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【コミック1巻3月25日】最強の剣聖、美少女メイドに転生し箒で無双する  作者: 三日月猫@剣聖メイド1〜4巻発売中!
第10章 剣王試験

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第10章 二学期 第304話 剣王試験編ー㉒ 箒星狩り、始まる

 ―――夕方。午後四時。


 10月下旬となり、秋も深まったことから、空は既に赤く染まっていた。


 薄暗くなった森の中を、深くキャスケット帽を被った青年―――バドランンディスが進んで行く。


 そして彼はある地点で足を止めると、頭上を見上げ、口を開いた。


「……アルザード様。首尾は、如何でしょうか?」


 バドランディスの言葉に、上空の木の枝に蝙蝠のようにしてぶらさがっていた男が、言葉を返す。


「リューヌ殿の配下か。問題は無い。このような試験など、我輩にとって児戯に等しいもの。あの山の頂上を目指しつつ、他の受験者からネックレスを奪うだけで良いのであろう? 確か、剣神たちが現れるのは、第三次試験であったな? それまでは我輩が本気を出すこともあるまい」


「分かっているとは思いますが……貴方には、審査員として現れた【剣神】フランエッテ・フォン・ブラックアリアを倒していただきます。私はリューヌ様の命令で、貴方をサポートするためにこの試験に来ました。今後、もしこちらでネックレスを回収することができましたら、全て貴方様に捧げます。私は、第三次試験に進む気はありませんので」


 バドランディスはサポートをすると言っていたが、それはお目付け役が正しかった。アルザードが暴走しないように……制御する。それが、バドランンディスがリューヌから命じれられた役目。


「おぉ、そうであったか。流石は我が盟友、リューヌ殿。我輩がやりやすいように、手を貸してくださるとは、何とも有難き話。これも、全て……我が姫君を騙るあの偽物のせいだ。あぁ、憤怒(ふんぬ)憤怒(ふんぬ)!!!! 偽物の腸を引きずり出し大腸で縄跳びしてやらぬことには、この怒りが収まらぬわぁぁぁぁぁぁ!!!!! ふんぬっ!!」


 身体に魔力を纏い、咆哮を上げるアルザード。


 その凄まじい気配に、バドランディスは目を細め、声を張り上げる。

 

「お、お怒りをお鎮めください、アルザード様! ここで貴方様の存在が知られれば、聖騎士団の異端審問官が貴方を始末に来ます! そうすれば、計画を遂行することもできません!」


「あ、そうであったな。すまぬすまぬふんぬ」


 急にスンとなり落ち着きを取り戻すアルザードに、バドランディスはため息を吐く。


「よろしいでしょうか、アルザード様。これから貴方様には二つ、気を付けていただきたいことがございます。まず、一つ目。この試験の最中で、受験者を殺さないこと。二つ目、剣神フランエッテが姿を現すまで、実力を表に出し、吸血鬼であることを悟られないこと。以上です」


「問題はない。万事、我輩に任せておきたまえ」


「それであれば、よろしいのですが……」


 バドランンディスは一呼吸置いた後、再び開口する。


「前から気になっていたのですが……アルザード様は、いったいどこで、我が主、リューヌ様とお知り合いになったのでしょうか?」


「リューヌ殿と出会ったのは、十年前の【奈落の掃き溜め】だ。我輩は、効率よく餌を調達するために、奴隷商と関わりを持っていた。その日も、知りあいの奴隷商を訪ね、闇市で餌を調達しようとしていたのだが……そこで、闇市を支配しているスラムの権力者と出会った。我輩は彼と親しくなり、彼の家へと行った。するとそこには、首に鎖を繋がれた、たくさんのペットがいた。その中のペットの一人が、リューヌ殿であったというわけだ」


