ジゴクシティー到着。そして亀甲縛りのエミリ
「ここがジゴクシティーか。地獄という割には普通の都市だな。流石に死の商人テンパのいた経済都市のゴールドキングダムほどの華やかさと賑やかさは無いが……」
テンゴク大陸首都・ジゴクシティー。
広大なラルク大陸の中でも最も天に近い都市と呼ばれるこの国は、主に農業が盛んで普段は農作業を主にする魔術師が多く無骨で、戦闘になれば死ぬまで戦うような猛者が多くいる国らしい。だが近年はテンパのゴールドキングダムのような経済活性化された大陸の勢いに呑まれつつあり、新しい発展を遂げるか今までのままで行くか世論が分かれてしまっている状態のようだ。
時折、天に祈るような仕草をしてから歩き出す連中もいる。まるで天を恐れているようにも感じるな。過去に台風などの天候災害でもあったのか?
「……ジゴクシティー。ここは大きな村が少し発展した程度の街だな。それほど特徴の無い街だ。特徴があるとすれば真上の空を覆い尽くす白い雲だな……爽やかな色をしてるのに恫喝するような重苦しさがありやがる……」
俺はジゴクシティーを見下す真上の空を見上げた。その周囲の雲は風の流れにより流れて行くが、綿飴のような真上の雲だけは空中に浮かんだまま何者にも干渉されないように浮遊し続けている。
「天に一番近い都市……か。よくわからんな」
と、呟きつつ俺は露店で焼き芋を買う魔女から一つ焼き芋を貰う。すでにここまでの道中一緒だったスライム乳の盗賊ニートとは別れている。奴は奴で仕事があるようだからな。ハフハフ! と口を動かしつつも焼き芋の熱さを気にせずに食い意地の張る魔女は阿修羅のように焼き芋を喰らう。コイツは本当に美味そうに食う女だ。顔つきはちょっと殺気立って怖いけどな。
「ったく美味そうに食うな。いい事だが」
「早くコウハイ君も食べな!冷めちゃうよ!ハフハフ美味しい!」
「おい魔女、お釣りは?」
「え? ちょうどだったよ? ピッタリカンカン!」
「ダアホが。お前が店主に言ってまけて貰ってたのは聞こえてるぞ? 色目を使ってまけてもらうなんて流石は魔女だな。その手にあるお釣りを返してもらおうか?」
「いいけど、自分で取ってくれる? 今、焼き芋食べるので忙しいから」
「焼き芋で食べるので忙しいのはわかるが、両手を使ってるな……どこに金を隠した?」
「胸の谷間だよ」
「む、胸の谷間だと!? く、そんな場所に金を隠すのは卑怯だぞ!」
流石に胸の谷間に手を入れたらセクハラだ……。
仕方なく俺は魔女からお釣りの回収を諦めた。
おのれ……魔女め!
「……あー、ううん。まぁ、とにかく赤髪魔剣士エミリがこの街のどこかにいるのは確かだ。奴が核弾頭を使おうとすれば異常な魔力量の増大ですぐに魔力レーダーで感知出来る。その場合、俺かお前かのどっちかがそれを阻止しないとならんから別々に行動するしかないな。俺達は顔は多くの人間に知られてないだけで世界に害を成すお尋ね者だ。魔女という事がバレないようにしろよ」
「ほーい。じゃ、あのジゴク王宮の方面を捜索するわ。こっちは地味な地区だからコウハイ君に任せるよ!」
ピュー! と両手を広げ、群集の中に魔女は消えた。
「アイツ……ちゃんと赤髪魔剣士エミリを探してくれるといいが……」
多少の不安を感じながらも、魔女を信頼する俺は赤髪剣士エミリの核弾頭使用を阻止する為に潜伏先を探す事にした。
※
半日近くが経過し、夕暮れ時になった。
ジゴクシティーのジゴク王宮以外の主要な地区をレーダーシステムで探索が終わった俺は赤髪魔剣士エミリを発見出来てはいなかった。
今日一日調べてわかった事と言えば、三日後にこのジゴクシティーでお祭テンゴクフェスティバルが開かれるという事と、このジゴクシティーの上空にある動かない巨大な大雲は雨を降らせるわけでもなく、雷を鳴らすわけでもなく、ただそこに傲岸不遜としてあるって事だけだった。
