テンゴクフェスティバル
テンゴクフェスティバルが開始された――。
テンゴクフェスティバルの始まりを告げる無数の花火が遠くの空に打ち上げられ、大広場に集まるこの国の人間や他国の人間達も大いに盛り上がっている。七色の花火が様々な模様や形を成していてキレイだぜ。俺は魔女と共にその火花が散る光景を眺めていた。
『……』
にしても、頭上にテンゴクシティーがあるからって真上に花火を打ち上げられないのは俺的に微妙だぜ。やっぱ、目の上のたんこぶならぬ、頭上のたんこぶだな。いっそテンゴクシティーも散らすか?
まぁ、そんなこんなでジゴクシティーでの一年に一度のビックイベント・テンゴクフェスティバルは開始された。
「よし、テンゴクフェスティバルが開始されたぞ。オープニングの花火は見た。こっからは俺達は観客として楽しむ事は無い。この騒々しさを利用してテンゴク人のチェックと赤髪魔剣士エミリと漆黒のメスパーが暗躍してないかを確認する。いいな魔女?」
「ほいほーい! んじゃ私はエミリとメスパーのチェックをするよ。私は魔眼が無いから真上のテンゴクシティーから降りて来るテンゴク人を遠くからバレないようにチェックするのは厳しいからね。そこはコウハイ君に任せた!」
「……一つ言っておくが、テンゴクフェスティバルに出てる屋台で何かを食べまくって動けなくなるのだけはやめろよ? 屋台で何かを食べてもいいが、あくまで客のフリをしながらあの二人の魔の女を探せ。いいな?」
「ほいほーい! 魔の女の探索はこの頼れるセンパイに任せんしゃい! 焼きそばとフランクフルトと綿アメ……そしてラムネ! 食べて飲んで暴れてやるわよ! 待ちに待ったテンゴクフェスティバルですもの! この魔女のパワーを見せてやるわ! 覚悟してなさい全ての屋台店主共!」
「覚悟するのは貴様だ魔女。どうやら俺の言った事がまるで通じてないらしいな? 散るか? え? 散るか?」
と、俺は魔女の口の中にハンドガンの銃口を突っ込んで言う。無論、目は笑っていなくてマジだ。あ……あ……と口をパクパクさせる魔女は反省したようだ。この魔女はテンションが上がるとロクな事をしないからな。多少強引でも戒めとくのは必要だぜ。
「どうだ? 俺の話はわかってくれたかなセンパイ?」
「当然です! このセンパイはコウハイ君の言う事は何でも聞きます! 以上です! 敬礼!」
ビシッ! と魔女は俺に怒られたくないから無駄に敬礼してやがる。ったく、面倒な女だぜ。魔のつく女は本当に面倒なやつばかりだ。
「……さて、ジゴク王の話が本当ならそろそろテンゴク人もこの地上に現れるだろ。テンゴクシティーの下部ゲートをチェックしてテンゴク人の存在を確認して観察してやるぜ」
「と、その前に――」
「痛いっ! 左腕を触るな!」
「やっぱり魔手の影響が身体にも出てるね。このセンパイの目は誤魔化せないんだよ?」
「フン、黙れ魔女」
と、どうやら左腕の魔王の魔手が暴走を始めている事に魔女は感づいていたようだな。ゴールドキングダムでのテンパ戦で魔手を使い過ぎたのが原因だがあの戦いに勝つには仕方なかった事だ。こんな微かな変化に気付くとは流石は俺の魔女だな。
「触れただけで痛いなら、もうそろそろ魔手が自我を持ってコウハイ君を乗っ取ろうとする頃でしょう?その状態で戦ってると死ぬわよ?」
「そうだな……ならこの右腕を封印してくれないか?魔女なら特殊な封印式を使えるだろう?おそらく禁呪だろうがな」
「あるよ禁呪魔法。これを使ったら当分は右手の魔法は使えないのと、魔眼とかも使用するのは不可能ではないけど多様しないでね。封印式が早く解ける事になるだろうから」
「おう、なら任せたぜセンパイ。この右腕の魔手の封印を頼む」
「えぇ、センパイに全てを委ねなさい……」
