半魔女となるメガネ魔法少女・漆黒のメスパー
勇者魔王の俺と半魔女となるメスパーは瞬時に互いに距離を取り、大空での射撃戦を始めた。ショットライフルとメガネビームの火線が空を染めるように放たれる。
「散れ! 散れ! 散れ!」
「ニャーン! ニャーン! ニャーン!」
第一オーマスーツ・ギガバーニアンの両肩にある大型ブースターポッドの高速加速と、全身の各部に配置した姿勢制御スラスターで空中を自在に動きつつ簡単な魔法防御なら貫通するショットライフルを射撃し続ける。俺のギガバーニアンのスピードと運動性能に焦る半魔女メスパーは防戦一方になりつつも、超能力魔法で飛行しつつメガネビームを放って来やがる。サイクロプスかお前は?
「フン、ガンマンに射撃戦を挑むとは笑止!」
「メガネビームですニャーン」
「メガネビームなんて当たるかよ!そろそろお前の動きのパターンも読めた。落ちてもらうぜ!」
「なら今度はこの空気抵抗を利用しましょう」
どうやらメガネビームをやめたようだ。しかし、メスパーはこの大空を飛行する上での空気抵抗を武器として使って来やがった! スパッ! と右の脇腹が少しウインドカッターにより切られ血が吹き出す。
「空気圧をカッターのように飛ばして来るのか! 見えないぞ!?」
これは厄介だな。
見えざる刃はこの高速移動中じゃ魔眼を使わないと完全に把握は出来ない。
「なら魔眼で対処するだけだ。魔王の魔眼よ全てを見透せ……」
魔王の力である魔眼を発動させようとすると、左目からツツー……と血が流れた。無理矢理ブースターポッドをフルで吹かして見えざるウインドカッターを回避する。
「くっ……何だ? 魔眼が発動しない? いや発動するが左手の魔手が痛む……」
「どうしました? 目には攻撃を当ててないはずですが?」
「黙れ! 散れ!」
俺は魔眼を発動させたキッカケで魔王の魔手が暴走を始めた事に焦りを感じ、ショットライフルを乱れ撃ちした!
(チィ! こんな時に魔手が暴走するとは――やはりテンパ戦で魔手に魔力を与え過ぎてかなりの自我が芽生えてやがる……)
メスパーはその混乱する俺の隙を的確について来る。ギガバーニアンの機体各部の姿勢制御スラスターに狙いを定めてやがるな。俺が回避行動する時に、両肩の大型ブースターポッドを意識して回避してんのがわかってるからこそ、機体各部の姿勢制御スラスターを狙って来てるんだろ。狡猾な奴だぜ半魔女メスパー……。
「クラスの委員長みたいなメガネ野郎が調子に乗るなよ!」
「委員長?調子には乗ってきてますニャーン」
勢いに乗るメガネ……じゃなくメスパーは、ウインドカッターとメガネビームの両方を混ぜ合わせて攻撃して来る。今度はこっちが防戦一方かよ!
(魔眼もまともに今は使えない上に、このギガバーニアンの身体の各部にある姿勢制御スラスターを狙って来てやがる……このまま遠距離の射撃戦は不利だ。まさかガンマンの俺が遠距離で苦戦するとはな。ならば――)
俺はギガバーニアンの機体熱を排出する背中にあるヒートソードを左手に持ち叫ぶ。
「接近戦で仕留めてやる!」
魔眼の使用を止めて迷いが消える俺は無我の境地にてフルバーストモードでメスパーの懐に迫る!
「――は、早いニャーン」
「まるで驚いてる顔と声色じゃねーな!」
「それが私の長所ニャーン」
「知るか。散れ」
俺のヒートソードとメスパーのクロネコステッキが激突する! この勢いの一撃に耐えるとは、クロネコステッキはいい武器のようだな。だがパワー勝負なら俺の勝ち――。
「どうしました? パワーが弱くなってるように感じますが?」
「くっ……俺の利き腕は右だ。左じゃ剣が扱いづらいだけさ」
「それは無いですね。貴方は左右の手で正確な射撃が出来る。それは幾度となく貴方に抱かれた私が知ってるのです。まさか、やはり魔眼を使うのを止めたのは魔王の魔手が暴走をしている。そういうことでニャーン?」
「誰がお前をいつ抱いた!?アホな事言ってないでさっさと永遠に黙れ。散れ」
俺は右手にあるショットライフルでメスパーを狙撃しようとするが、メスパーの上げられた左足がその銃身を抑えた。それにより俺の全身の血流が増し、顔が赤くなった。てーか鼻血が……。
「……黒レースのパンツが見えてるぞメスパー」
「見せていますのよ。童貞君にね」
「貴様痴女か? 嫌いじゃない」
「ありがとニャーン」
「褒めてもないぞ」
「辛いニャーン」
「……」
ダメだ……コイツと会話をしては!
