ショウセツとオユキ
(霧の森をギガビームキャノンで焼き払ってやったぜ。これで視界は広がった。さて……どこにいやがる? 賢者ショウセツ……)
第三オーマスーツ・ブラックアンボビウムの長距離大砲であるギガビームキャノンでミストジャマーの深い霧の森の一角を消滅させた。これでこの森のどこかに隠れている賢者ショウセツをあぶり出す計算だ。ブラックアンボビウムの黒薔薇の巨大兵器に乗る俺と魔女は周囲を索敵し続ける。
(どこだ……どこにいやがる賢者ショウセツ……)
瞬間――明らかに吹っ飛んだ一つの大木の方向が変化したのを俺は見逃さなかった。これはつまりーー。
「飛ばされた大木が空中で軌道変更するわけねーだろ! 魔女、ハイパービームソードのコントロールを俺に寄こせ!」
「あいよコウハイ君!」
ズバーーーッ! とブラックアンボビウムに搭載される巨大な覇王剣・ハイパービームソードで違和感のある大木を切り裂いた!
その残骸に俺はハイパーバズーカを連射して撃ち込み、爆炎の中にフラッシュニードルを叩き込む。そしてすでにセットしておいた電磁で焼き尽くす檻の武装・プラズマリーダーの三基のリーダーに実行命令を出し、青白い光と共にその爆炎の凄まじい空間が焼かれた。
(空間全域に攻撃しつつ、奴が動いて移動するのを確認していたが毛ほどの反応も無い。まさかこの魔力結界の中にはいないのか……? だが結界の中にいないと声は届かないはずなんだがな……)
「コウハイ君、地面もメチャクチャでブラックアンボビウムを移動させるには厳しいわ。どうする?」
「チッ、ここまで攻撃してもショウセツを見つけられねーとはな。まさか本当にこの魔力結界の中に存在しないのか?」
「あり得るわよコウハイ君。あの白髪女は賢者。もしかしたらこの空間も現実とは違う場所に飛ばされてるかもしれないわ。一度攻撃はやめた方がいいかも」
「確かにこの状況じゃ、攻撃は無理だな……それにもう魔力も減ってきてるからブラックアンボビウムを起動させているのも厳しい状況だ」
「でしょ? 一度解除した方がいいかもね。長期戦になったら回復の手段も無いしヤバイかも」
「だな。いきなり賢者に出会った事が裏目に出たのもな。確実にこの空間から出る方法を探さないと……」
瞬間――俺の全身を刺激する声が聞こえた。
「なら降参? 私の居場所は突き止められず自然破壊しただけ。それがこの世界の特異点ならやはり勇者魔王というのは存在しない方がいいのかも」
「言ってろ貧血白髪野郎。確かにこの状況からブラックアンボビウムを立て直してる時間は大きな無駄になる。――だけどお前を見つけるにはこれでいいんだよ!」
自爆覚悟で残るマイクロミサイルなどを全弾撃ちつくし、このブラックアンボビウムの真下を爆破した!
このブラックアンボビウムの攻撃が届かないのは唯一この真下である地面だ。なら賢者ショウセツは俺達の真下に隠れてるのが妥当だろうよ。シュウゥゥ……とショウセツが生み出した外界から隔離させていた魔力結界が解除される。
奴が生み出されていた魔法結界が解除されたのが真下に賢者ショウセツがいたという証拠だ!
「見つけたぞ賢者ショウセツ! 覚悟しろーー!」
地面に正面を向いて倒れるブラックアンボビウムから飛び出していた俺は、霧の奥に見える少女の胴に手甲に仕込んであるアサルトアンカー射出してを巻きつけ拘束した。すでにブラックアンボビウムは解除され、魔女もショウセツの前方で逃げないように構えている。魔法結界が破壊され挟み撃ちな以上、逃げ場は無い。
「さて、こっから次元を超えるワープゲートについて尋問してやるぜ。動いたら貴様の足は蜂の巣になるのを忠告しといてやる」
俺はハンドガンを構えたままアサルトアンカーで捕らえた賢者ショウセツを振り向かせた。とりあえずコイツにワープゲートの事を聞いておけば、これから勇魔金玉のついたチンコを回収し、そして魔王の魔手であるマッシュから失った俺の腕である魔王の魔手を取り戻せば俺は現代に帰還して覇王として世界に君臨してやるという野望を成し遂げる事が出来る。その為の条件である安全に現代に帰還するワープゲートというモノを生み出す方法という条件はこの賢者ショウセツによってクリアされようとしている。
「もっとちゃんと振り返れよ賢者ショウセツ。正面の魔女ではなく、背後にいるこの勇者魔王オーマを見ろ」
「……」
極寒の新雪よりも白い肌を持つ美少女賢者ショウセツ。常に寒がりなクセに真っ白なメリハリのある肢体を包む白いワンピースしか着ていない謎の女。長い艶やかな髪も白く、長い睫毛も同じく白いが、その陰気な瞳のみは燃えるように赤い。