ゴクリ……と息を飲み魔女の美しい顔から流れ落ちる汗を見つめた。凄まじい魔力が魔女の両手で生み出され、それは一つの球体になり星がその中で煌めいている。まるで宇宙のようなその魔力球体の中で、煌めいていた星々は塵となり真っ暗な球体になる。吹き出す魔女の汗は凄まじく、長い黒髪は汗でびしょ濡れだ。それを拭ってやりたいが禁呪魔法の邪魔になるから出来ない。
(……これが禁呪魔法の死霊か? まるで般若だな……)
禁呪魔法の闇のオーラが輝き、魔女の後ろに死霊が見えた。そして禁呪魔法が発動する――。
「魔封印式・デスインフィニットサイレンス!」
ズバァ! と死霊の般若が魔女の魔力球体を斬り裂き、その溢れ出るエネルギーが俺の左腕に注がれる!全ての毛穴という毛穴から禁呪魔法の闇が注がれて行き、不快感と絶望感に襲われる俺は勇者の力を発動させてしまいそうになるが何とか堪えた……。
「ぐおおおおっーー!」
「魔封印完成ね……」
「……へっ、やけに派手な演出で怖かったが、これで一安心だ。ありがとよセンパイ」
「いえいえ、かわいいコウハイ君の為ですからね。もっと感謝してくれていいよ?いいんだよ?」
と、肘でツンツンと俺をつついてくる……。
オッパイつついたろか?
(コイツもこーゆー所が無ければ普通に尊敬出来る所もあるんだがな。でもまぁ、これがあってこそ魔女だ。魔のつく女はやっぱり、面倒な女じゃないとな)
ウネウネする魔女の頭を撫でてやり、俺は一応魔女に感謝してやった。
そんなこんなで、マジックデスサイレンスの禁呪にて魔女に封印式をしてもらった。これでこの左腕じゃ魔法は使えないが、魔手が自我を持って暴れられるよりはマシだ。
これで当分は魔手も暴走しなくて済むだろう。
この戦いが終わったら、自我を持つ魔手を完全に俺の意思で動くように制御しないとならんな。
俺はテンゴクフェスティバルが行われていて全ての人間が盛り上がっている中、影のような動きで自分の目的を遂行しようとしている。こっちから出向かなくても天から地上の都市を支配していたテンゴク人と出会えるなんて楽でいいぜ。このテンゴクフェスティバルの祭りの最中にここに来れた事を感謝する。
「……さて、この辺の屋根のうえでいいかな。よっと」
ジゴク人の警備兵の索敵範囲外である建物の屋上から、俺は魔王の魔眼を使いテンゴク人が地上に降り立つ瞬間を目撃する為にながめていた。魔眼は立ち止まって全神経を集中させると、左目に映る人物の魔力の強さや相手の弱点だけではなく、話す言葉さえも理解できてしまう能力があるんだ。俺はソレを今回有意義に使おうと思う。疲れるが、仕方あるまい。まぁ、のり塩ポテチでも食いながら頑張るさ。
(年に一度しか地上に降りないというテンゴクシティーの人間は見ておく必要がある。これが赤髪魔剣士エミリの復讐相手なら尚更だぜ)
すると、状況は少し動いた。
「ジゴク人の警備兵が動いた? もしや……いやそうだ。テンゴク人めとうとう来やがったな……」
浮遊城テンゴクシティーの下部エリアの門が開き、ジゴクシティーと繋がっている長いハシゴのような斜めに伸びる階段部分に白いサンダルを履いた老人が現れる。
「あのジジイが噂のテンゴク人か。エルフみてーな耳をしてやがるな。男なのに」
これから行われるテンゴクフェスティバルの主賓であるテンゴク人がとうとうこの地上であるジゴクシティーに姿を現した。そのエルフ耳の外見が特徴的な天国人の服装はこうだ。頭には白い冠をかぶり、長い白髪の口ひげ蓄えている。白く光沢のある法衣はやや大きめで細身のテンゴク人の一族の身体を大きく見せるように作られているようだ。俺からすれば、エルフ耳はやはり女じゃないとシックリこないなというのが印象だな。
(男には厳しく、女にはだらしなく……)
案外普通だぞテンゴク人の王も。
ただのエロオヤジ以外の感想が出ないな。
それにさっきから全然大したこと話さねーし。薄々思ってたが、地獄人が無意味に慣習として恐れて崇めているだけで、実はテンゴク人って恐ろしいほどの無能なんじゃないか?
