魔法少女メスパーとの決戦
ゴミ袋ステルス作戦が共闘中の魔女に敵にバラされてしまった事により、ゴールドキャッスル内の魔術師達と戦闘しつつ最上階にいるはずのテンパの元へ向かう事になった。最悪な事態だが、魔力も体力もまだまだ余裕だからザコを駆逐しつつ一気に敵の頭の下へと駆けるだけさ!
「ジワジワ来やがるな……一気に来てくれた方が楽なんだが……」
敵もバカじゃない。
一気に現れず時間差を置いて、俺の集中力が切れるタイミングを計りつつ攻撃してくる。いくら俺が勇者魔王で強くても、集中力を欠いてはまともな行動が出来なくなるからな。
(チッ! 精神的に削られるな。だーが!)
目の前に五人!
正確無比なハンドガンの連射で魔術師の額を撃ち抜き、一気に通路を駆け抜ける。その五人が倒れる前に、まだ俺に気付かない三人の内、1人を始末する。そして生き残る一人の魔術師の肩を撃ち、倒れた男にしゃがんでハンドガンを胸元に突き付け、
「死の商人はどこにいる?」
「……死んでも教えねーよ」
「そうか。なら逝け」
居場所を吐かない魔術師を殺し、立ち上がる。すると、何やら明るい光を感じる。殺した魔術師の全ての身体が発光していた。
「? 何だあの光は? ――!」
花火のように死体が光と共に炸裂した!
「侵入者に殺された場合、光となって味方に知らせるよう魔力で仕込んでたのか! やってくれるな……」
魔女がゴミ袋ステルスをバラしたおかけで俺が影のように行動出来る事は無くなったが、更に自体は最悪な方に向かってやがるな。だが、後は目の前の敵をなぎ払いつつ、死の商人の元へ向かうだけだ。
俺の生み出す血と硝煙のアートライブの始まりだぜ。
と、思っていると通路の先が行き止まりだ。よく見ると、目の前に分厚い氷の壁が存在した。
「通路を封鎖する為の氷の壁か……これは弾丸で砕いてたら時間がかかるな。ムダなあがきをしやがって」
魔力でこの分厚い氷の壁を溶かす為の火炎放射器を生み出し、その銃口から炎を射出した。勢い良く吹き出す炎は、その先にいた魔術師達も焼き尽くした。濡れた地面と焦げ臭い嫌な匂いの通路を抜け、一つの扉開け中に入る。足元は少し水があるらしく濡れている。すると、視界が黒く染まった。
「暗闇か……ムダだ」
今は火炎放射器を持っている。
だから暗闇など炎で照らす事が出来るんだ。
すぐさま火炎放射器のトリガーを押し、周囲の暗闇を散らす――と、首筋に冷たい感触がした。
「ナイフか!?」
暗闇の中を真下から迫っていた兵士が俺の首筋にナイフを突き立てていた。瞬時に首を下に動かしアゴと鎖骨に間に敵のナイフをはさみ、歯を食いしばり肌で固定しつつ、ハンドガンで兵士を始末する。
同時に室内のライトが照らされると、全方位に魔術師が爆撃魔法の詠唱を終えてその魔力を俺に放とうとしていた。
『消えろ勇者魔王オーマーーーッ!』
「チィ――!」
死に物狂いで円を描くように回転しながら火炎放射器を放った! そして魔術師達の一瞬の気後れの隙にハンドガンの弾丸を全方位に向けて無数に投げつけた! ズバババーン!という爆音が室内に響き渡り、黒い煙が視界を殺す。
その煙の中を更に黒い影が暗躍している。
「……これで全部殺したか。火炎放射器も壊れた。残る魔力もここまで来るので半分近くになっちまった。オーマスーツを使う時の事も考えると、手持ちの武装だけて切り抜けるしかないな」
べっ、と口の中に溜まる嫌なツバを吐き出し俺はそのまま歩き出す。
瞬間――足元から電撃が伝わる!
