マッシュ王国。そして、現れる勇者魔王一行!
ジャスティスシティー地下に生まれたドクマッシュダンジョンが自爆してから三日が経った現在。
ジャスティスシティー中央区ジャスティス王宮はすでにマッシュ王国へと変貌していた。その王宮の宴会などをする広大な広間に魔王の魔手が具現化したキノコ美少女マッシュは、モシャモシャとチョコキノコを食べつつほくそ笑んでいた。
勇者である俺と、魔女、半魔女にジャスティス騎士団団長を、ジャスティスシティーの地下に作られたドクマッシュダンジョンに誘き寄せ、そこで自爆させる事で自分に都合の悪い人間達を消す事に成功したようだな。ったく、わざわざダンジョンを作ったと思えば俺達を始末するだけ用なんて、無意味な努力をしてくれたもんだぜ。
そんなこんなでマッシュはジャスティスシティーを手中に収め、自慢の緑のマッシュルームヘアをジャスティス騎士団の連中に団扇で扇がせていた。
どんだけ毒キノコ頭を扇がせても、毒の胞子しか出ねーぞマッシュ?
その王宮広間にガシャガシャと甲冑の金属音が多く鳴り響いて来た。
「来たわね。私のジャスティス騎士団」
そして、すでにマッシュの部下として働いているジャスティスシティーを守護するジャスティス騎士団の面々が、ジャスティス王宮の広間に集合した。そして、甲冑の金属音を鳴り響かせて新たなる指導者に対して敬礼をした。
『オールハイルマッシュ!』
「マッシュ! マッシュ! いいわね……この光景は。いずれラルク大陸全土がオールハイルマッシュの掛け声で埋め尽くされるの……想像するだけでも快感だわ……」
と、グイングインと緑のマッシュルームヘアを揺らす。そしてチェスの盤面のように整ったジャスティス騎士団の面々の整列を見つつ言う。
「勇者オーマの身体は手に入らなかったけど、これで世界の脅威である危険な存在である勇者と魔女は消えた。こうなれば後は各大陸の英雄や豪傑のみが残るだけ。その中で若く最強の身体を持つ存在の身体を乗っ取り、私が新たなる……そして完全なる魔王として君臨するの。魔王の魔手として使われる存在から、魔手である私が魔王として世界を真っ黒に染めてあげるわ。キノコの王国を作り上げてあげるわよ……ねぇ諸君!」
『オールハイルマッシュ!』
と、完全にマッシュの国になっちまってるようだな。ジャスティス騎士団もちと団長に異存し過ぎてた連中だったのかもな。まぁ、完全に従ってるわけでもないから全員顔は引きつってるのだけはマシな所か。このままだとキノコの胞子で脳まで洗脳されちまうだろうが。
俺や魔女達がドクマッシュダンジョンに埋め尽くされて消えてからのこの三日間で、暴走魔女となったメスパーが破壊した城の外壁もほぼ修復され、他の大陸への威力偵察部隊としての第一部隊が動こうとしてる所だった。
それがこのマッシュの目の前に整列をしているジャスティス騎士団達だ。
おそらく威力偵察部隊の帰還後、一月以内に他の大陸への侵攻を始める気だろう。ま、そんな事はこの勇者魔王オーマが許さねーけどな!
「新たなる王であるマッシュの名により、ジャスティス騎士団の面々はこれより隣国の大陸に威力偵察に向かってもらうわ。狙うは勇者魔王オーマが首都を崩壊させたテンゴク大陸。まずはまだ復興の最中にあるこの大陸を落とすの。進軍開始よ! マッシュ! マッシュ!」
『……』
と、ジャスティス騎士団の面々は反応すらしない。その光景にマッシュは驚く。ある程度のキノコ胞子の魔法洗脳が効いているはずなのにこのジャスティス騎士団は何故か反応が無い。
「どういう事? キノコ胞子魔法が解除されているとでもいうの? 完全にはかかってないけど、かなり洗脳は進行してたのに……」
「ま、そんなんは魔女と半魔女が解除したさ。そしてジャスティス騎士団の団長の鉄拳制裁で全員正気さ。そして、魔王の魔手であるマッシュは勇者魔王オーマの左腕として生きる。これでお前の描いたシナリオのエンディングは決まったぜ。なぁマッシュ?」
「――!? 誰!? その奥にいる男は――」
スッ……とジャスティス騎士団の面々が左右の壁に寄り、一人の黒髪で黒マントの少年が現れる。
漆黒の髪に魔女の衣装にも似た全身を包み隠す黒のフードマント。全身を包み隠す黒マント。これは主に両手を隠す為にある。相手に攻撃する瞬間を悟られない為のマントだ。
インナーは黒のシャツにベスト。
厚い生地のしっかりした素材を使ってる細身の黒ジーンズに鉄板が入った黒のブーツ。
返り血を浴びるから黒服が一番だ。
毎日洗濯出来るわけじゃないからな。
切れ長の瞳は殺意のみを宿し、オンリースキル・マジックウェポンの魔力で両手に現代兵器であるサブマシンガンを生み出した。
「マジックウェポン!?ま……まさか!?」
「……」
その出で立ちはこのマッシュも良く知ってる少年だ。何せ、この異世界に来てからずっと魔手として見てきた男だからな。
「どうしたマッシュ? もう俺の顔を忘れたか? それともイケメン過ぎて失神寸前か? 答えてくれよマッシュ」
「……お、お前は……何故お前が……!」
あわわ……と泡を吹くようなツラのマッシュは死んだはずの俺にビビってやがるな。そして、俺の背後から三人の美少女が現れる。
