メスパーベビーの暗躍。そして、放たれる核弾頭アトミックフレイヤ
浮遊城テンゴクシティーから赤髪魔剣士エミリは落下した――。
上空約五千メートルに浮かぶジゴクシティーの頭上の悪魔となるこの場所から落ちれば誰もが死ぬ。しかし――。
「……さっきはここから落ちれば死ぬと思ったが違うな。まだエミリの目的は達していない。最後のあの笑みを考えると残念だがおそらく死ぬ事は無いだろ。だが今はエミリよりもメスパーだ。奴がこの核弾頭を爆発させる核となる存在だからな」
そして、俺がエミリと争ってる間にこのテンゴクシティーもあちこちで火の手が上がっていやがった。これは半魔女メスパーがやった事だな。どうやらメスパーもちゃんとこのテンゴクシティーにいたか。なら核もここにあるって事だな。この核の爆発の影響の少ない上空からアトミックフレイヤを投下し、ジゴクシティーを消滅させる気か……。新たに上がる炎を見て、俺は大きな魔力反応を感じるテンゴク王宮へと急いだ。
「チッ、テンゴク王宮も崩壊してやがるな。それに強い魔力反応が多くある。ここはまるでダンジョンになってやがるぜ……」
半魔女となる魔法少女メスパーの超能力魔法により、テンゴク王の住むテンゴク王宮は死のダンジョンへと変貌していたんだ。テンゴク人は死んではいないが倒されていた。テンゴク人を守護する自動人形兵器オートマンによって――。
「おいオートマン。お前達はテンゴク人を守るはずなのに何故テンゴク人を攻撃してる? お前達もメスパーに操られてるのか?」
「ワレワレは既にオートマンではナイ」
「オートマンじゃない? どう見てもお前達はオートマンじゃねーか。頭のメモリがイカれたか?」
「ワレワレはオートマンではナク。メスパーベビーなのダヨ」
「な、何だと? ――っ!?」
テンゴク人が管理していた侵入者抹殺魔力人形・オートマンの群れはメスパーの超能力魔法により、メスパーベビーへと変化した。漆黒のメスパーを幼女化したような群れだ……これはかなりウゼーぞ……。
俺の鼓膜から三半規管の機能を崩壊させるような不快な声が脳髄を駆け巡る。
『ニャーン』
「……ぐっ! この数のニャーン……はかなりキチーぜ……」
「本体じゃないんだな? 本体はどこにいる?」
「さぁどこでしょう?」
オートマンを改良した人形兵器か。
超能力魔法を使うメスパーらしいぜ。
その鬱陶しいメスパーベビーはギョロ!と俺の方を向いて一斉に言う。
『ビービービー。メスパーベビー』
「ビービービーって、テメェはBB弾のような同じ弾の群れだな!」
ムラムラムラムラ!とクソに群がるハエのようにいつの間にか増えるメスパーベビーを蹴散らさないとならん! こうなりゃ、対人殲滅用モードで行くしかねーか……。
「マジックウェポン……ヘビーウェポンモードに移行。殲滅決戦火気管制システムオールレッド。そして各マジックウェポンステムチェック。通信マジックウェポン。システムオンライン。火器管制マジックウェポン。システムオンライン。マップシステムオンライン。脈拍、血圧、心拍数共に異常。マジックウェポンシステムオールレッド……さぁ、殲滅の時間だ」
ヘヴィウェポンモード。
混乱した戦況で索敵サーチを強化する為に左目を補助するサーチスコープ。そしてそれに搭載された左耳に固定されるヘッドバルカン。左腕に束ねた槍のようなガトリングガン、両肩から伸びる小型バズーカ、右手に小型のサブマシンガン、両腰に魔力熱を吸収したヒートダガーと敵城爆破解体用の手榴弾。両足の外側の左右に五連のグレネード、背中のバッグパックには三基のリーダーがあり、そのリーダーが地面に刺さるとトライアングルの中にいる存在を焼き払うプラズマリーダーになる。
「……これが俺のヘヴィウェポンモード。全てを焼き払う対人用殲滅決戦兵器だ。ザコを無双するには、このヘヴィウェポンモードが爽快だぜ!」
索敵サーチを強化する為に左目を補助するサーチスコープが輝き、このテンゴク王宮に蠢くオートマンの群れを確認して作戦行動を開始する。
「さて……俺が本物の天国と地獄を見せてやる」
※
「ウラアアアアーーーッ!」
両手に持つサブマシンガンとガトリングガンが他人を恫喝するような激しい怒声のような音を立てて火を噴く。周囲に群がっていたメスパーベビー達は閃光のような弾丸の雨をくらい次々に倒れて行く。しかし、所詮はメスパー本体ではなく操り人形。
(これはメスパーが俺に無駄な魔力を使わせる為の罠と時間稼ぎだろ。こんな茶番には付き合ってられん。一気に終わらせてやるぜ――)
すると、前衛の死骸の背後で蠢く後衛のメスパーベビー達は三百六十度の円形の中心にいる俺に対して一斉に魔法攻撃を仕掛けて来る。
