20話 でーと 3
お店に入ってみると、客層のだいたいは男性で、ややオジサンな年齢層が多く、飲み屋という場所なのだろうか。
飲み屋や酒場を知らないけど。
「いらっしゃーい。…あら、ノクサラじゃない」
「おひさ。今日は三人」
「へぇ、女の子連れなんて、珍しいこともあるもんだね。…って、ヒッポフォロスの子供は良くないんじゃないの?」
店員の女性は、私の背丈を確認し、目を吊り上げながらノクサラさんを睨んでいる。
「コハクはエラフォロスっていう種族で成人済みだ。冒険者証明書を見せてやれ」
「あっはい」
冒険者証明書を取り出し、店員さんに見せると、彼女は目を丸くして私と見比べていた。
「あら、これは失礼しました。この辺りはヒッポフォロスのお客さんもいまして」
「いえいえ、慣れてるんで大丈夫です」
「それじゃ、ヒッポフォロス向けの席でいいですかね?二足種族向けの椅子じゃ座りにくいと思いますし」
「お願いします」
「三名さん入ったよー!」
案内された席に着くとメニューが手渡され、店員さんは忙しく接客に戻っていった。
「とりあえず魚の甘辛焼きは全員分頼んでいいか?」
「ノクサラさんのオススメですし、是非食べたいです」
「問題ありませんよ」
「それじゃあ飲み物だが、デート中に昼酒ってわけにもいかないから、茶でも頼んどくか」
「私は飲みませんが、お二人なら一杯くらいいいんじゃないですか?」
「一杯飲んだらもう一杯いきたくなるじゃん」
「ええ、そうですとも。お酒は夜にしましょうか」
「わかりました」
各々でメニューを手に取り、追加の料理を探していくのだが、海老の塩茹というのが気になる。
海老と言えば紅髯郷の紅髯海老という高級食材がある。
私は一度も食べたことがなく、川海老とは比べ物にならないほど美味しいという。
…とても気になるが、値段が安めなことを考えると、川海老かもしれない。
「メニューにある、海老の塩茹の海老って、川とかで獲れる小さい海老ですか?…それとも海で獲れる、おヒゲの長い大きな海老ですか?」
「海でも小さいのは穫れるが、塩茹の海老は、だいたい…これくらいの大きさをしたやつだな。スパイスと溶かしバターをかけて食べるんだが、プリプリの身が美味い絶品だぞ」
ノクサラさんが手で示した大きさは、私が知る紅髯海老と同じくらいの大きさである。
「値段って一〇〇〇カルタで合ってます?明蝉国だともっと高級なんですけど」
「合ってると思うぞ?」
「じゃあ!海老の塩茹で!!」
「うわっ、驚いた」
「コハクさんは海老がお好きで?」
「大きな海老は食べたことがないので、食べてみたいんです」
「へぇ〜、ならあまりの美味さに腰を抜かすかもしれないな」
「そんなにですか!すっごい楽しみです!…じゃあ後は、サラダとパンを追加すれば、私は十分だと思います」
「それじゃあアタシは―――」
私たちは店員さんに声を掛け、各々の注文を伝えていく。
―――
料理を待っている間、私たちは雑談をしていたのだが、店内にモニターという魔導具が設置されていることに気がついた。
「あれって、ヴァン・フェールの映像ですか?」
「ん?あーいや、あれはルーシッドキャストの、ルーシッドキャストって映像投稿サービスなんだけど、そこでの再生数や支援金を集計した映像が流されるんだ」
「今の一位は、ヴァン・フェール第一のワールドノーアー討伐映像なので、ダイジェストが流されているようですね」
「なるほど」
ジェルブ・ドールでヴァン・フェールの方々に観せてもらった映像は、とても迫力があり、すごかった。
戦いの規模もだが、使用しているファミリオグラフの数も多いらしく、常に迫力を維持した映像が続いており、力の差を強く感じさせられてしまったのだ。
「私たちのは何位とかわからないんですか?」
「ランキング外だな。支援はあったが、再生数自体は全然で、注目されてるわけでもない。ランキングに載るには…どうしたらいいものかね」
ランキングに載るというのは、なかなかに難しいらしい。
「ランキングの一位になれれば、スター冒険者ってことでいいんですか?」
「一位もだが、ランキング上位の常連になれて、ようやくスター冒険者ってところだ。…難しいぜ?」
「ヴァン・フェールとの差は、ワールドノーアーの映像を観て理解できました。…それでもいつかスター冒険者になる、その夢は潰えませんっ!」
「…大馬鹿者だよ、ホント」
「頑張りましょうね、コハクさん」
「はいっ!」
どうしたら『配信映え』できるのかは、まだわからないけど、力強い仲間がいるんだから、挫けて諦めるわけにはいかない。
…それはそれとして、運ばれてきた食事の誘惑に、私は負けてしまった。
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