ビリビリ! というシビレで全身の動きが止まった。
しかし、それは一時的なもの……ではなかった。
「おやおや勇者魔王オーマ。まさか一人でこのテンパ様の城に侵入するとは見上げたもののだよ。いい加減死んでくれないか。我々異教魔術師は魔女の不死の秘密を暴くので忙しいのだよ」
「へっ、俺は個人主義だからな。一人で十分だぜ」
ゾロゾロと白服の異教魔術師達が現れる。
どうやら、この城の黄色のテンパの表の部隊の兵はほぼ全滅したようだ。
今度は裏の部隊の異教魔術師って事か。
魔女の不死を解明するクソ共もこの際、始末しとくか。
その異教魔術師は言う。
「勇者魔王。ここが貴様の死に場所だ」
「何だと? その自信に溢れた顔を見ると、この先に誰がいる? テンパか?」
「ただの魔法少女だよ。真っ黒な魔法少女さ」
言ったと同時に、俺のいる床が開いた!
瞬時に両手の鉄甲に仕込むアサルトアンカーを射出し、天井にアンカーを差して巻き戻す。
「バカが。こんなトラップにかかるかよ」
「かからなくていいのだ。穴の上にいる以上、超能力魔法からはもう逃げられん」
「何を言ってやがる? このまま射殺してやるさ――」
その天井に手をついて逆向きでしゃがむ俺の耳に、地獄の怨嗟のような声が聞こえた。
「おーいでくださいニャー……」
何か超能力のような引力で開いた落とし穴に引っ張られる!
強烈な引力により、天井に刺していたアンカーが外れて俺は落下した。
異教魔術師達の罠にかかり、俺はゴールドキャッスル・地下決闘エリアに辿り着いた。
※
ゴールドキャッスル・地下決闘エリア。
特に何も無いだだっ広い空間の暗い地下決闘場だ。
そこで俺は一人立ち尽くしていた。
(確か、テンパは昔地下に決闘所があるって言ってたが、雰囲気からしてここがそうなのか。それにしても暗い――そして動けん――)
俺は空間を歪める何かに、両手両足を固定されていた。
(これはまさか――超能力魔法――! ネコメガネ女か!)
俺の魔力サーチシステムが異常な魔力を新たに感知した。
瞬間――地下決闘エリアの照明が灯された。
黒髪ショートボブの純黒セーラー服を着た黒縁メガネの似合う、クラスの委員長みたいな魔法少女・漆黒のメスパーが現れた。ほぼ無表情のままその少女は薄い胸をアピールするようにネコ招きポーズをとっておじぎをした。
「呼ばれましたのでニャニャニャニャーン。どうも漆黒のメスパーです。よろしくお願いします。ぺこり」
「呼んでないぞ。散れ。一体、俺は何度お前と戦えばいい? 散れ」
「私が魔女にクラスチェンジするまでです。なので、下半身にある魔力の玉を二つください。金玉プリーズ」
「やらん! これは男の勲章の玉だ。俺はこれから自分で使う用があるのさ。だから誰にもやらん」
「二つあるなら一つくらいいいじゃないですか。勇者魔王もケチですね。にゃん♪」
「にゃん♪ じゃねーし。ならお前の胸にある薄い二つの肉まんくれよ。できないだろ?」
「いいですよ? なら脱ぎますので引きちぎってください」
「へ?」
と、マジでメスパーは純黒セーラー服を脱ぎ捨て、黒のブラジャーも外し上半身裸になる。何故かスカートやパンツも脱いだ。そこには黒のニーソに革靴だけの魔法少女が自分の貧乳をつかんで立っていた!
「待て! 何故、下も脱ぐ? いや、俺はお前のオッパイが欲しいわけじゃないから服を着ろ。頼むから着てくれ」
「脱ぐのは出来ますが、着るのは苦手です。着せてください」
「え? マジ?」
「お願いします。寒いので」
「……わかった。少し待ってろ」
あーくそ!
