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宝玉の力を解放する金髪の美女

 メスパーの敗北を待っていたかのように俺をこの地下決闘場に招き入れた白服の異教魔術師達が現れた。

 ここでコイツ等とも決着をつけないとならんな。


「本来の目的であった魔女の不死の研究すら他人から依頼され、言われた事をするだけの大義を見失ったテンパの傀儡でしかない異教魔術師など、存在する価値も無い」


「黙れっ! 我々はテンパとはあくまで協力関係。我等は魔女の不死研究の大義を見失っているわけではないわ小僧!」


「黙れ外道。協力関係ってのはあくまでフィフティーフィフティーの関係。それは相手の弱みを握ってる、握られてるで本人達の力の差があってもフィフティーフィフティーになる。お前達異教魔術師にはそれがあるのか?無いからこそ、テンパに言われた事をするだけの傀儡になってるんだよ。第一、お前が怒ってる事でこの事実を認めてるんだよドアホウが」


「黙れクソ小僧っ! 皆の衆、一気に奴を叩くぞ! 先手、先手で攻撃すればマジックウェポンなど恐るに足らん! 消えろ勇者魔王!」


 へっ、図星突かれて逆上してやがるぜ。

 そんな相手は楽に倒せるのがセオリーだ。

 こっちが先手で全員散らしてやる!


「魔法詠唱なんてさせんぞ。サブマシンガンで蜂の巣になれ――!?」


 瞬間、俺のマジックレーダーに異様な魔力反応を示した。一人の異教魔術師から、雷が発生してそれは一つの球体になる。これは大魔法のサンダーボルト。落雷百発分のエネルギーがあるとされる、最強の電撃魔法だ。


「サンダーボルトを先に放たれたら、こっちも魔法で相殺するしかない!勇者魔王をナメるなよ!」


 だが、俺は強力な魔法をまともに使えない。

 だからこそ、先にここに来るまでに見つけたこの特殊弾丸で――。

 サッとズボンのポケットからテンパの宝物庫からくすねていた、スペルガンの弾丸を深紅の魔法銃に装填する。


「サンダーボルトで散れ!」


 スペルガンの引き金を引くと同時にギュイン! と一気に弾丸内に詰まる魔力が収縮し、シュパアァァァァッ! と蒼白い稲妻を帯びた閃光が射出された。敵の放つサンダーボルトと俺のスペルガンのサンダーボルトが激突する!そして、俺はその雷の衝撃波を受けつつ連続魔のように第二撃目を放つ!


「そしてイントゥザウインドだ!」


 疾風大魔法イントゥザウインドの弾丸を取りだしスペルガンの弾倉に弾を込めた。

 ここで一気に畳み掛ければ、異教魔術師達も対処できまい。


(疾風ならば空間の瓦礫の落下ダメージもある……!)


 思いつつ引き金を引いた。

 シュパアアアアアッ! と嵐のような緑色の疾風が地下決闘場を駆け抜け、満身創痍のまま何とか空の薬莢を捨て、俺は大きく息を吐く。


「……ふぅ。やったか」


という俺の呟きに、大魔法対決で発生した煙の奥にいるはずのない人間達の一人が答えた。


「大魔法の名を叫んでいては、こちらも対処の仕様があるよ勇者魔王」


「……生きてるだと!? まさか……相殺したのか」


「その通りだ。強力な魔力を秘めていてもまだまだケツの青いヒヨッコ。ワシから見れば未熟者と何ら変わりはせぬよ」


 前衛の男は口元をニヤリ……と笑わせている。そして、その背後の十人の異教魔術師達はすでに大魔法を放てる準備が整っていた。俺のスペルガンの弾丸と同じ魔法である大魔法を放つ準備が――。


(チッ! どうやら、リーダー格の男はわざと俺に怒る三下を演じる演技をしていたようだ。奴の背後の連中はすでに大魔法を使う魔法詠唱を済ませている。つまり、罠にかかったのは俺か――)


 スボオォォォ……! と大魔法を使う異教魔術師達は炎の凄まじい魔力が展開する。この大魔法は火山のマグマそのものを放つ最強火炎魔法・マグマドラグーン。しかも、その炎の龍が十匹同時に俺を襲うようだぜ!


「マグマドラグーンを先に放たれたら、こっちも魔法で相殺するしかない! 勇者魔王をナメるなよ! けど、今回は十匹同時か――」


 そして、十匹の火炎龍が現れ、異教魔術師達はそれを俺に向けて放つ!