『ビービービー! メガネビーム!』
「馬鹿どもめ! 自滅しろ!」
バッ! と上空に飛び上がる俺は中心にいる俺への着弾が無いためにメガネビームを自分達にくらうメスパーベビーを見た。そして残るメスパーベビーを始末しようと両手のサブマシンガンとガトリングガンのトリガーを引くと、何故か大爆発を起こした。
「武器が爆発した!? チィ! さらに上空にメスパーベビーだと!」
『うん。メスパーベビーだお?』
そのメスパーベビーの群れは鋭利な魔法針を超能力で操り、俺の火器を破壊した。空中で態勢を崩す俺は数多の魔法針に対して両肩のバズーカで対抗した。
「バズーカの爆風で散れ!」
バシュ! と両肩のバズーカの弾丸を射出し、上手く俺の全身を串刺しにする魔法針をバズーカの爆風で散らした。そしてその風圧を受けて急降下し、ザッ……と地面に着地する。空中で生き残ったメスパーベビー数体と、地上にいるメスパーベビー達と対峙する。あぁ……この景色は辛いぜ。精神的にな。
「……ったく、お前一人でもウゼーのにこんな無数にいたらストレスマッハだぜ。微妙にカワイイベビーなんてのはちょっと卑怯だ。それに、だお。じゃねーぞタコ」
『タコは空にはいませんよ? だお? はいます』
「だお? って何だよ? そんなモンスターはいねーぞ。まぁ、そんなモンスターはお前かメスパーベビー」
『その通りだお』
ククッと微笑む俺は首をコキコキと鳴らし、空を見上深呼吸をする。
「さて、俺もお前と同じ事をした。さて何でしょう?」
『?』
「答えはどうしたメスパー?」
『……!? まさかあの空から落ちて来てる物体は――!』
「正解だ。正解者には死を与えよう」
さっきまで空中にいた時に上空に投げていた手榴弾が落ちて来て、メスパーベビーはその爆発と共に散る。爆炎の中を左目にあるサーチスコープでメスパーの微かな挙動を確認しつつ、やや左方向に左足の五連グレネードで攻撃してメスパーベビー達を右に寄せる。そして俺は腰のヒートダガーを引き抜き閃光のようにその群れに肉薄していた――。
「――はあぁぁぁっ!」
ザシュ! ザシュ! ザシュ! と血で芸術を生み出すように残るメスパーベビー達を散らして行く。そこにいるメスパーベビー達は俺の身体を超能力魔法で縛り付ける。
『動けないでしょう勇者魔王。このまま殺してあげますよ。勇魔金玉は頂きますけどね』
「そんな行為は無意味だ。三秒以内に脱出してやるぜ」
『こちらは二秒あれば自爆できますわ』
「自爆だと? チィ!』
瞬間、俺はサーチスコープに搭載されているヘッドバルカンを射撃した――と同時に無数のメスパーベビー達は自爆した。右手の勇者烙印の五芒星が輝き、絶対防御の光の防御壁・ライトシールドで全てのダメージをガードした。ヘッドバルカンで0.1秒だけメスパーの自爆時間を遅らせたのが良かったようだ。残るメスパーベビーは残りわずかだぜ。だが、その俺の動きの弾みは止まる。
「……一気に片付けたいのにこの気配。ベビーに本体の気配がしやがるな。答えろよメスパー」
「……ニャーン」
メスパーの本体の意思が一つのメスパーベビーに宿り、話し出す。いや、これがメスパーの本体のようだな。ならば核弾頭はこの王宮のどこかにあるのか?
「エミリはこの間にテンゴク人の幹部達を仕置するのです。その邪魔はさせないですわよ」
「エミリはもうこのテンゴクシティーにはいないぜ? それに天テンゴク人がいくら死のうが知った事じゃないさ。何なら俺が先にテンゴク人を始末してやるよ。エミリが狙うテンゴク王をな。そして核弾頭アトミックフレイヤの発射は阻止するぜ」
「エミリはもう作戦行動を開始したのですね……まさか私を囮にするとはやってくれますわね。なら私も私の作戦行動に入りましょう。ではさよならニャーン」
「作戦行動? どういう事だメスパー? ってマジで消えるんじゃねー! ニャーン!」
「ニャーンですわ。ンを強調して下さい。もう一回」
「……ニ、ニャーン」
「少し恥ずかしがってますがまぁ良しとしましょう。半魔女メスパーのニャーン講座。ここで終わりです。受講料は一億ですニャーン」
「一億ぅ!? バカかテメー! 散らす! マジここで散れ!」
「嫌ですニャーン」
「もうお前の間合いだ。このまま終われ――」
悪鬼のような形相の俺はメスパーの首筋に左右から首を切断するようにヒートダガーを突き刺した! 赤い鮮血が噴出すと同時にニタァ……と微笑むメスパーは言う。
「なので自爆ニャーン」
「ニャーン……?」
ズバババーン! と連続してメスパーベビーは自爆しやがる!