(魔のつく女のようにこの女も外見は最高の美少女だ。見た目だけなら惚れてるぜ……)
ふと、その振り返る賢者ショウセツと目が合い俺は見とれた。その目は黒く、肌もそこまで色白じゃないな……それに髪も黒いぞ……? 待てよ……? つーか、コイツは誰だ!? そしてこの女の前方にいる魔女も言う。
「コウハイ君……どうやら当てが外れたようね。どう見ても……」
「……? 顔が違う?賢者ショウセツじゃない? 誰だお前は……」
「私はオユキ。オユキ……です」
『オユキ?』
戦闘モードを解除し、この謎の少女の話を聞くとオユキという少女だった。ミストジャマーの霧の中で彷徨っていた少女と出会う俺達は半ベソをかくオユキの面倒を仕方なく見る事にした。このオユキの話を聞く限り少し前までこの辺を通行していた商業馬車のバイトをしてきた盗賊ニートの荷台から霧に惑わされはぐれた少女だった。俺達はそのオユキと話し込む。
「オユキ……か。ニートの馬車が落ちたなら仕方ない。助けてやる。と言っても、俺達も迷ってるがな」
「そうそう! 旅は道ずれって言うしね! 一緒にこの霧の森を切り抜けましょう!」
「旅は道ずれ魔女はアバずれって言葉を覚えておくといいぞオユキ」
「コラ! センパイを怒らすとコウハイ君の秘密を暴露するよ! 何とコウハイ君は勇者魔王のクセにチンコを盗まれたのです! 男ではなく女になってしまいました! 残念!」
「コラ! 人のズボンとパンツを下げるな! チンコが無くても人に見せていい場所じゃねーし!」
「ハハハハッ! 二人共面白いですね!」
魔女の野郎は俺のズボンを下ろしてオユキに今の俺の現実を教えやがった! 最悪な魔女だぜ! でもまーオユキもやっと笑ってくれたから良しとするか……よし!
そんな漫才のような事をしつつ、俺達三人は深いミストジャマーの森の中をひたすら歩く。
「しかし、オユキ。お前よく生きてたな。俺達はお前のいた少し前で相当暴れてたんだがな」
「はい。何か凄い音がし出したので地面に出来た穴に隠れてました」
「それはエライよオユキちゃん。コウハイ君は暴れ出すとメチャクチャ乱射し出すからね。下の銃は乱射出来ないのに」
「うるせーぞ魔女! チンコ取り戻したら貴様の処女をド派手に散らしてやるぜ!」
「ハハハハッ! 二人共本当に仲がいいんですね。心が通じ合ってるよう」
『そんなわけない!』
「ほら、通じ合ってる」
『……』
と魔女と顔を見合わせて気まずくなる。
オユキの奴、何気に言われたくない事を言いやがるな。やはり女は恐ろしい生き物だぜ。
「オユキは他の大陸から物資を輸送する商業馬車のニートの馬車にいたんだったな。奴はポテチばかり食べてるが、グウタラ生活を送るニートにクラスチェンジするまでは働く予定らしいから役には立ってたろ?」
「えぇ。ニートさんはとても役に立つ方でした。スライムにも変化出来るし、スライム乳で男性の視線を釘ずけにしてましたからね。とても私には出来ない事です。オーマさんもこの世界に来てから早い段階でニートさんに知り合い、ポテチをエサに情報を得ていたようですね。ニートさんもオーマさんを好いていましたよ」
「フン、ニートの奴め。まぁ奴は顔もそれなりにいいし役には立つ存在だ。奴の情報はかなり正確だからな。ただ、自分の利益で動くからたまに敵側にいる事があるから困るのが難点だがな」
「敵側に回ってもニートさんを敵として倒さないなんてオーマさんは器が大きいのですね。流石は勇者です」
「フン、まぁ俺は勇者魔王だがな。たまにシメとけばニートはカワイイ子猫のようなもんだ。奴も俺にゴミ袋のように使い倒される運命なのさ。この魔女のようにな」
ふと、間に入って来る魔女は言う。
「なーんかオユキちゃん、やけにコウハイ君に詳しいね。何でかな?」
「色々ニートさんから話を聞いたから知ってますよ。全てはニートさんの情報です」
「へぇ、じゃあこの異世界で最高の武器って知ってるコユキちゃん?」
「おいおい魔女、余計な事を言うなよ。俺の個人情報だ」
「あれだけの広範囲を消した爆破兵器を知らないのはおかしいよ。核弾頭アトミックフレイヤは知ってるはず」
『……』
まぁいいか。
これを機会にちょっと仕掛けてみるかね。
ここで魔女からバトンタッチする俺はオユキに質問する。
「核弾頭は知ってるかオユキ?」
「えぇ……ニートさんから聞いたり、人づてに聞いた事があります。都市の一つを壊滅させた禁忌の兵器」
「その核で生まれる雲はキノコ雲だ。別名レディオアクティブクラウドとも言う。勇者魔王に詳しいニートといたならお前も知ってるだろ? 核弾頭の雲を?」