何で俺がコイツの服を着せないとならんのだ!
魔女といい魔法少女といい、魔法女は面倒だぜ。
外見だけは凄まじくいいから許せるけどな……。
と、俺は必死に黒のレースのパンツをはかせ、黒のブラジャーのホックをとめて順黒の制服を着せてやった。……疲れた。すると、最後にズレた黒縁メガネを直そうとする俺に、上向きのメスパーは言う。
「ならば戦闘ですね。私は勇者魔王の魔力が詰まる金玉で魔女にクラスチェンジします」
「もう俺はビンビンに戦闘中だ! お前なんぞ一ひねりだメスパー」
「感じます……貴方の金玉から立ち上る溢れる魔力を!」
「そりゃお前の裸のおかげで立っているからな……って金玉は立たないぞ!」
「そうですか……調べればわかりますよ?」
ゾワッ……! とメスパーのメガネの奥の悪鬼のような瞳に気圧された。
魔法少女や魔女特有の眼力・死の上目づかいで俺は死にそうになる!
「俺の魔力量は三倍に増してる。負け戦をするなメスパー」
「フフフ。なら、魔力が無くなるかまでの根比べといきましょう。ぺこり」
そのメスパーのお辞儀は、とある魔法を発動させる動作の一つだった――。
瞬時に身を隠すマントの前の合わせ部分から生成しつつあるサブマシンガンの銃口を出し言う。
「魔法より弾丸の方が早い」
「私の目的は攻撃ではありません」
「何っ?」
マジックウェポンで生成しつつあるサブマシンガンがマントの下で突如消えた! それに、全身の魔力が全く高まる感じがしない。
どういう事だ……?
無意味なネコ招きポーズでニャーと鳴くメスパーは言った。
「禁忌の超能力魔法マジックキリング。この魔法は一時的に新しい魔法を使わせないように封印するもの。だからハンドガン以外の武器は当分生成出来ませんわよ」
「……チッ。俺の魔王の力・マジックサイレスと似てるな。あれは魔力回路を乱すものだが、マジックキリングは封印。嫌な事をしやがるな」
魔力をハンドガンに流し、弾丸を生成するのは可能だが新しい武器を作るのは無理のようだ。まぁ、ハンドガン一つあればメスパーには勝てる算段はある。
それに、完全に魔力を封印されてはいないから俺の封印された魔力を超える魔力量が戻れば封印は解けるはず。俺は早くマジックキリングの封印を解く為に魔力を高める構えに出た。同時にハンドガンを撃つ。と、薄い黒膜がメスパーを包んでいた為に弾丸は弾かれる。
「残念無念。私には全方位を守るバリアがあります。このメスバリアーは貴方のライトシールドに匹敵するほどの絶対防御なのです」
「俺のライトシールドと? へっ、口が達者になったなメスパー。このまま成長すれば魔女のような魔力と乳が手に入るかもな」
「魔力は必要ですが乳はいりません。欲しいのは貴方の股間にだらしなくブラさがる魔力金玉二つです」
「だらしなくブラさがってねーし! そこまでブラブラするほど長くもねー!」
「アラ? 私のブラ下がってます? もしかしてちゃんとホックしてくれなかったんですか?」
「だーかーら! そんな話はしてねーよ!」
コイツも魔女にクラスチェンジしたいせいか、本物の魔女並みに面倒な女だ。
と思いつつ、さりげなく左目の魔眼を無理矢理発動させる。少し魔力の勢いが衰え、左目から血が噴出すように流れた。鮮血に染まる左目がナイフで抉られるような痛みがあるが、そんな事は我慢するしかない。そしてまた相手の魔力が高まり出す事を感じつつ俺は、
「そのメスバリアー。本当に全方位に対応しているのか?」
「?」
