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ビッグテンパとの戦い。火の海と化すゴールドキングダム

 雨が――降り出して来た。

 黄金都市ゴールドキングダムの支配者テンパは、魔力秘宝・宝玉の力により巨大化し。ビッグテンパとなった。金色の毛の塊の怪物となるビッグテンパは自分の都市を飽きたオモチャのように破壊し出した。そして、一つの火災が一気に広がり、街並み全体が炎に包まれ出した。


「街が……火の海になってやがる!」


 言葉通りの火の海だ……。

 物の例えとしては聞いた事があるが、現実に見ると地獄でしかねーな。元の街並みを知ってるだけに精神的に堪えるぜ。俺と魔女は半壊したテンパの城、ゴールドキャッスルから呆然と動く巨人の悪行を見上げていた。雨が降ってきてはいるが、このビッグテンパの生み出した火の海になる街の炎を消すだけの勢いは無い。いや、そんな勢いの絶叫をこの悪魔巨人は叫んだ!


「パッパッパアァァァァーーーーーーーー!!!」


 巨大化したテンパは胸と下半身は下着のような金髪の毛で隠していたが、その毛を全身を覆うように展開して金色の毛玉妖怪のような異様な姿になった!

 まさにラルク大陸を支配下に置く事を主軸として欲望を晒したテンパに相応しい姿だった。そのビッグテンパは破壊と混沌をゴールドキングダムに生活する人間に示すように暴れ続ける。その破壊神の如き行動により、都市は壊れ、焼かれ、灰塵と化す――。


「……流石は千年を他者の身体を奪って生きる千年伯爵。今は女の身体だがやはり本来は男としか思えないほどの野心だぜ……すでに性別なんて存在しない状態か」


 あのデカブツを相手にするには、こっちは空を駆けるしかない!


「空中戦を仕掛けるぞ! 魔女! お前の新聞紙の絨毯を使えるか!?」


「合点承知! って、もう準備出来てるわよコウハイ君!」


「流石だなセンパイ。とっとと飛べ」


「えー。何かセンパイへの愛を感じない冷たいセリフだねー」


「ありがとうセンパイ。ありがとうセンパイ。ありがとうセンパイ……」


「あー! その冷たいセリフキツーイ! 言うのやめれー!」


「黙れ魔女。早く飛べ」


「オッケー! 飛べ、新聞紙の絨毯!」


 ヒュー! と火炎地獄の中を魔女の新聞紙の絨毯に乗り飛行する。


「にしても凄いね。街があったとは思えない状況よ」


「……だな。って、ちゃんとコントロールしろ魔女!」


「ほぇ? ほえー!?」


 ブオォォォ! と触手のようにビッグテンパから毛が伸びて来る。紙一重でかわす俺達は敵の背中に回り込むように新聞紙の絨毯を飛行させつつ、バズーカと火炎魔法で仕掛けた。

 しかし! ビッグテンパはそんなものは通じないと嘲笑うようにギュン! と首を背後に回転させて言う。


「パッパッパ! そんな攻撃通用しないわよ! 毛が主体の身体だからって火炎魔法が通じるとでも思ったの魔女? お前達など、この宝玉の糧となりカスのような毛玉のように縮れてしまえー!」


『ああああっーーー!』


 バババッ! と前にいる魔女に向かってビッグテンパは口から毛針を放つ。今の状況で魔女を失うと、空中における足場が無くなる。ので、奴の口から放たれた毛針を俺がくらい、魔王の魔手である悪魔の左腕を抑える。


「ぬぅっ……」


「コウハイ君!」


「騒ぐな魔女。俺の事より、今は奴の攻撃を回避し続けろ! 必ず俺が突破口を開く!」


「合点承知!」


 ……と言ってもこっちも満身創痍に変わりは無い。スペルガンの弾丸が無い以上、ありったけの実弾で奴のコアである本体の中の宝玉を砕くしかないか。


(冷静になれオーマ。俺は勇者魔王だ………)


 冷静になる俺は縦横無尽に新聞紙の絨毯をコントロールする空中で、この世界の基礎に立ち返る。

 まずは戦闘における基本――。

 力には技。技には魔法。魔法には力。これが異世界の三竦みの法則。これを、この状況に当てはめると……技か?

 そんな漠然とした考えが浮かぶ俺を嘲笑うように圧倒的な毛の拳が街を蹂躙する!


「――くそっ! 圧倒的じゃないかテンパの野郎!」


「コウハイ君。早めに攻略法を頼むわよ。ビッグテンパの毛触手がこっちの動きを捉え出してるわ」


「わかってる!」


 こうなれば、全ての魔力を使い実弾のフルバーストで毛の巨体に風穴を開け、内部のテンパの心臓部にある宝玉をダガーで串刺しにするか……。

 いや、こんな異常な力には普通の技じゃダメだ。そもそも、あれはただの拳じゃなく毛だ。毛には……?


