倉石瑞稀出陣
朝、小鳥が鳴く声で、倉石瑞稀は、目を覚ました。 学校の入学式があるのにも関わらず、深夜まで紙に目標を書いていたので、まだ眠たい。 そこへ、彼女の母の声が聴こえた。
「瑞稀! ご飯出来たわよ! 早く起きなさい!」
「⋯⋯もう。 わかったよ、お母さん」
仕方なく、リビングへ向かう瑞稀。 そこで待っていたのは、彼女の両親と弟である。
「瑞稀! 今日は瑞稀の晴れ姿をバッチリ撮るぞ!」
「ありがとう、お父さん」
「もう、瑞稀! また、夜遅くまでゲームしてたでしょ!」
「⋯⋯ギク! えっと⋯⋯ごめん」
「⋯⋯まあまあ、母さん。 ちゃんと起きてるし、問題ないだろ」
「ねえちゃん、ズルい。 僕も徹夜でやりたい!」
「駄目よ! まったくも⋯⋯仕方ないわね⋯⋯」
そう言うと、弟が拗ねる。 お父さんはお母さんを宥めるーーいつもの朝の光景だ。 そんな日常が毎日続くのは、とても幸せなことだと瑞稀は思った。
瑞稀は今日から通う高校ーー理想学園の校門の前にいた。 さっそく、昨日書いたやりたいことリストのひとつが叶う。
1、理想学園の生徒として、校門を通過する
校門には、先輩ーー三年生の現生徒会のメンバーたちが、新入生たちを出迎えていた。
「ようこそ! 理想学園へ!」
「ありがとうございます!」
「うん? ⋯⋯君は、今日の新入生代表の倉石瑞稀さんだね」
「はい! そうです! 黒田陽介生徒会長!」
「君の演説、楽しみにしてるよ」
「ありがとうございます! 頑張ります!」
現生徒会長に激励していただき、心臓が高鳴る瑞稀。 そして、瑞稀はリストに完了のチェックを入れる。
2、現生徒会長ーー黒田陽介に会う
そして、入学式が始まり、校長先生の挨拶が終わり、いよいよ新入生代表の出番が来た。 瑞稀の頭の中は緊張と興奮でいっぱいだ。
「新入生代表 倉石瑞稀」
「はい!」
「えええ!」
瑞稀が張り切って声を出した後、誰かの驚く声が聞こえた。 瑞稀をはじめ、ほぼ全員の視線がピンク髪の彼女に集まる。
「ななな、なんで! 川端ことねが代表のはずじゃ⋯⋯」
その言葉に私は納得した。 ーーたしかに本来なら、そのはずである。
この土地を代々、守護する一族ーー川端家。
川端家の今代神子がなんと、同学年にいると言う事実。 当然、普通なら川端ことねが代表の挨拶をすることであろう。
しかし、新入生代表は私だ。 瑞稀は登壇する。
「初めまして、私の名前は倉石瑞稀です。 本日は若輩者ながら、新入生代表として挨拶をさせていただきます。 私は、この学校でやりたいことがたくさんあります。 ⋯⋯実は私は、この学校の一部制度に疑問があります!」
突然、新入生代表から聞こえてきたのは、学校に対する不満であった。 視線は既に、ほぼ全員彼女にむけられていた。
「私が納得いかない制度、それは全生徒の強制クラブ加入です! 放課後、必ず部活に出ないといけない⋯⋯そんなの間違っています! 私はこの学校を変えます! そのために、私はこの学校でやりたいことリストをですね、100個書いて来たので読みあげますね!」
「倉石さん、席にお戻りください」
「え~そんな⋯⋯この日のために夜しか寝ないで書いたのに。 私の理想が⋯⋯そうだ! 掲示板に貼ろ! ⋯⋯後ほど、コピーして貼りますからね! 私の活躍に期待してください!」
席に戻った瑞稀は、ホクホクした様子で、やりたいことリストにチェックを入れた。
3、新入生代表の挨拶をする
4、学校に自分の意見を伝える
5、自分の目標を発表する
後日、宣言通り掲示板に貼られた、倉石瑞稀の目標を眺める男がいたーー
「⋯⋯俺に会うことも、目標に入っているのか。 ⋯⋯他には、ほう。 面白いな。 一丁、彼女の計画に乗ってやるか」