「ペット……?」


「人間が人間を飼うという不可思議な営み、所謂……人間社会で言う奴隷という奴か? まぁ、その文化についてはどうでも良い。我輩はリューヌ殿を見て、不思議な目をした幼子だと直感した。あの者が宿す目の色は、どちらかというと、魔物に近しいものだったからだ。話を聞けば、彼女は、死に化粧の根(マンドラゴラ)と化した人間の女の腹から産まれたのだという。心底、面白いと思った。我ら『始まりのもの』……吸血鬼と高位人族が産み出した8種族とは異なり、あの者は、魔物と人間の間に産まれた新たな生命であったのだ。我ら創造主の理を超えた存在といえるであろう」


「……それで、アルザード様は、その男を殺し、奴隷として飼われていたリューヌ様をお助けしたと?」


「そう思うか? フフフ……事実は、違う。我輩は、ついうっかり、そう、うっかり、スラムの王を喰い殺してしまったのだ。奴は、我輩に餌を供給してくれていた、良き友であったのだが……何か、スイッチが入ってしまったのであろうな。気付いたら、肉塊と化していた」


 アルザードはそう言って首を横に振った後、恍惚とした表情を浮かべる。


「その時だ。我輩が主を殺した姿を見て、奴隷どもは一目散に逃げて行ったのだが―――一人、我輩の元へと近付いてきた者がいた。それが、リューヌ殿であった。いったい、我輩に何を言うのか、少し気になった。ありがとうなどと、ありきたりな感謝の言葉でも告げるのか、それとも、恨み言でも言うのか……否、そのどちらでもなかった。あの者はこう言ったのだ。――――――『愉しみが減ってしまった』と」


「? いったい、どういう意味なのですか?」


「リューヌ殿は、【支配の加護】で、既に飼い主を洗脳済みだったのだ。そしてその飼い主は、スラムを支配していた、奈落の掃き溜めの王であった。つまり……リューヌ殿は僅か五歳にして、奈落の掃き溜めを影で支配し、遊んでいたのだ。いやはや、素晴らしい趣味をお持ちの少女だと思った。リューヌ殿は、人間を餌としか見ていない我輩に、教えてくれたのだ。人間は、ただ殺すだけでは面白くない。人間の背景を知り、精神を蝕んでこそ……本物の愉しみを見出すことができる、と。その日から我輩とリューヌ殿は、親友となった。彼女から我輩は、本当の悦楽を教えて貰った。リューヌ殿と我輩は、ズッ友になったのだ」


 楽し気に目を細めるアルザード。


 バドランディスには、その悦楽というものを理解できなかったが……何となく、リューヌとアルザードの間には、二人しか分かり合えない何かがあることを理解した。


「良いか、バドランディスよ。我輩やリューヌ殿は、ただ人間の命を奪うような、下賤な輩ではない。ただ人間を殺したいだけならば、それは己の力を誇示したいだけの、何も分かっていないサディストだろう。だが、我らは違う。人間の背景を知り、その精神を蝕み、極限状態まで絞った人間から出た甘い汁を啜り……最後に、その命を奪う。それこそがこの世の果てにある至上の悦び、誠の悦楽よ。理解できぬ者が多いのであろうが、我輩とリューヌ殿は同じ悦びを知った、まさに同志なのだ」


「……左様でございますか」


 バドランディスは、考える。


 このアルザードという吸血鬼は、リューヌを友として見ていると言っているが、何かのきっかけひとつでリューヌを害す可能性がある危険な存在だと。


 この男を表現するのならば、狂人という言葉が相応しい。


 敵味方関係なく、自分のやりたいように動き、殺したいように殺す。


 まるで野生の動物か何かと相対しているような感覚を、バドランディスは覚えていた。









「……バドランディスと、あの受験者……いったい、何の話をしているんですの?」


 木の影に隠れていたルナティエは、最小限まで闘気を無くして、気配を消し、バドランンディスとアルザードの会話を盗み聞きしていた。


 そんな彼女の隣に立っていたアルファルドが、緊張した様子で口を開く。


「おい……さっきあの男が放った、魔力の気配……かなりやばい雰囲気を感じたぞ? まるでゴルドヴァークやキュリエールと相対した時のような、嫌なものを感じたぜ?」


「ただ者ではないことは……確かですわね。会話の中に、薄っすらと、リューヌの名も出ていたようですし」


 ルナティエは顎に手を当てて、考え込む。


 もし、この試験で、リューヌが何かを企んでいるのだとしたら……早急に、アネットに伝えた方が良いのではないのかと。

 