「……何だ奴等は? テンパの部下の魔術師か? ムダな事をしやがる」


 生き残りの白服の異教魔術師達がビッグテンパに向かって総出で火炎魔法を放つ。しかし、硬質で魔力耐性のある毛には数多の火炎魔法も無効化されてしまう。そして無残に散っていく。


「やはり、火炎は効かないのか? 確かにこの炎の街の熱気にすら縮れてないしな……。それに何か気色悪いな……だが巨大化した敵が負けるのはテンプレだ。ド派手に散ってもらうぞビッグテンパ!」


 俺は全身の魔力を集中させ、簡易オーマスーツを生成した。


「オーマスーツ・イージーアンボビウム!」


 シュパアアアッ! という輝きと共に黒いバラが散り、拠点防衛用〔ブラックアンボビウム〕の上部のみの兵装が展開した。俺の両肩に大型のウェポンコンテナが生成され、五メートルの砲身ギガビームキャノンが正面に迫る敵を突き刺す槍の先端のように輝いている。魔女は長い黒髪を逆立たせて驚く。


「ほえ? 何か簡易版のブラックアンボビウムだね。肩が重そう」


「そうだ。これはブラックアンボビウムの上部のウェポンコンテナのみを生成したイージーアンボビウム。簡易版だから全体的に武装の量は減っている。だが、武器の威力に変化は無い」


 ブラックアンボビウム武装装備はこうだ。

 近くの敵を始末するビームガン。

 周囲の敵を倒し、爆破しつつ牽制もかけるハイパーバズーカ。

 敵を巻き取り爆破する爆導索。

 基本は三つのリーダーから発する三角形の電磁波で敵を結界内に封じ込め、焼き払うプラズマリーダー

 広範囲の敵を蹴散らすミサイルポッド。

 対人兵器・フラッシュニードル。

 白兵用のハイパビームソード。

 そして虎の子である一撃必殺の威力を誇る、五メートルの砲身の大砲・ギガビームキャノン。


 そのブラックアンボビウムの外見は、両肩に大型の武装コンテナが有り、右に五メートルの砲身の大砲・ギガビームキャノンがその存在を否応無く示す。左側には魔力を貯蔵する魔力タンクがあり、魔力防御シールドを展開させるジェネレータの役割も果たしている。中央にはそれをコントロールするステイマンが存在する、黒薔薇描かれた出来た巨大な戦艦ともいえるブラックアンボビウムは機動弾薬庫でもある。

 そして今、俺がマジックウェポンで生成した簡易版であるイージーアンボビウムには対人抹殺兵器のフラッシュニードルと大型の覇王剣ハイパービームソード。そして魔法防御結界のマジックフィールドは無い。そして、通常のブラックアンボビウムと違いこの兵装をしたら、機動力は一気に落ちる。この兵装は機動弾薬庫だがイージーなだけに高速機動用のブースターは無いからだ。残りの魔力じゃ、ブラックアンボビウムを生成してもブースターを使い続ける魔力は無いからな。


「……つーわけで、俺は攻撃に専念するから回避行動は任せるぞ魔女」


「あいよ! 頼れるセンパイに任せときんしゃい!」


「任せたぞセンパイ!」


 魔女はおだてて使うが吉。

 これで俺はビッグテンパへの攻撃を集中出来るぜ。金の髪の毛の巨大妖怪のような触手を指先から伸ばして俺達を捕獲しようとする。


「パッパッパッ! チョロチョロと目障りなのよぉ……ハエどもがぁ!」


「黙れ金髪毛玉野郎」


 素早く魔女は新聞紙の絨毯を旋回させて回避行動に出る。ズバー! とホーミング弾のようにビッグテンパの金髪触手は伸びて迫る。死の一撃が二人をかすりながらも、直撃は無い。どれだけこの血が流れようが最後に勝つのは俺達だ!


「いい回避行動だ魔女! こっから反撃に出る。爆風に耐えろよ!」


「わーってるわよ! で、あの毛のガードを突破してテンパの体内にある宝玉を破壊する事は出来そうなの?」


「ハイパーバズーカの連続着弾で毛の皮膚を破壊する。そしてその奥にある奴の肌を破壊し、更に奥のビッグテンパの核になる魔力秘宝・宝玉を壊す」


「単純だけどその作戦が一番いいかもね。あの金髪触手に当たったらこっちは大ピンチになっちゃうだろうし!」


「パッパッパッ! ゴチャゴチャウルサイのよ! とっとと落ちなさいハエ共!」


 俺達の背後に迫る金髪触手を両手持ちのビームガンで撃ち落とす。次々と放たれる金髪触手を連続射撃で必死に消滅させる。そして、こっちの攻撃の手数が上回りつつあるのを感じるビッグテンパはその巨体を動かし、大きな手で直に俺達を掴もうとする。