ジゴクシティーの面々に案内されるテンゴク人の王・テンゴク王は白いハンカチで口元を抑えながら、やや眉を潜めて嫌味を吐くように言う。
「こほっ、こほっ……。全く、相変わらず地上は誇りっぽいよのぅ。ワレは汚らわしいのは嫌いなのじゃ。女と食べ物が美味しくなければ地上になど降りては来ぬのだぞ? それに地上とは地上だけに痴女が多いし困ったものよのぅ……」
そんな事を言いつつ、そのジジイテンゴク王はジゴクシティーの女の尻を触って品定めしてやがる。アホか?
(テンゴク人も所詮はただのエロオヤジか。それだけにタチの悪い存在とも言えるな。自分の利益があるなら白にも黒にも簡単に染るだろう不快感があるぜ)
俺はテンゴク人がどんな人物かどうかある程度判断する為に観察を続ける。周囲に集まる若い女に夢中のテンゴク王はご機嫌を伺うジゴク王には嫌味のような事ばかり言ってやがるな。
「……それにしても地上という大地は相変わらずウルサクて構わんのぅ。街は砂埃で多いからワレは室内で女共と戯れておるかのぅ」
「いやいやテンゴク王様。一年ぶりのテンゴクフェスティバルです。是非ともこの天国を崇める祭りに参加出来、喜びに打ち震える民衆を見物下さい。この民衆こそが地上の人間がテンゴク人を神と思う証拠ですぞ」
「ふむふむ。多少なら街を見物してもいいかのぅ。警護の方はしっかりせいよ。情報だとテンゴク人に復讐するような輩がいるらしいからのぅ。怖し、怖し」
「やや!? まさか地上の人間に神であるテンゴク人に復讐するような人物などいるはずがありません! そのような情報はガセです! 信じてはなりませぬ!」
「ワレ等も一通りの情報を集めてから地上にテンゴクシティーを接近させるのだ。どんな危険が地上ちは潜んでるかわからぬからのぅ。まぁ、魔法もロクに使えぬような野蛮な警護兵がおればテンゴク人も安心するであろうぞ。さて、行こうかのジゴク王よ」
「ははー!」
そして、テンゴク王と呼ばれるジジイはジゴクシティーの警護兵の包囲網にかかった魚のような状態でジゴクシティーを歩き出した。そして、そのテンゴクシティー下部ゲートからは続々と地上に興味のあるテンゴク人が現れ始める。
(……これ以上観察しててもエミリに関する事はわからなそうだな。切り上げるか)
俺は魔眼の発動を解除し、大きく息を吐いた。
そして全然食べていないポテチを食べ出す。
「……あのジゴク王の話ぶりだと核弾頭の情報までは知らないのか? 知ってたら地上に降りては来ないか。ま、これでテンゴク人もゾロゾロと地上に降りて来るだろ。となると、この頭上にあるテンゴクシティーは空き家も同然になるな。もう一度仕掛けてみるか……テンゴクシティーに……」
ふと湧いた好奇心に、俺は身を任せる事にした。
そしてこの場を離れようとすると、一匹のスライムがポテチが欲しそうにこちらを眺めている……。スク水スライム乳・盗賊ニート現る。って、コイツはエミリの仲間だよな? 散らすか?