「……とにかく。今は、ここを離れますわよ、アルファルド。運が良いことに、あの二人は、闘気感知に優れていませんわ。見つかる前にさっさと行きますわよ」


「あぁ」


 そうして二人は、その場を離れて行った。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






 午後五時――――――日も暮れ、辺りはすっかり暗くなっていた。


 俺とミフォーリア、ボルザークは、マップを手に、森の中を進んで行く。


 前を歩くミフォーリアは、額の汗を拭い、口を開いた。


「ふぅ。ゴールであるあの山を目指して進んで行けば、自然とヒルデガルトお嬢様と出会うことができると思っていたでありますが……意外に人と遭遇しないでありますね」


 ミフォーリアの言葉に、隣を歩くボルザークがコクリと頷く。


「そうですな。ですが、参加者が24名とはいえ、流石にこの広い森の中で遭遇するのはなかなかに難しいのではないかと思いますぞ。山がある場所は、ちょうどエリアの中心。四方の東西南北からスタートしたとなると、反対側の場所からスタートをきった者は、山の麓までたどり着かないと出会わない可能性もございますな」


「某とボルザーク殿は、西からスタートしたであります。アネット殿は、どこからスタートしたのでありますか?」


「私は、南からスタートしました。途中で遭遇したヒルデガルトさんは、東からスタートしたと言っていましたよ」


「そうでありましたか……上手い具合に遭遇しないものでありますね……」


 肩を落とし、がっかりした様子を見せるミフォーリア。


 ボルザークは髭を撫でると、背後を歩く俺へ顔を向ける。


「レティキュラータス家のメイドである、貴方に聞くのもおかしい話かもしれませんが……我が主、アイリス様をお見掛けすることはありませんでしたかな?」


「いいえ。アイリス様は見ていませんね」


「ふむ、そうでしたか。ちなみに、自分とミフォーリア殿は、ロザレナ様を見てはおりません。申し訳ございませんな」


「いいえ……そう簡単に見つかるものとは、思っていませんので」


 俺はそう返事をした後、ボルザークという人物を分析する。


 彼は……主人であるアイリスよりも、思ったよりも話ができそうな人物だ。


 とはいえ、ミフォーリアを含めてここにいる全員、従者として、何よりも主人を優先する人物であることは間違いない。話しの節々で、その忠誠心の高さは伺い知れる。


 今は同じ目的で行動をしているが、ネックレスを奪えと主人に命じられれば、迷いなく俺に剣を向けてくることだろう。


 俺はそう分析し終えた後、ボルザークに向けて、先程から気になっていた問いを投げた。


「ボルザークさん。前から気になっていたのですが……アイリス様は、どうして、あそこまでロザレナ様を敵視しているのでしょうか? それはやはり、レティキュラータス家と分家のオルベルフ家の間にある溝が原因なのでしょうか?」


 俺のその質問に、ボルザークは「ふむ」と口にして髭を撫でると、一拍置いて開口した。


「アネット殿も知っておられるかと思いますが、レティキュラータス家は先代の時代で、大いに荒れましてな。本来、家督を継ぐべく育てられていた長男が、才能が無いと放置されていた三女に敗北し、家督を奪われたのです」


 その話は勿論知っている。ロザレナの祖母の話だ。


「そのことに、分家に堕ちたその長男……オルベルフ家先代当主は酷く怒りを抱きましてな。家督を奪われた恨みを自身の子へ、そして孫へと引き継がせ……自分の血族の手にレティキュラータス家を取り戻すべく、思想教育を施してきたのです。その期待を一心に背負わされてきたのが、オルベルフ家次期当主であるアイリス様というわけなのです」


