介お願いします」
「櫻井美羽」
「はい。 どうぞ、続きをお願いします」
「特にありません。 席に座ってもいいですか?」
そう言うと櫻井さんは、川端様の隣に座った。 先生は櫻井さんに問いかけました。
「あの、櫻井さん。 何故そこに、座るのでしょうか?」
「はい、簡単なことです。 私は、ことね様の世話をするために。 この学校に来たからです」
「まあまあ、先生。 ここは俺に免じてどうか、お許しください」
高坂さんが先生に向かって頭を下げると、先生は渋々と言った様子で諦めた。 ホームルーム終了後、桐原さんが三人の所へ向かう。
「はい! ことね様、一時間目の授業は国語です! わからなかったら、いつでも聞いてくださいね!」
「⋯⋯アンタ何者? ことねと、どう言う関係なの?」
「それは、私、川端ことねが答えよう!」
「⋯⋯つまり、ライバルって言いたいの、アンタは?」
「そうだよ~。 彼女と目があった瞬間感じたね! 私たちには因縁があると。 実際その通りだし⋯⋯」
私は遠くから、その様子を眺めていた。
川端様は、四人の中でやっぱりリーダー。
ーーニコニコと明るくて、とても眩しくて見れない。
そんな彼女に吸い寄せられるように、他の三人は集まっている。
私は四人が自分達の『ストーリー』に入っているのが気に入らなかった。
私も、あの中に入りたい! そう強く思ったのだった。
ーーならすることは、ただ一つ。
ここで、私も貴方達の『ストーリー』に加わるだけよ!