「ポテチならやるよ。これ以上近づくと散らすぞ?」
「ありがと。それよりジゴク王が呼んでるよ? ワッチの今の仕事はオーマをジゴク王の前に行かせる事だから」
「お前……昨日の今日でよく俺の前に姿を現せるな? どうかしてるぜ?」
「昨日の敵は今日の敵でしょ? それよりジゴク王がオーマ探してたから早く、早く!」
「お前、昨日の敵は今日の敵だったが今も敵じゃねーか? 仕方ねーな。近くで堂々とテンゴク人を見るチャンスだ。行くか」
俺は盗賊ニートの伝言を受けて、テンゴク人を接待するジゴク王の前に到着した。
ジゴク王はこの俺をこの世界の勇者魔王だと紹介するが、どうやらこのテンゴク人は特に驚きもせず、さも当たり前のように俺に命令を下す。
「ワレのクツを磨け」
やはりこのテンゴク人は自分達以外の人間を自分の家来としか思ってないようだ。
その態度はこのジゴクシティーの連中には通じるが、この勇者魔王には通じないぜ?
明らかに緊張感が走る現場の空気を察するジゴク王は、俺の前に進み出てテンゴク人の白いクツを磨き出す。祭りの時に国王からテンゴク人に会わせられる俺は、こんなジゴク王の姿を見る為に来たようなものだったな。この一切の存在価値が絶無のテンゴク人の言葉で俺はテンゴクシティーそのものを崩壊させてもいいと思ったからな。無能が権力を無垢に振りかざすのは悪でしかない。それは消えなければならないモノ。その消えるべき悪は言う。
「ソチもワレの役に立つがいい」
「ほう? どう役に立てばいい?」
「ホレ。あそこじゃ。あの群集の奥の建物の柱の前にいるあの赤い髪の女を連れて参れ」
「建物の柱にいる……赤い髪の……女!」
そのテンゴク人の視線の先には赤髪魔剣士エミリがいた!
堂々とこの場に姿を晒した胆力は中々のモンだぜ。
偶然かどうか、そのエミリの気迫に呼応するように大きな突風が吹いた。
「テンゴク王! 貴様を斬る!」
『!?』
周囲の人間達は騒然とし、テンゴク王は耳を傾けている。
ジゴク王は無言で兵に追撃を身振り手振りで命じて、侍女達はテンゴク王の警護を戦闘体制に引き上げた。そのままエミリは混乱する群衆の中を駆けてジゴク兵の追撃を逃れる。まだ聞こえないぞ? という格好のテンゴク王は、
「……のう? 風でよく聞こえんかったが、あの女子ワレに何か言ってなかったかえ?」
「いえいえ、それは風のそら耳アワーですぞ。それにあれは女ではなく男ですぞテンゴク王。ささ、もっといい女子は用意しておりまする。この場から離れようではありませんか。侍女達よ、テンゴク王様を案内せい」
そしてこの場からジゴク侍女達と消えるテンゴク王から開放されるジゴク王は俺に駆け寄る。
この状況になったのが恐怖でしかないのか汗が見苦しいほど流れてやがる。
ってくエミリの野郎。無駄な混乱を起こして俺に押し付けやがって……。
「今更祭りはやめられないぜ。覚悟は決めろよジゴク王」
「わかっておるわ! だが勇者魔王オーマ……あのエミリを止める手伝いはしてもらうぞ」
「フン、当然俺は今日核を使うエミリを止めるさ。ここで一つ教えろ。お前はテンゴク王に取り入って一体何がしたい?」
苦しげな表情でジゴク王は俺から視線をそらす。
どうやら話したくない話だろうが、もうここで聞いとかないとならん。
まともな会話が出来るのは今ぐらいだ。
この状況を利用してこのジゴク王の本音を知り、今後の対策に生かしてやるさ。
「ワシは血筋が欲しいのじゃ……テンゴク人との血筋がのぅ……」
「テンゴク人との血筋?」