「確か、剣王であるキリシュタット様も、オルベルフ家の人間ですよね? 何故、彼がその復讐の役目を担っていないのですか?」


「ええ、仰る通りです。本来、キリシュタット様が、その役目を担うはずでした。ですが……キリシュタット様が15歳の時、彼が、当主の不義の子であることが発覚したのです。その件を表ざたにしたくなかった当主は、息子であるキリシュタット様を追放し、代わりに、自身の血を引く長女アイリス様を次代当主に任命したのです」


「御家騒動、という奴ですか。何とも言えないお話ですね」


「レティキュラータス家の人間からしてみれば、いつまでも昔のことを、と、仰られるのかもしれませんが……オルベルフ家というのは、その憎悪を、苛烈な教育によって叩き込まれてきた一族なのです。自分は、子供の頃からアイリス様のお傍でお世話係として仕えてきた身。申し訳ございませぬが……もし、ロザレナ様とアイリス様が戦う時は、従者としてアネット殿を倒す気でいます。それだけはどうか、ご容赦を」


 その言葉に、俺は笑みを浮かべる。


「こちらも、そう簡単に倒される気はありませんよ。私も、主人を第一に想う身。申し訳ございませんが、勝つのは私の主人です」


「……ありがとうございます。どうか、お互いに悔いなきよう、主人にお仕え致しましょう」


 ボルザークの気持ちは、俺にもよく分かる、


 長年主人に仕えてきた従者とは、何を捨ててでも、主人を優先するものだ。


 ここにいる全員、主人のために、剣王試験まで来た従者たちだ。


 その覚悟は、他の従者よりも、強いものといえるだろう。


「……止まってくださいであります! ボルザーク殿、アネット殿!」


 その時。ミフォーリアが、足を止めた。


 俺も即座に、その意図に気付く。


「……人の声が、聞こえてきますね」


 俺はしゃがみ込み、草に隠れながら、歩みを進める。


 そんな俺と同じようにしゃがみ込み、身体を隠しながら、ミフォーリアとボルザークもついてくる。


 そうして、数分程歩みを進めると……開けた場所が見えてきた。


 俺たちは木々の影に隠れながら、人の声が聴こえてきた方向へと視線を向ける。


 すると、そこにいたのは……複数人の人物だった。


「やぁやぁ! よく来てくれたね、諸君! 僕はルキウス・ブルシュトローム! 最強の剣聖の孫にして、これから伝説を刻む予定の男さ!」


 焚火の前で、石の上に乗り、そう宣言したのは白い歯を輝かせるグレーアッシュの髪の男、ルキウス・ブルシュトローム。何度も言うが、俺に孫はいない。


 ルキウスは、背後にジークハルト、ブリュエット、ポンティキを立たせ、目の前にいるエリニュス、エイシャ、ラティカと、アグニス、ジェシカ、メリアに対して、腕を忙しなく動かし演説をする。


「まずは、僕の情報属性魔法、【アナウンス】に応えて集まってくれて感謝をするよ! 【アナウンス】でも言った通り、僕は、まずはみんなで力を合わせて、箒星の門下であるあの3人を叩くべきだと思うんだ! そうしないと、第三次試験の枠……いいや、剣王の枠を彼らに取られかねない! 僕は、それだけは阻止したいんだ!」