「え、えぇ。確かに核弾頭はキノコ雲ね。あのキノコ雲は凄まじい恐怖だったわよ……それはもう天変地異が起こったかのような恐怖だったわ……」
「だろ? 俺の核弾頭は恐ろしいキノコ雲だ」
「そうですね……核弾頭はキノコ雲が上がるのが特徴。人の生み出した悪魔の兵器」
寒そうに震えるオユキの手を握る。
ビクッとするオユキは俺に微笑み、魔女にも笑みを浮かべた。
「何か寒いですわ。早くこの霧の森からでたいです」
「そうだな。オユキは必ず俺が助けてやるよ」
ハンドガンを背中に突き付け、オユキに射撃した。赤い鮮血が森の地面を汚す。
「ぐっ!? 何故私を撃つの……!」
「何でって、それはお前が怪しいからだよ。疑わしきは罰するのがこの異世界での生存方法だぜ? それに、まず現代という時代を知ってる賢者ショウセツを疑ってみると一つ思い浮かんだ事がある。お前の名はオユキ……現代の漢字にすると小雪。読み方を変えればショウセツ。つまり、お前は賢者ショウセツだ」
「たったそれだけの偶然で私が賢者ショウセツだと? ……状況証拠にしては甘すぎるんじゃない?」
「それについてはまだ証拠はあるさ。お前は現代について知っていた。本物の核弾頭は爆発すればキノコ雲が発生する。それをお前は知っていた。俺が生み出した核弾頭アトミックフレイヤは十字架の閃光の後に生まれるのは十字架雲。現代の事を知らなければ十字架雲って答えるんだよショウセツちゃんよ」
「……なるほど。勇者魔王オーマ。この異世界の特異点として存在するだけの事はあるのか。あー、寒い寒い」
やはりオユキは賢者ショウセツだ。
もうコイツの罠にはかからねーぜ。
「ったく現代なら忍者みてーな素早さと変装の術だ。転職でもしたらどうだ?」
「ワレはニンジャではない……賢者じゃ!」
「ニンニン。ってニンジャか?」
「賢者じゃ! ボケ勇者! 戦狂いが!」
「戦狂いだと?」
俺は賢者にいままで敵に対して戦闘を無理に仕掛けた事を咎められる。
「主は戦いを好み過ぎておるようじゃ。敵と見ればすぐに仕掛ける。そんなに他者が怖いかぇ?」
「人を見透かすような発言だな。賢者なら俺の心まで見えるのか? 確かに俺はこの異世界に来てから大勢の人間と関わり、時に都市消滅させたりもした。勇者魔王という特異点としての力は明らかにこの異世界の崩壊を招くキーにはなるだろ。だが俺は無秩序に壊したいモノを壊して来たわけじゃない」
「壊された側からすれば秩序も無秩序も無いわ。あるのは全てが消えた現実だけ。そこの魔女は自分の魔女という運命から逃れようという都合によって大罪を犯したの。その全ての悪は勇者魔王オーマそのものよ。この異世界を現代の技術を教えて変革させてしまう、悪の枢軸」
「……悪の枢軸ときたか。もう言い返すのも無駄だな。俺は俺の現代へ戻るという目的の為に、賢者ショウセツ。貴様をゴミ袋のようにズタボロになるまで利用させてもらうぜ。それがお前の嫌う混乱であろうともな」
「無駄に混乱させるならこの断絶空間で死ぬのもいいわ。別に勇者魔王がいなくても世界は進むだけだから」
左手の白く細い指をショウセツは真横で縦に下ろした。すると、次元の切れ目のような裂け目が生まれた。魔女はすぐさまその暗黒が揺れ動く裂け目の奥を見据える。
「コウハイ君……あそこはおそらく出口。この断絶空間から出られる出口よ」
「あら魔女。中々察しがいいのね。その通りこの切れ目は外の世界に戻るゲートみたいなもの。この異空間は外とは時間の流れが違う。戻れても数年経過してるかもね。じゃあ……」
「じゃあじゃねー! 大人ロリの賢者!」
「大人ロリって言うな! せめてロリにせい!」
「うぅ……」
突如、賢者ショウセツはすすり泣く。
「マ、マジかよ……泣くって……マジかよ……」
横にいる魔女に嫌な顔をされつつも、俺はいう事は言わなきゃならん!
「ショウセツ貴様を永遠に追いかけてやるぞ!」
次元のゲートに足を踏み入れ、手を振る白髪の女に俺は叫ぶ。
「待て! 賢者ショウセツ!」
スッ……と賢者ショウセツは次元の切れ目のような場所に入り、そこはズズズ……と閉じた。すぐさま俺と魔女はその裂け目の前に立つが全ては時遅しだった。
「やってくれるぜ賢者ショウセツ。次会ったら確実に俺のゴミ袋シリーズの一人としてズタボロになるまで利用してやるぜ……」
グッ……と拳を握りしめた。
俺と魔女は、外の空間とは時間の流れが違う賢者ショウセツの生み出した異空間に閉じ込められた。
とっととここから脱出してやるぜ!