ハンドガンを一発、メスパーの真上の天井に向けて撃ち、その背後の壁に当たる弾丸は跳弾となりメスパーの背中に向けて飛ぶ。
しかし、その弾丸は弱まったバリア内に阻まれてしまい停止していた。
空間を歪めて弾をそらすバリアは、どうやらちゃんと全方位に機能しているようだ。
「弾丸はどの方向から撃っても無理……か。その空間認識力の高さは、いつかお前の敗因になるぜ?」
「負け惜しみはいいですわ。初めますわよ」
「根性勝負になれば、確実に俺の勝ちだってのによくやるぜ。魔力が尽きた瞬間がお前の敗北の時だ」
そんな俺の発言をものともしないメスパーは言う。
「勇者と魔王の相反する力は貴方の魔力を無尽蔵にはしていない。案外、魔力量は優れていないですわ。だからそこに私の勝機があるのです」
「……そうだな。もうすぐ魔力切れだ。疲労困憊に魔力切れ。最悪な状況になる前にお前を散らせる」
スゥゥ……とメスパーの背後の空間に無数のナイフが浮かび上がる。それはチェスの盤上に整然と並ぶ騎士達のようで、その銀色の刃物の群れは主人である魔法少女の命令を待ち、鋭い切っ先を光らせていた。
俺もそれに対抗するように、残る魔力の全てをハンドガンに注ぎ込む。
千のナイフと千の弾丸――。
ひたすらに甲高い金属音が空間に響き渡る。
ハンドガンの弾丸が切れるたびに自動的に俺の魔力が尽きるまで弾丸を生成し、俺はひたすらに迫るナイフに向けてトリガーを引き続ける。
砕かれたナイフの破片が俺の頬を切るが、そんな事は気にしてられない。一瞬でも気を抜けばこのナイフの無限とも見える群れに全身を串刺しにされるだろう。
空間を切り裂く金属音――金属音――金属音――。
そして、果てしない激突が生み出した鉄の残骸と共に千の攻防戦の全ては終結した。疲労困憊・満身創痍のメスパーはズレたメガネを直しつつ言う。
「……全魔力を使っても三本のナイフしか刺さらないなんてね。流石は勇者ですわ」
「こんな戦いは二度とゴメンだ。千のナイフの先端を見過ぎて先端恐怖症になりそうだぜ。けど、俺の勝ちだ」
「まだですわよ! 私には魔力少し回復させるマジックポーションがあります」
「何だと? 用意周到な奴だ!」
すでにマジックポーションのドリンクを口に入れようとしていて俺の攻撃は間に合わない。その魔力を回復させる聖水はメスパーの口元から淫靡な感じで流れた。
「妖艶な飲み方だなメスパー。感じちまうぜ」
「――!? 飲めてないですわ……何故?」
魔力を少し回復させるマジックポーションの話が出た瞬間、メスパーは背中に弾丸を浴びて倒れた。
そう、さっきまで張っていたメスパーバリアの空間を歪める力が千のナイフを生み出す事で一時的に弱まり、そのバリア層に俺の弾丸は停止していた。跳弾として放っていた一発の弾丸がメスパーの背中を撃ち抜いたんだ。
「言ったろ? 魔力が尽きた瞬間がお前の敗北の時だと」
「まさか、この千の攻防戦の初めに撃った跳弾がまだ残ってたなんて……。魔力を高める瞬間のバリア減衰の層に弾丸を停止させているとは不覚ですわ」
「言ったろ? 空間認識力の高さが慢心も招いているってな」
「負けましたニャー……」
ニャー……とネコ招きポーズをして、メスパーは意識を失う。
完全にメスパーは倒れたが、まだ気は抜けない。
背後に新しい靴音を感じたからだ。
「……散らすぞ。異教魔術師共」
そして、白服の異教魔術師達が現れた。
ここでコイツ等を全て散らし、一気にテンパを仕留めてやる!