俺のペースが崩れる。
ったく魔のつく女は苦手だぜ!
(確かに左手の調子が悪いな……このつばぜり合いでもまるで左手に力が入らねぇ。テンパとの決戦で凄まじい宝玉の魔力を吸収し過ぎた魔手が自我を持って俺から離れようとしてやがる……!)
すると、魔手が暴走してメスパーに凄まじい魔力のエネルギーを放った! メスパーは直撃したまま地面に向けて落下する。そのおかげで俺は均衡状態から抜け出し、さらなる追撃を仕掛けようとヒートソードを突きの構えにして落ちるメスパーに向かい突撃する!
「魔手が魔力を放ったなら少しは暴走しなくなるだろ。今の内に仕留める!」
「ピ、ピンチニャーン……」
「ピンチじゃなく終わりだメスパー!」
「――? 何で突きの構えを変えるの?」
「構えを変える? ひ、左手がいう事を聞いてない!? ――ぐおおっ!?」
左手の魔手が地獄の怨嗟のような咆哮を上げ、俺は左手の魔手を抑えながら苦しみもがく……!
メスパーは絶対の勝機を確信し、俺に迫る――。
「チャンスニャーン」
「く……魔手がいう事を聞かん……くそぉ!」
俺はあまりもの痛みに耐えかねてヒートソードを下方から迫るメスパーに向かって投げ捨てた!
「ヒートソードを投げ捨てるなんて、もう左手をまともに使えてない証拠ですね。勇魔金玉はもらいニャーン」
マズイぞ!
このままだと本当に金玉を奪われる!
ハッキリ言って今の俺は動けない……。
魔手の痛みが俺の全身の感覚を支配してやがるんだ。猫招きポーズでメスパーは俺の魔力を宿す勇魔金玉に迫る――。
「ようやく本物の魔女にクラスチェンジですニャーン。ありがとうです勇者魔王オーマ」
「俺の魔手も限界だが、その投げ捨てたヒートソードも限界なの知ってるか?」
「? 何ですの? ヒートソードの熱量が上がって――まさか!」
「御名答。察しがいいなメスパー」
フッ……と口元を笑わせる俺と正反対の顔をするメスパーはビックリニャーンポーズをした。魔手の痛みからとっさにメスパーに向かって投げ捨てる時に、ヒートソードの熱量を一気に内部上昇させて時間差で爆発させたんだ!
「ニャーン!」
「そのリアクションは聞き飽きた! 散れ!」
突如発生した爆熱により態勢を崩し、左腕を焼けただらせたメスパーへのトドメに出る!
「散れ――!?」
せっかくのトドメ――といきたかったが左手の魔手が俺の意思に反してまた暴走を始めた!
苦痛で脂汗が額に浮かぶ俺はギガバーニアンの両肩にあるブースターポッドを全開で吹かして地上にある池に直行した。異常な熱を持つ左腕の魔王の魔手に水をかけ魔手を安定させる為だ。空中で大きなダメージを受けてるメスパーは猫招きポーズをしながら体力を回復させている。俺は池に左腕を突っ込んで魔手を冷やして安定させた。
「この隙にメスパーが仕掛けてくるのは無いな。しかし、腕が焼けるように痛む……相当、俺から離れたいらしいな。この魔手は……」
あのテンパとの戦いで魔手が自我を持ち過ぎて俺から離れようとしてやがる……このままだと魔王の力が消える。そうなると勇者のみの力になって俺自身は安定した力を手に入れられる……だが、今までこの不安定な力を使いこなして来たからこそ今の俺がある。相反する勇者と魔王の内のどちらかを失えば、俺のオンリースキル・マジックウェポンは今後使えるかどうかも不明だ。
(猫野郎……俺から受けたダメージがある程度回復しやがったか……)
その俺の苦しみを嘲笑うように空中から降下する猫招きポーズのメスパーは言う。コイツの俺に対する目的は一つ――。
「さて、そのまま魔王の魔手の痛みで苦しんでる最中に貴方の勇魔金玉を二つ回収して私は完全な魔女へクラスチェンジします。この世に二人の魔女が生まれれば前代未聞ですわ。勇者と魔王の力を宿した勇者魔王であるオーマにも影響を与えるでしょうねぇ。ニャーン」
「この世に魔女が二人いてたまるか。あんな女は一人だけで十分だ。それに、何度も言うが金玉は棒とセットのものなんだよ。それをチンコと言う。俺様のチンコ舐めんなよ!」