「このビッグテンパとなる私の手にかかれば、勇者魔王の力とて宝玉に還元してあげるわよ。感謝しなさい!」


「へっ、そんな事は御免被る。そしてその巨体にはこの武器が有効だぜ」


「!? アサルトアンカー? ――いや、まさか爆導索――」


「ご名答。博識だなテンパ」


 左のイージーアンボビウムの左ウェポンコンテナからプシャー! とアサルトアンカーが伸びる。それはぐるっと一回転し、ビッグテンパを拘束するように巻き付いた――と同時にズボボボボンッ! とアサルトアンカーに仕掛けられていた炸薬が一斉に破裂し、ビッグテンパは唖然としながら天を見上げている。


「チャンスだ魔女! ビッグテンパに特攻しろ!」


「あいよ!」


 目障りな巨体と金髪触手を爆導索を使い意外性のある攻撃で封じる。そしてその隙に奴の全身を覆う装甲となる金髪の毛を破壊してやる!

 特攻をかけつつ、ダブルビームガンからダブルハイパーバズーカに武器を持ち替える俺は、バシュ! バシュ! バシュ! とビッグテンパの喉元目掛け連射した。ズボボボボンッ!という爆発音と硝煙の中を新聞紙の絨毯に乗る二人は突っ込む。視界ゼロの状態の中、黒髪をなびかせる魔女は新聞紙の絨毯を操りつつ、口に溜めた魔力を放った。


「ニュースペーパーウインド!」


 パッ! とハイパーバズーカで生まれた硝煙の闇は払われ、爆導索の衝撃で天を仰いでいたビッグテンパの黄色い魔獣のような瞳と目が合う。だが、俺はそんな事は無視するように右ウェポンコンテナから長い筒を連射した。そのミサイルポッドはハイパーバズーカにより金髪の毛が破壊され、淫らな肌が露わになる喉元に向かい飛ぶ。その長い筒の先端から一斉にミサイルが雪崩のように吹き出し、ビッグテンパの喉元に怒涛の嵐を叩き込む!


「散れーーーっ!」


「グアアアアアアッ……!」


 今度は完全に白目を剥いてビッグテンパは天を見上げている!これは一瞬だが意識が飛んでる証拠だ。これで奴の核となる魔力秘宝・宝玉を破壊するチャンスを得た――。


「チャンスよコウハイ君! あの喉元からテンパの体内に侵入して宝玉を破壊するのよ」


「焦るな魔女。念には念を入れる。展開しろプラズマリーダー!」


 更に決定打を与える為に俺は、3基のリーダーを飛ばした。それはビッグテンパを中心に三角形になるように地面に刺さる。そして、ビリビリビリ! と三基のリーダーは電気を放ちつつ、上部を開花した花のように解放し、ビッグテンパを包むように青白い結界を形成する――。


「雷鳴の電磁波で散れ。プラズマリーダー!」


 その掛け声で、プラズマリーダーはプシュゥ……と電気を発した。三基のリーダーは黒い煙を上げ、沈黙している。そしてビッグテンパはギロリ……と俺と魔女を見据えた。つまり――。


「プラズマリーダーが発動しなかった? 俺のマジックウェポン生成ミスか……?いや……」


 何と、プラズマリーダーが発動せず失敗した! 俺はふと、顔に当たり続ける雨粒が気になった。まさか……この天候が影響するとはな……。ここまでは計算してなかっだぜ。


「残念だったわねぇ……おそらく、そのプラズマリーダーはこの降り注ぐ雨により機械が故障したんでしょ? せっかくのチャンスをムダにしたわねぇ……パッパッパッ!」


(この後の対魔女戦のとっておきだったが、アレをやるしかないか……。動きを止めて、最大最強の痛みを放ってやる!)


「コウハイ君! ギガビームキャノンのエネルギーと角度調整はオッケーだよ!」


「魔女マジか? なら……ブッ放してやるぜ!」


 魔女のファインプレイを聞き、素早く俺はギガビームキャノンのトリガーに手をかけた。ウェポンコンテナの長い筒とも言える五メートルの砲身が敵の顔面にロックオンされる。それに気付くビッグテンパは動く。


「そんなモノは撃たせないわよーーーー!」


「――全てを蹴散らせ! ギガビームキャノン!」


 ズブオオオオッーー! という凄まじい黒い魔力の本流が五メートルの砲身から勢いよく射出された。バシュ! とギガビームキャノンがビッグテンパの顔面に直撃し、その内部にある赤い魔力秘宝・宝玉が剥き出しの姿を晒していた! 頭をやられたからか、ビッグテンパは動きを止めている。コイツはチャンスだ――!


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