「そう、今は経済大国としてこの世界を変革しようとしていたテンパのゴールドキングダムが崩れ去り、各大陸のパワーバランスが崩れている今の状況で次に狙われるのはこの国。それを狙っていた赤髪魔剣士エミリ。今後はそんな奴が増えて来るだろう……そんなときに高貴な血筋であるテンゴク人の血を引いた人間が王であれば、この地上のジゴクシティーも未来永劫の平和が約束されるはずじゃ……天界のテンゴクシティーのように……」
ジゴク王はテンゴク人の女を得る為に動いていたようだ。テンゴク人との血筋を作り、テンゴク人となる。そしてその血筋を利用して自分は外敵を権威でもって排除する。そんな行為をこのジゴク王と呼ばれる歴代の王はしてきたようだな。数多の住人を生贄としてテンゴクに送り、いずれテンゴク人から婚姻の話が出るまでの長く、無駄になるかもしれない時間を過ごして来た。この老人のつまらぬ話はここで結論に至る。
「……そしてワシは歴代ジゴク王初のテンゴク人になり、全てを見下す存在になるのだ!」
どうだ! と言わんばかりの形相で俺に言い放つ。
対する俺の感情は氷点下にまで冷めてて、この老人と相容れる事は無い。
「言ってもわからんだろうが、テンゴク人は無能だ。奴等は何も出来ない、何もしない。ただ生きてるだけの存在。それを歴代のジゴク王とこのジゴクシティーの連中は空に住んでいるというだけで高貴な存在と決め付け、多額の献金や浮遊城を維持する生きた魔力を使う為に生贄を捧げた。それが何代にも渡り、当たり前として来たからには全ての人間に罪がある。まずそれを脳髄に叩き込め」
「……はい」
「返事は大きく! そして人の話を聞く時は人の目を見ろ!」
「は、はい! はい!」
「はいは一度でいい!」
「はい!」
「……んんっ。どこまで話たっけ? ……あーそうだ。そして、この復讐劇を招いた直接的な原因は今のジゴク王。お前だ。お前は自分の欲で更にテンゴク人との接点を広げ、自分の代でテンゴク人との血筋を作ろうとした。だがそれは確実にジゴクシティーの住人に負担となり、エミリの家族がそれをおかしいと思い、ジゴク王の政権を潰すクーデターを仕掛けようとしたが寸前で失敗。そしてエミリは背中にZの烙印を押され、各地をさまよい赤髪魔剣士と呼ばれるまでになり、今ここで復讐を成し遂げようとしている……。俺から言わせればテンゴク、ジゴク共に消えていいと思う。罰を受けるべきだ」
「……罰を受けて消えればいいのか?」
「罰は生きてなければ受けられない」
ガクリ……と膝から崩れ落ちるジゴク王は、呆然と俺を見上げている。
もうこの老人に話す事は無い。
俺は俺の目的を遂げる為に天に旅立つぜ。
「祭りは止めんなよ。止めたら一気にこのテンゴクフェスティバルの人間達が暴徒になる。その一番の犠牲者はお前だジゴク王」
「はい!」
「地上のテンゴク人にはこの状態を毛ほどにも悟らせるな。奴らが混乱しないように時間を稼いでくれよ。テンゴクシティーは戦場になるから戻れないからな」
「はい!」
「これから地獄の現実を知れ」
そして俺はテンゴクシティーに向かおうとする。
エミリとメスパーがどういう風に動いてるかは不明だが、浮遊城テンゴクシティーにいるのは確実だろう。
「だが今はエミリよりメスパーだ。俺の魔力を持つメスパーがいなければ核弾頭は使えないからな。俺はテンゴクシティーへ向かうぜジゴク王。今度は邪魔させねーぜ?」
「……邪魔はせぬよ。けども命の保障は無いぞ?」
「どうせ核弾頭が爆発したみんな死ぬだけだ。それを忘れんなよジゴク王?」