『ファイナル・マグマドラグーン!』


 ズブォォォ! と部屋の温度が急上昇し、視界が真っ赤なマグマ色に染まる。放たれて合体したドデカイ火炎龍は、標的である俺を見定めて空を駆ける。

 だが、俺はあくまでも爽やかな顔をしつつ、深紅のスペルガンを構えた。


(……スペルガンではもう対処出来ない。現代兵器じゃあの極大合体魔法には対抗出来ない。ライトシールドでも無傷で防げる気がしないな。となるとどうする……?)


 最大の防御は勇者烙印からの絶対防御ライトシールド。それを上回る防御方法は俺には無い。それに、近くで大魔法を感じるからから、左手の魔手が蠢いてやがる。ご主人の言う事を聞いて、今は黙ってろよ!


「こんな時に右手の魔手が蠢いてウザいぜ。勇者魔王として、俺は勇者の防御の力でこの状況を乗り切るんだ。……勇者……魔王として?」


 目の前に迫る火炎龍の存在すら忘れるように、俺は当たり前の事に気付いた。


「そうか! 俺は勇者魔王だ!」


 言うと同時に、俺は両手を意識しつつ左右に広げた。もう、異教魔術師のドデカイ火炎龍は目の前だ――。


「勇者魔王が命ずる。蠢めけ魔王の魔手よ。輝け勇者烙印よ。今こそ二つの力を一つにする時だ……」


 勇者のライトシールドと、魔王の魔手の組み合わせ。これを実現出来れば、俺の絶対防御はより完璧なものとなる。そして、その光と闇の力は俺の意思で融合した! 結界のように、光と闇のオーラは広がる――。


「シャイニングダークネスシールド!」


 ズゴウンッ! と互いの魔法がぶつかり合い空間に凄まじいマグマが弾け、地響きのような揺れがゴールドキャッスルを襲う。そのファイナル・マグマドラグーンは魔力粒子となり儚くない消える。床や天井を真っ赤な赤で溶かしていく死の炎龍は完全に消えた。フゥ……と息を吐く俺は、


「どうやら……耐えたようだな。流石は俺だ。勇者魔王だ」


 自画自賛しつつ、マグマドラグーン十発という大魔法の攻撃を俺は新たなる技で乗り切った。コイツ等を倒せば、もう最終目標のテンパとの決戦だ!

 全ての魔力を使い切り、茫然自失で座り込む異教魔術師達に俺は、


「さて、そろそろ終わるぞ異教魔術師達よ」


 一斉に動揺の顔色を見せる異教魔術師達は後ずさる。いい光景だな。思わず笑みがこぼれるぜ。あ……あっ……とまるで金魚がエサを貰うような顔で口をパクパクさせてやがる。まぁ、俺が与えるのはエサじゃなくて、単純な死だけどな。


「さて異教魔術師達よ。勇者魔王がその命を散らしてやろう」


 だが俺の攻撃はされる事はなかった。

 する必要も無かった。

 何故なら――。

 ブオオオッ……と砂の城を崩すように異教魔術師達の身体が朽ち果てた。

 魔力だけじゃなく、生命力さえ吸収された?

 俺は自分の魔力も体力も減っている事に気付いた。

 そして、この地下決闘場が揺れ出していた。


「魔力が吸われてる? それに振動……? これは!」


 明らかにこの地下決闘場だけじゃなく、このゴーロドキャッスル全体が揺れ出している。

 つまりこれは、テンパが魔力秘宝・宝玉を使ったという事だ!


「マズイな……おそらくこの国自体の人間のエネルギーを宝玉が吸収し出してる。それなりの魔力で自分を守れない人間はこの異教魔術師達のように朽ち果てて死ぬ。いや、この国の人間から家畜……植物の全てまで消える廃墟になるな……」


 俺はこのゴールドキングダムの都市全体に結界が張られるような感覚を覚えた。おそらく、宝玉の力で都市全体を包み込む結界魔法を発動させたんだろ。つまり、宝玉を操るテンパが全ての生物を自分のものにするか、宝玉そのものを破壊しないとこの地獄からは抜け出せないようだ。


「魔女の奴もどうなってるかわからんが……生きてろよ。俺がテンパを倒すまではな!」


 連戦の疲れを癒す間も無く、禍々しい魔力を感じる場所――宝玉を扱う悪魔・死の商人テンパのいる最上階へと向かう。





 夜空に浮かぶまあるい満月を喰らうような気配をかもち出す金髪の美女がいた。

 ゴールドキャッスルの最上階のベランダに、まるで満月に魔力秘宝・宝玉を見せびらかしているような雰囲気の悪魔は、嗤っていた。

 光り輝く金髪を巻き髪にし、気品とゴージャスさを兼ね備えた美女は黄金の豊かな胸元が大きく開いたスーツのような衣装の上に金の毛皮のコートを羽織っている。その足元は大きなダイヤが埋め込まれる金のハイヒール。金、金、金――。この金髪の悪魔は視線の先の満月に真紅の宝玉をペロリ……と舌先で乳首を立たせるように、遊ぶかのように舐め、ハハハハッ……と常軌を逸した狂気の瞳を離さずに言う。