 キランと歯を輝かせるルキウスに、アグニスが腕を組みながらフンと鼻を鳴らす。


「そのようなことは、貴様に言われなくても分かっている。我らは元より、ロザレナ・ウェス・レティキュラータスを倒す算段を付けていた」


 その彼に同調するように、エリニュスがハンと鼻を鳴らす。


「奇遇だね。私ら3人も、グレイレウスを狩る計画を練っていたところさ」


 アグニスとエリニュスのその言葉に、ジェシカはうーんと、悩ましげな表情を浮かべる。


「でも、さぁ。いくらあの三人が強いって言っても、徒党を組んで戦うのって、アリなのかな? 私的にはちょっと、卑怯な気がして、気が進まないんだけど……」


 ジェシカの疑問に、エリニュスが言葉を返す。


「この試験は、チームを組むことが前提に組み込まれているものよ。ルールに則って敵を叩くのは当然のこと。それに……緑ブロックのあんたには分からないだろうけど、あの3人の全力はマジでやばいわよ? はっきり言って、既に【剣王】に届きつつあると言える実力だわ。特に、グレイレウスの全力の速度は……長年速剣型を鍛えてきた私でも、追うことができなかった。このままじゃ、剣王の4枠の内3枠は必ず奪われるわ。誰かが倒さない限り、ね」


「同感だ。公の場の決闘ならば対等な戦を望むものだが、これはネックレスを奪い、山の頂上を目指すというレースだ。故に、自分を守るためにチームを組むのは当然の戦略ともいえるであろう」


「そう、なのかなぁ。私、馬鹿だから良く分からないけど……メリアは、どう思う?」


 ジェシカの質問に、メリアは顎に手を置き、数秒程考え込む。


「……私は……どうしても【剣王】になりたい理由がある。これ以上、亜人が酷い目に遭わないためにも。私は、今すぐにでも、上位の称号が欲しい。亜人でも【剣聖】を目指せるのだということを、証明したい……だから……勝つためならば、何でもやるつもり」


「そっか……」


 メリアの言葉に、ジェシカは頷く。


 場が落ち着いたのを確認すると、再び、ルキウスが口を開いた。


「ならばこそ、だよ、諸君! 僕は、9人で同盟を組み、残りの参加者全員を討伐しようと考えている! そのために、諸君ら2チームと、僕たちで、同盟を組みたいと考えている! どうかな!」


 ルキウスの言葉に、エリニュスは目を細める。


「あんたさ、9人で同盟組みたいって言っても、そっちは4人じゃん? 端から話合いが破綻してるんじゃないの?」


「そうだね。まさか、この場に2チームも来てくれるとは思わなかったからね~。でも、問題はないさ! その点に関しては、こちらにも考えは付いている! 勝利が確定次第、こちらのチーム内でじゃんけんでもして、勝敗を決めるとするさ! ははっ!」


 キランと歯を輝かせるルキウス。そんな彼を一瞥すると、アグニスは、背後にいるジークハルトへと視線を向けた。


「まさか、お前がこんな胡散臭い男のチームに付くとはな、ジークハルトよ」


「……これは私の本意ではない。ただ、少し、この男の動向がどうなるか気になったから、一緒にいるだけだ。エリニュス、お前の不安については問題ない。私は、この男の正式なチームメイトになったわけではないのでな」


 そう言って、ジークハルトは、色の付いていない腕輪を掲げた。


 その腕輪を見て、エリニュスは「ふーん」と首を傾げる。


「じゃあ、なんであんたはここにいるのよ、ジークハルト」


「だから、言っただろう。この男が、どこまでやれるかを見るためだと」


「元鷲獅子クラスの級長ともあろう者が、こんな胡散臭い男に興味を持つなんて、ね。あんたも地に落ちたものね、ジークハルト」


 そう言ってため息を吐いた後、エリニュスはルキウスを睨み付ける。


「それで? わざわざ情報属性魔法を使ってまで私たちをここに呼んだ理由は何? 返答次第じゃ、ここであんたらのネックレスを奪ってやっても良いんだけど?」


 その言葉に、ルキウスの背後にいるブリュエットとポンティキが剣を抜こうとするが……それを、ルキウスは手で押しとどめた。


「先ほども言った通りだ。協力しよう。僕が情報属性魔法で、指揮を執る。僕たち本隊が、ルナティエ・アルトリウス・フランシアを。アグニスチームが、ロザレナ・ウェス・レティキュラータスを。エリニュスチームが、グレイレウス・ローゼン・アレクサンドロスを倒す。決行は、今夜だ。既に彼らの場所も把握している」