魔女。
長い黒髪に人形のように整った顔。フードマントで見えないがスラリと伸びる手足に顔を埋めたくなるやうな豊かな胸。
その美しき美貌の魔女は、男を惑わす妖艶な笑みを浮かべた。
メスパー。
黒髪ショートボブのノースリーブの純黒セーラー服を着た黒縁メガネの似合う、クラスの委員長みたいな魔法少女・漆黒の半魔女。
ほぼ無表情のままメスパーはテンパ戦の後に復活してから巨乳化したらしい胸をアピールするようにネコ招きポーズをとっておじぎをした。
ジャスティス騎士団団長。
黒髪ショートカット。全身甲冑姿の少年のような少女がマッシュを睨みつける。やけに威圧感のあるジャスティス騎士団団長だぜ。
そして、その美少女達の先頭に立つ偉大なる男。この異世界の魔術師達を主に現代兵器で散らして来た因果律すら変革する特異点・勇者魔王オーマである俺は毒キノコ野郎に向けて言う。
「よぅマッシュ。だいぶご機嫌じゃねーか。そのご機嫌をこれからも失うなよ?」
「ゆ……ゆゆゆ、勇者オーマ! 生きていたの!?」
「たりめーだ。勇者魔王オーマがたがだか毒キノコ野郎になんざ負けてられるかよ。散らすぞ」
「……っ!」
マッシュの野郎はいいツラしてやがるな。
そんなマッシュにドクマッシュダンジョンから上手く脱出出来た方法を教えてやろうと思う。
ドクマッシュダンジョンを脱出するまではこうだ。
「ドクマッシュダンジョンが爆発する……。確かにこの状況だと死ぬな。だが、俺は勇者魔王オーマ。常に策はあるのさ」
この状況で脱出する策……? と不審な顔をする団長は言う。
「三カ月もジャスティスキャッスルに来るまでムダにしていたお前が言う事か? 時間は無いぞ。策があるなら早くしろ。……魔女の調子も時間の経過と共に悪くなってる」
「そのムダがいいんだよ。人生のムダは後で自分に良い意味で返ってくる可能性もある。自分の行い次第でな」
両手を広げでやってやるか! と構える俺にメスパーは周囲の崩壊が酷くなって来たなというのを顔にも出さず言う。
「もうおそらく爆発まで一分も無いですわ。早く策を見せるニャーン」
「……策とはこれの事だ!」
『……!?』
ゴソゴソと腹の中をまさぐり一本の白い毛を取り出して高々と掲げた。俺は密かに賢者ショウセツの毛を奪ってたんだ。そのショウセツの縮れた毛をみんなに見せた。と、同時に殺人的なツッコミが入る。
『どこの毛だよ!』
「髪の毛に決まってんだろ! この世界の人間はパイパンが基本じゃねーのか? お前が言ってた事だぞ?」
ハハハ……と笑うフラフラの魔女は言う。
「ショウセツの髪の毛はストレートだよ? 何で縮んでるの? おかしいよね?」
「ヘソの中に丸めて入れておいたから湿気だよ。湿気が陰毛みたく縮れさせたんだ」
『……』
全員は嘘くさ……というツラをしてやがる。
本当だ!と、今はこんな事をしてる場合じゃねーな。
「……まぁ、とりあえずこの毛の話は本当だと言うのは今からわかる。ようは人生は大いなるムダや失敗をしてもいい。だが転んでもタダでは起きないって精神でいりゃいいんだよ。んなこんなで出てこい! 賢者ショウセツ!」
その言葉と共に、シュパアァ! というまばゆい光と共に賢者ショウセツは出現した!思った通りだぜ! 危機的状況を脱出する為の秘策を繰り出した俺だったが、その当人は茫然としつつ驚いた顔で周囲を見渡していた。
「……? 私は賢者ショウセツ。でも何故ここにいるんだろう?」
「とりあえずショウセツ今は時間が無い。もう十秒ほどでここは爆発する。脱出するぞ!」
「爆発? ――確かにこの感覚は爆発のエネルギー。カモン! ワープゲート!」
「飛び込めみんな!」
ショウセツ、メスパー、団長の後に俺が魔女を抱えて真っ白な円形の入口に飛び込んだ!
出現したショウセツのワープゲートに全員が飛び込んだ瞬間、このドクマッシュダンジョンは大爆発を起こした!
賢者ショウセツが召喚された事で俺達はドクマッシュダンジョンから脱出を成功させた。つまり、俺の作戦勝ちだぜ!
結果的に最悪な状況に招待した事により無理矢理ショウセツが逃げなきゃ行けない状況を作り出して、そのドサクサに紛れて助けてもらう事にしたんだ。ショウセツの時空世界である陽炎迷宮に入り込んだ俺達はそこでショウセツに見捨てられちまうが、何とか今回は三日で脱出を成功させた。前回は三カ月かかった脱出から比べればマシだぜ。
「……てなわけで、全員無傷で帰還出来たぜ。まぁ賢者ショウセツはまた見失ったが、今はテメーを倒す方が先だ。覚悟しろよ魔王の魔手マッシュ!」
「そういう事ね……ならいずれ私もショウセツを探さないとならないわ。私はこれからこのジャスティス大陸だけではない……全大陸を示すラルク大陸の魔王となる存在。だからこそ、このジャスティス騎士団と共にニセ勇者オーマ一行。お前達を殺してやる!」
「何がニセ勇者オーマ一行だコノヤロー。お前はこのジャスティスシティーを自分のモノとして動かせる事は無い。己が身の弱さを知れ。そして散れ……じゃねーや。俺の左腕の魔手として俺が死ぬまで使い倒してやるから喜ばしてやるぜ!」
正真正銘の最終決戦と行こうじゃねーか!