「残念ながらチンコなどはネジでハメてるだけでしょう? それなら回せば取れますよ。売店とかでも安売りしてますしね。ニャーン」
「ニャーンじゃねーし! チンコがネジで止まってたら後付け可能で性転換できちまうじゃねーか! それに売店なんかで飴ちゃんみたいにチンコが売ってるか! 相変わらずの意味不明な女だぜメスパー!」
「私、魔法少女ですから。今は半魔女ですけど」
互いに微笑み、俺は左手に意識を集中してメスパーの動きを見据える。池の表面スレスレに浮かぶメスパーは周囲に転がる石ころを超能力魔法で浮遊させた。これ以上近づかずにいたぶるか。
「もそっと寄れよメスパー。そんな離れてたらキスが出来ないぜ?」
「貴方は純情だから魔女以外とキスをするのかしら? でも私がクラスチェンジで魔女になったら古い魔女と同じ扱いになるのですか? 教えてニャーン」
「おう。一ついい事を教えてやる。この池に左手の魔手を突っ込んでたのは魔手を安定させる為だ。つまり、魔力を自由に使えるって事さ」
「という事はつまり?」
「そういう事さ。これが答え」
「!? 池が氷に――!」
ピキピキピキッ! と俺の左手を突っ込んでいた池が氷の池と化した! 池の表面スレスレを浮かんでいたメスパーは両足を氷に絡め取られる。
「まだまだぁ!」
「まさか私の全身まで!? くっーー」
俺は更に魔力を流し込みメスパーの全身にまで氷の浸食を侵攻させた。それによりメスパーは氷の彫刻の美少女へと変わり果てた。
「永遠に凍り付けにしたいが、いつまでもお前はこの氷人形じゃないからな。この隙に俺の核弾頭回収作戦を邪魔を出来ないようにしといてやるさ」
「……」
ニャーン……と空耳が聞こえたが、氷の彫刻になるメスパーの反応は当然無い。
時間が経てば戻るだろうが、今はコイツを相手にしてる場合じゃない。
核を保有する赤髪野郎を始末するのが先だ。
だが、その前に――。
「第二オーマスーツ・ジギタリス!」
シュパァ! と真紅の閃光が散り、血のような魔力粒子が俺に展開する。
核弾頭使用用・第二オーマスーツ・ジギタリス。
その外見は邪悪ささえ感じさせる真紅の戦国武者の甲冑のような重装甲のオーマスーツだ。
平常時はオープンされた顔も、核弾頭発射時にはクローズフェイスで赤いバイザーがかかる。見た目の重さ感ほどこの第二オーマスーツは重くない。何故なら、スラスターバーニアが背中のバックパックに搭載されていて、通常のスーツ無しの人間時と同じスピードは出せる。流石にギガバーニアンのような超加速は不可能だがな。
「さてメスパーよ。これから異世界半周ツアーに連れてってやるぜ。感謝して俺を称えろ」
第二オーマスーツ・核弾頭使用用機動兵装ジギタリスでメスパーそのものを遥か彼方へ飛ばす事にした。そうすれば、核弾頭を回収する作戦の邪魔をされなくて済むからな。半魔女となるメスパーを始末するのは時間がかかるからこの方法が一番だろう。そんなこんなで、氷付けになるメスパーの顔部分がもう砕けだしていた。すぐに俺はジギタリスのファナティックバズーカにメスパーを収納した。
「ジギタリスのファナティックバズーカは塊ならどんなモノでも弾丸にする。だからこの大陸のどっかに飛ばす。お前は殺すよりも飛ばした方がいいだろ」
「ニャーン?」
「泣き言は聞かないぜ。魔のつく女に情けは必要無い」
そう、魔のつく女には情けは必要無い。
情けをかければ死ぬのはコッチだ。
だから――。
「俺がこの事件を解決するまでどこかに消えてろ――ファナティックバズーカ!」
ズバーーーッ! という赤い閃光が空を駆け抜け、氷の固体となるメスパーは遥か彼方の空にキラーン☆ と消え去った。
「これでメスパーの障害は取り除いた。後は赤髪野郎一人のみ。行くぜ!」
瞬時にジギタリスからギガバーニアンにオーマスーツを切り替え、その白い魔力粒子が、閃光のように夕方の空を駆ける――。もう逃がさねーぞ赤髪野郎!ここで必ず俺の核弾頭・アトミックフレイヤは回収する!