「……わかっておる」
「それに今はテンゴク王がここにいるなら、良い女を使ってたぶらかしておけばいいだろ?結構なエロジジイだったぜあのオッサンは」
「テンゴク人は普通に女が好きだが性的接触はしない。地上の女は見た目はいいが汚れた病原体だと思ってる。見た目の良さだけではテンゴク人はなびかない。もしそうだったならワシも歴代のジゴク王も苦労はしないさ」
「あっそ。ならこの混乱を気づかれないようにしとけよ。核の脅威がわかってるならな」
「わかっておる! だから必ずあの女を殺してくれ。赤髪魔剣士エミリは殺してくれないとワシが困る……」
「困る? ジゴク王が困るだけじゃないだろ?このジゴクシティーの国民全てが困る。そしてこの大陸に住む人間達もだ。大陸の中央都市が消えたら大混乱に陥るからな」
「そうじゃな……だからこそエミリは殺さねばならん。そう、確実に殺さねば……」
苦虫を潰したようなジゴク王の顔を見た俺は、天獄都市テンゴクシティーに向かう。
その前に別行動してた魔女と落ち合い、これからの作戦を立てる。
ここでエミリの復讐計画の全てを終わらせてやる!
「メスパーがうまく潜り込んでテンゴクシティーにいるのは確実だ。奴には俺の魔力も混じっているからな……反応がある」
「反応……って、普通はわからないレベルの魔力反応でしょ? 何で今回は……こんな距離が離れてるテンゴクシティーにいるってのがわかるの?」
「それはメスパーが自分の魔力を完全に解放してテンゴクシティーを包み込むように使用してるからだ。その凄まじい魔力の展開量が俺の魔力レーダーに引っかかった。メスパーはテンゴクシティーから事を起こすつもりだ。後はエミリさえ見つければ天から攻めるのか地から攻めるのかがわかるんだが……」
「エミリは天から攻めるようだよ。赤い憎しみが空を昇っているわ」
何故わかる? と言いそうになる俺は冷静な顔になる魔女の視線の先を見た。
そこには、テンゴクシティーからテンゴク人が降りてくる際に使うテンゴク階段を駆け上る赤髪の少女がいた。その場を守るジゴクシティーの警護兵を刀で切り倒し、高速でテンゴクシティーへと足を進めてる。
「あの太刀筋と姿……。確かにアレは赤髪魔剣士エミリだな。奴もメスパーと同じ場所に向かうのか。二人の力を合わせてこの地上のジゴクシティーを核で消すつもりか。そしてテンゴク人には自身の剣で天誅を下す。奴の考えそうな事だな」
「どうるのコウハイ君? このまま私達もテンゴクシティーへ向かう?」
「いや、このまま二人共テンゴクシティーに行く必要は無い。そう、二人共行く必要は……」
ふと、赤髪魔剣士エミリの相棒のメスパーの小細工を感じた俺は決断する。テンゴクシティーへ向かう為に、俺は単独行動を取る事にした。なので――、
「もしもの時、地上で何かあった時に誰かいないと困る。もし、エミリが地上に現れたらお前が始末しろよ魔女。テンゴクシティーに行ったのがフェイクじゃない事を祈るぜ」
「アレはどう見てもエミリだったけど、あの漆黒のメスパーがいる限りわからないからな。まぁ、地上はこの偉大なるセンパイに任しておきんしゃい!」
「おう任せたぜセンパイ! ギガバーニアンゴー!」
俺は第一オーマスーツ・ギガバーニアンを展開し、肩にある大型ブースターポッドで白い魔力粒子の軌跡を描きがら、天にそびえるテンゴク人の住処。テンゴクシティーへの侵入作戦を開始した。そこで暗躍してるであろう赤髪魔剣士エミリの核を使った復讐劇を阻止する為に。