「……とりあえずジゴク王宮付近を探索する魔女と合流して宿を探して今日はもう休むか。あの赤髪剣士エミリが核弾頭アトミックフレイヤを使うなら、人が大勢集まる年一度開催である三日後のテンゴクフェスティバルだろう。奴の必殺技・Zスラッシュのように多数の人間を苦しめる事が奴の復讐のようだからな。必ず、三日後のテンゴクフェスティバルの開催時にエミリは動く。だからこそ、このタイミングでエミリはジゴクシティーに帰還した。自分の復讐を遂げる為に……」
さて、魔女を探さないとならん。
とりあえずレーダーシステムの反応だと魔女の魔力は王宮内から反応があるな……まさか、捕まったわけじゃないよな? 食い物につられて捕まった可能性は……やっぱあるな。よし、ゴミ袋ステルスで俺もジゴクシティー王宮へと侵入しよう。
今、魔女にいなくなられても困るしな。
アイツとは心臓がリンクしてるから、酷い目にあっても俺が困るし。
てなわけで、俺はゴミ袋ステルスでジゴクシティー王宮へと侵入を開始した。
※
俺の黒いゴミ袋ステルスは完全にジゴクシティーの王宮の連中に気づかれずに調理場まで辿り着いた。調理場に何故来たかと言うと、魔女の奴は食いしん坊万歳! だからだ。アイツならこの調理場で摘み食いをする可能性はほぼ百パーセントだからな。そして俺も赤髪魔剣士エミリを探索してて何も食っていないんだ……。
(この国のジゴク王に招待されてればこんな行為自体しなくていいんだが、実際俺と魔女の悪名がどこまで人々に広まってるかもわからんからな。いい人の面をして、後で悪の仮面に切り替える国や村なんて数多ある。それが大陸の中央都市なら尚更だ)
とは言ってもいずれはここの国王に拝謁しないとな。直にジゴク国王に拝謁してこの国の危機を知らせないとならん。出来れば奴等の持つ核が使用可能になるであろう三日後までに見つけてしまえれば何の問題も無くこの事件は終わる。この国の祭り、テンゴクフェスティバルが始まったらごった返す人々の群れで戦闘すら危険になるからな。と、調理場のゴミ袋となる俺は適当に食材をつまみながら考えていた。そして、調理場の混乱も収まるとそこのコックや配膳係の女達の仕事は終わったようだ。すると、その配膳係の女の声が聞こえる。
「あー、疲れた。今日はどうする? お酒飲んでから温泉に入る?」
「だね。明日は私達非番だから今日は飲んでから入ろう。いや、むしろ温泉の中で飲もう!」
「いいねソレ。ジゴク王にバレたら怒られそうだけど」
「バレやしないよ。温泉だって液体だしお酒も液体だしオシッコだって液体なんだから」
「ははっ! 言えてる!」
おいおい……。
温泉でションベンするなよ!
いや、俺も昔プールでションベンしたな……。
と思ってると新手の女が現れた。
「あんた達に残念なお知らせです。今日からは温泉には入れないみたいよ。テンゴクフェスティバルで来る客人の為に温泉を清潔にしておかないとならないから使用人は使用禁止ですって」
『残念無念!』
と二人の女は叫んで女達は雑談をしながら調理場から消えた。
そしてその調理場でステルスする俺は思う。
(温泉があるのか。それはいいな……人がいないなら入ってもバレないだろ。魔女探しは後にして温泉に入ろう)
そのままゴミ袋ステルスで俺は王宮の中にある温泉を見つけ出し侵入した。
すると王宮の女達が出てきたな。
確か誰かが入れないと言ってたのに……。
と、俺はゴミ袋の二つ目の穴から覗いていると、信じられない光景を見た!
(!? 何だあのプリンの揺れの群れは……それにあの密林の秘境は……!? は、裸だ! 裸の女の群れだ!)
「コラ! テンゴクフェスティバルまで温泉は使用禁止って言ったでしょ! 出て行きなさい!」
『はーい!』
と管理者らしい誰かに怒られた全裸の女達は一斉に豊かな乳を暴れさせながら温泉から出て行った。
(……俺のHPはもう底をついてるぜ。なんという乳の暴力! このダメージはテンパの攻撃よりスゲーぜ……)
俺は自分が隠れているゴミ袋内を鼻血で満たしてしまった……。
ち、血が足りない!