「はぁ? どうやって、場所を把握したというのよ?」


「それは企業秘密だ。僕の能力にも関わってくるからね」


 そう言って人差し指を立てて、ルキウスはウィンクをする。


 なるほど……多人数で強者を叩こうとするチームが出てきた、というわけか。


「グレイレウス討伐チームである、エリニュスさんにはこのマップを。ロザレナ討伐チームであるアグニスくんのチームには、このマップを渡そう」


 そう言って、ルキウスは、二人へと二枚の用紙を手渡した。


「その場所に行けば、恐らく、君たちが倒すべき相手と遭遇できるはずだ。後は、追って指揮を出すよ。まずは、討伐対象のいる場所へと向かって欲しい」


「良いだろう」


「チッ、分かったよ。その話が嘘だったら覚えておくんだね、胡散臭い男」


 アグニスチームとエリニュスチームは、話半分という感じで頷き、その場を離れて行った。


 後に残されたのは、ルキウスのチームだけだ。


 その光景を見つめていると、隣で身を潜めているボルザークが、ボソリと呟いた。


「……まずいですな。今、彼らに見つかれば、我らは袋叩きにされるでしょう。あそこにいる10人が同盟を組んだ以上、これから彼らは、他の受験者を容赦なく叩きます。流石にあそこまで人数がいては、自分たち従者組では……太刀打ちはできますまい」


 そう言ってゴクリと唾を呑み込むボルザークに、ミフォーリアも同意するように頷く。


「そうでありますね……。自分の持っている煙玉を使っても、逃げ切れる自信はあまりありません……。アネット殿、早く、この場を離れましょう……! 某たちは、主人に出会う前に、やられるわけにはいきませんから……!」


「そうですね。では……」


 3人で踵を返した、その時。


 ミフォーリアが足元にある木の枝を、ポキリと、踏んで折ってしまった。


「あ」


「誰ですか! そこにいるのは!」


 ブリュエットがそう叫び、俺たちの方へと視線を向ける。


 振り返ると、ルキウスと俺の目が合った。


 ルキウスは俺たち3人を見て笑みを浮かべると、指を差し、声を張り上げる。


「獲物だ! ネックレスを奪うんだ! お前たち!!!!」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「あらあら。予想通り、会議をしてますわね」


 小高い丘の上に立っているルナティエとアルファルドは、崖下で焚火を囲んで話合いをしているルキウスたちを見下ろしていた。


 ルナティエは口元に手を当てフフッと笑みを溢すと、背後にいるアルファルドへと声を掛ける。


「計画は話した通りですわ。今夜、あの者たちからネックレスを奪い、わたくしは――――最速でゴールを目指します。ロザレナさんやグレイレウスに遭遇しては面倒ですからね。早々に、このくだらないゲームをクリアしてやりますわ」


 ルナティエが、そう口にした、その時。


 ルキウスが、声を張り上げた。


「獲物だ! ネックレスを奪うんだ! お前たち!!!!」


 ルキウスの配下であるブリュエットとポンティキが、森の中へと駆けて行く。


 その光景を見て、ルナティエは「あら」と言って、首を傾げた。


「あらあら。何か、アクシデントが起こったみたいですわね」


「どうする、クソドリル。日を改めるか?」


「まさか。逆に好都合ですわ。予定通り……あのチームの首魁を、早々に仕留めます。行きますわよ、アルファルド!」


「キヒャヒャヒャ!!!! いいぜぇ!! 暴れるとするかァ!! ルナティエ!!!!」

読んでくださってありがとうございました。

改めてお願いなのですが、誤字脱字はコメントの方で指摘したいただいても探すのが大変ですので、誤字報告の方でお願いいたします。

拙い文章ですが、趣味の範囲で書いていますので、ご了承いただければ幸いです。

コミカライズの売れ行きが決まり次第(コミックの売れ行き次第で打ち切りかどうか決まります)までは、書いていこうと思います。

どうかWEB版継続のためにも、書籍1~4巻、発売しましたらコミック等のご購入、お願いいたします。

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