「くっ! わざと自爆しやがるのか! 確かに自分と関係無いならいくら自爆させてもいいな。やってくれるぜ!」
これはメスパーとしては楽でいいな。
俺としては最悪だがな!
「時間稼ぎなんかしても俺は止まらないぞ! 俺は核弾頭を消す! そしてお前を魔女にクラスチェンジはさせん!」
「私は必ずクラスチェンジしますよ。そしてエミリは核弾頭でテンゴクシティーを消す。全ては私達の計画通り」
「そんな事を耳元で囁かれると、ソレに加担したくなるな。ソレが死の囁きでも興奮するぜ」
俺の背後から抱きつくように耳元で囁くメスパーベビーに微笑む――と同時にメスパーベビーは自爆した。爆煙の周囲に飛ぶメスパーベビー達はどこかに瞬間的に逃げたはずの俺を探してキョロキョロとしてやがる。そのメスパーベビー達は爆煙の中から放たれるサブマシンガンの射撃で息絶える。そう、俺はメスパーベビーの自爆攻撃から逃げていなかったんだ。
「……ゲホッ、ゲホッ。案外たいしたこと無い爆発だぜメスパー。所詮はベビーだな。気合い入れれば耐えられるだけの威力だ。これじゃ興奮しないぜメスパーよ?」
だがよ……。
(メスパーベビーの言葉が四方八方から飛んで来て、思考が惑わされてる? それと左目のサーチスコープの補助能力がこの全く同じ姿の敵を認識する情報に俺の脳が拒否反応を起こしてるんだな……だから反応が一瞬遅れるんだ……)
俺はサーチスコープのシステムをカットし、機械に頼らない自分の視界と感覚で射撃戦を繰り広げる事にした。今はベビーとはいえ幾度と無く戦ってる相手だけに敵も俺の手の内はある程度知ってるからからな……前衛を犠牲にして後衛はキッチリ対策を練るようにしてやがるぜ。これだから魔のつく女は嫌いだ。
ゾロゾロ……とメスパーベビーは俺を取り囲むように近寄って来る。いい度胸だぜ。
「もう少し敵の数を減らさないと、コイツと会話をするのも大変だぜ!」
『殺さないでニャーン』
「黙れ。散れ」
ここで背中のバックパックから三基のリーダーを飛ばし、その三つは広範囲に距離を取り地面に刺さる。そして射出すると同時に飛び上がっていた俺は、三角形の電磁の檻が発生すると同時に叫ぶ!
「プラズマリーダー!」
ズバババッ! と高出力の電磁スパークが大量のメスパーを焼き払う!
焼け焦げた人形達は炭化し、焦げ臭い匂いが俺の鼻をつく。残るメスパーベビーは十数体か。このメスパーにそろそろ本当の目的を聞かなくちゃならねーな。
「一つ聞かせろ。お前は魔女になって何をするつもりだ? そうまでして何をしたいんだよ?」
「この世界の変革」
「この世界の変革だと?」
「そう、この世界は今現在変革の時を迎えてます。死の商人テンパが消えてゴールド大陸は新しい秩序を作る王が必要になっている。そしてこのテンゴク大陸も大きく変わろうとしてる……この変化の時にこの世の全てを変革させるのがこのメスパーです。新たなる異世界の為に、貴方の現代と行き来が出来るニューゲートを生み出すのですよ。そうすれば魔法という能力は否応無く現代兵器に対抗する為に発展し、新しいステージに上がれる。その全ての力を得るのがいずれ魔女となる私、メスパーの役目です。ニャーン」
「魔の頂点に立ち、魔の進化を見続ける存在という事か。お前の大義はこの異世界に毒だ。散らせてもらうぞ」
「魔女になる私は過去の魔女の全てを超えますわ。それは貴方の相棒の魔女の無価値を意味する事になるでしょう」
「魔女はこの世に一人でいい。お前は散れ」
ズガガガガガッ! とガトリングガンの暴力的な射撃音が空間に響き、とうとう全てのメスパーベビーを蹴散らした。そして消滅寸前のメスパーベビーの残骸に宿るメスパーは言う。
「ニャニャニャ。もう遅いですわ……核は放たれました……」
「!? 今更何を言ってやがる? ブラフだろ? 騙されないぞ! エミリに核の発射はできない。そして、お前の本体はこのテンゴクシティーのどこかで隠れてる。ここからジゴクシティーを狙うならお前がここにいないとおかしいからな」
「バカですねぇ……アトミックフレイヤがこのテンゴクシティーから下界に向けて発射されると何で思ったのですか? それは大いなる勘違いですわよ勇者魔王オーマ」
「……な……何だと? それじゃあ……核は……」
「地上のジゴクシティーからこの天空のテンゴクシティーに向かって放たれていますニャーン」
何と! 核弾頭アトミックフレイヤは、地上のジゴクシティーからこの上空に浮かぶ浮遊城テンゴクシティーへ向かって発射されていた! 完全にエミリとメスパーに裏をかかれたぜ! クソが!