「パッパッパッ。……回復もせずにここまで来るとはね。まぁ、悠長に休んでたらここの国民全てが死ぬからしょうがないかぁ……」


 目の瞳孔が開いて獰猛な獣のように狂気の赤に染まるテンパの瞳はそれだけで人間を喰い殺すほどの殺気を放っていた。大きく開かれた口からはヨダレが垂れ流され、まるで麻薬中毒者のような様相だった。そんな金髪巻き髪女に、俺は言う。


「俺をこの世界に転生させ、この世界で利用し、不老不死を得た後に自分の安定剤として勇者魔王の力を利用していた事は本当だな」


「えぇ、もし不老不死を得て宝玉が暴走したら勇者と魔王の力で安定させる。全ての生物は私が生きる為のスペアでしかないのよ」


「世界に混沌をもたらす死の商人テンパ。その欲望の暴走をこの勇者魔王オーマが散らす」


「それが商人王である私を倒す大義名分?」


「……お前を倒す大義名分? んなもんはいらん」


「大義名分が無きゃ、ただの悪者と同じよ。私は都市の誰からも信頼される死の商人テンパ。私はこの都市の……世界の神になる存在なのよ。故に散らす事は出来ないわ。この癖毛のようにね」


「俺はお前を散らしたいから散らす。この都市の人間に忌み嫌われようが、この世界を敵に回そうが知ったこたじゃねーよ。何せ俺は、勇者魔王だからな」


「そう……それも今日で終わりよ異世界からの迷い子君……」


 ゴクリ……と真っ赤な一万もの人間の命を使って磨きをかけた、死の魔力を秘める魔力秘宝・宝玉を飲み込むテンパ。こんな事をするのは、人が操れないモノを操れる覚悟と力があるという事だ。


「……もう完全に宝玉の魔力を操れるのか? それは魔法少女レベルでも魔女でも扱える代物じゃない。意識を破壊されて内側から魔力に呑まれて死ぬぞ?」


「死は私の生き様よ。私は世界の死と再生を司る死の商人だからねぇ」


 どうやら、コイツに言葉はもう通じないようだ。故に……俺はハンドガンを構えた。


「お前にはここで散ってもらう。勇者魔王としてお前の存在を許さん」


 ドクン……と自分の心臓と宝玉がリンクして顔がイッチまってる悪魔の女は地獄の怨念を囁くように言う。


「パッパッパッ! スペルガンの弾丸すらもう無いアナタに何が出来る? 豆鉄砲では、私は殺せないよぉ……この千年伯爵であるテンパ様はねぇ」


「伯爵か。もうお前は女でも男でもなく、ただの悪魔だ。本当のお前は一体、どんな存在だったんだろうな」


「この見た目通り、美しい美女よ」


「言ってろ」


 すると、テンパの魔力からこの大陸で暴れまわっていた自然災害であるはずだった龍・ゴールドドラゴンを感じる……。

 これはまさか――テンパそのものが――。


「どうやらその顔だと、私がゴールドドラゴンそのものだったと気付いたようね。勇者の超直感の力かしらかしらご存知かしらぁ……? もうゴールドドラゴンに変身しなくてもあの状態の凶悪な力が出せるわん。そして、新しい私らしい変身もねぇ……」


「お前がこの大陸の村々をゴールドドラゴンとして襲い、人体実験の材料を集めながらこの大陸の支配をも同時に行っていたのか。自然災害であるようにモンスターのせいにすれば、全ての悪を平然と行える。お前はホント素晴らしい悪だ。散らし甲斐があるぜ」


「散るのはアナタよ……パッパッパーーーー!」


 ググググッ……と自分の伸びだす金髪に巻き込まれたテンパは巨大化を始めた!

 ゴールドキャッスルそのものがテンパの巨大化に巻き込まれ半壊し、俺は一気に地面へと落下した。


「……何だその力は……本物の化け物になりやがったなテンパ……」


 呆然と強大化していく黄色の悪魔に俺は下界から見上げるしかない。

 宝玉のパワーの力でテンパは十メートルの全裸の巨人へと変貌しやがった!

 その金色の悪魔の瞳はゴールドキンダム全土を見渡し、口から死の炎を吐き出した。

 猛然と荒れ狂う炎は一瞬にしてゴールドキングダム全土を火の海に変貌させる。

 現状に気付く住人は、目の前に迫る死に発狂し、街は大混乱に陥る。

 千年を生きる千年伯爵テンパは宝玉の力により金色の巨人・ビッグテンパとなった。


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