(童貞には刺激的過ぎる光景だ……ち、血がなくなる前に先を急がねば……。まさか勇者魔王の俺が女の裸の群れ如きでこんなに瀕死になるとはな……俺は裸の女の群れを蹂躙してその酒池肉林の頂上に笑って君臨する覇王になる存在だぞ……この程度で死んでたまるか……)
そして管理者の女は温泉に通じる扉を閉めたようだ。
これで完全にこの温泉は密室になった。
床を這いずるようにして、瀕死の俺はようやく温泉の女湯の脱衣場にたどり着いた。
そして俺はそこでゴミ袋ステルスで黒いゴミ袋に隠れていた魔女を発見した。
なのでゴミ袋ステルスを解除し、
「おい魔女。そこに隠れてるのは知ってるぞ? お前如きが俺のゴミ袋ステルスをするなんて百年早いわ。散れ」
「ぴょー! バレちった! 結構自信あったんだけどね。流石はコウハイ君。このセンパイを見つけるなんてやるじゃない。愛してるかな? かな?」
「黙れ魔女」
と、肘でニヤニヤしながら俺をつつく魔女に対してサイレンサー付のハンドガンで魔女の額を撃ち抜く。
これは今の言葉と、明らかに俺が与えた仕事をサボっていた罰だ。
どうせ頭を撃ち抜いてもすぐに再生して血も止まるしな。
「イタタ……痛いよコウハイ君。あまりイライラするのはよくないよ? もっと精神を落ち着けないと探すモノも見つからないよ?」
「イライラさせてるのはお前だ魔女。エミリ探しをやめてこの王宮で遊んでただろ? バレてるんだよお前の浅はかな行動なんてな」
「そうやって人の行動を見透かす発言はよくないなコウハイ君。私はここの王宮ですでに犯人の所在を掴んでるのよ。犯人探しが疲れたからサボろうと思って侵入したこの王宮でね」
「……ほう、それが本当ならでかしたな。サボた事実を認めたのはお前らしいから帳消しにしてやる。本当にエミリがここに居たのならな」
「居たって。まだ敵も核を使用可能になるまでの魔力が溜まってないから変な行動は起こさないはず。どうせテンゴクフェスティバルの混乱に応じて行動を起こすはずだからね。だから今はジゴク王を暗殺するのも不可能。もしも暗殺したらテンゴクフェスティバル自体も開催されないだろうしね」
「……そこまで考えていたか。確かに核を他人が使うにはかなりの魔力を消費する。俺の魔力でない限りその消費量はハンパないはず。だからテンゴクフェスティバルの開催する魔力を持つ多くの人が集まる時を選んだのかもな。俺の魔力じゃなきゃ使えない核を無理矢理暴発させる為に。食いしん坊のお前にしては上出来だ。明日の天気はマグマかな?」
「どう? センパイに惚れ直した?」
「フン、黙れ魔女」
カワイイ顔でキメ顔なんかしやがってムカつくぜ!
これだから魔のつく女は嫌いだ!
そんなこんなで俺と魔女は無人の温泉に浸かる事になった。
スゲー湯気が多い温泉だな。
まるでミストジャマーだぜ。
これならタオル巻かないでもいいかな。
どうせ魔女も巻いてないし。
魔女になら多少は見られてもいいだろ。
どうせ魔女などこの勇者魔王の性奴隷なんだからな!
でもダメだ……やはり勇者魔王としてちゃんとしてないとな。
チンコ丸出しはもし戦闘になったら怪我してヤバイし。
そんな事をまるで考えていない魔女は長い黒髪を湯に触手のように浮かべ、王宮温泉でくつろいでいる……というか遊んでる。
「温泉、サイコー!」
「温泉、サイコー! じゃねーアホが!」
と、俺はのんびりと王宮の温泉でくつろいでやがる魔女に叫んだ!
やはりこの魔女は一人にしてはいけないな……俺の為に働いて、働いて、ゴミ袋のように使い倒してやる計画がオジャンになっちまう。
「この王宮に赤髪魔剣士エミリが忍び込んだ形跡があるんだろ? とっとと温泉から上がって捕まえるぞ。捕まえたらエミリ探索をしてなかった罪は無しにしてやる」
「まだ入って五分もしてないよ? まぁまぁそんなに怒りなさんなコウハイ君。私が目的も無くのんびりと温泉に浸かってると思う?」
「思う。お前はそーゆー女だ」
「ムキー! センパイは怒ったぞ!」
ザバーッ! と水魔法を使いお湯をメッチャかけられた!
クソが!
ここで俺と魔女のお湯戦争が勃発した!
が、すぐに俺の勝利で終わる。
全身をお湯で濡らす俺達は互いにゼイゼイ……と言ってるが俺の勝利だ。
何故なら俺が魔女の鼻に指を突っ込んでるからな。
「魔女。ごめんなさいは?」
「ごめ……い」
「聞こえないぞ? もっとハッキリ言え」
「……堂々と下半身を晒してる人間が偉そうにしてるのはおかしいよ? 何ですかそのドングリ山は? スライムのより小さいですよ? よよよ?」
「あっ! これは事故だ! タ、タオルは……」
必死に俺は無くしたタオルを探す!
ドングリ山? スライムのより小さい?
ふざけんな!
コイツはマジでここで散らす必要がある!
と、深い湯気の先に、誰かの人影が映った。
人がいるのか……?
「さっきからウルサイわよ先客さん」
スウゥ……と湯気が散らされると、一人の長い赤髪の少女が亀甲縛りで拘束され湯から身動きが取れないままこちらを見つめていた。この女はどこかで見たことがある。目鼻立ちはハッキリしてて、瞳は赤い真珠のように透き通っている。唇はやや厚めの情念を感じさせ、刺激を与えてくれる女だ。ハッキリ言って美少女だな。
「お前は……赤髪魔剣士エミリ……」
その亀甲縛りで拘束されるエミリは顔を自分の髪のように真っ赤にしながら言う。
「勇者魔王オーマ!? の、覗き!?」
「いや、タオルを巻いてるから安心しろ。それよりもお前、拘束されてるのか?」
「はぁ? 温泉好きの私は自分で亀甲縛りプレイをしてるのよ。バカな男ね」
『自分で亀甲縛りプレイ?』
と、俺と魔女はシンクロして言う。
バカはお前だエミリ……。
自分で自分を亀甲縛りする女なんて考えた事も無かったぜ……。
流石は魔のつく女。
ヤバイぜ。




