22. 第1回 ユウにチャレンジ (2)
快晴、本日はお日柄も良く、絶好の決闘日和だ。
ユウを武術棟にある野外修練場に呼び出したオレは仁王立ちして奴を待ち受けていた。そこへのこのことやってくる影がある。ユウだ。右腕にはコロセウムの機材が抱えられていて、空いた手のほうをひらひらと振りながら笑顔でこちらへ駆けてきている。
「来たにゃ……!ユウよ!きょう、このばしょがオマエの墓場ににゃるのだ!今までさんざんくじゅーをにゃめ……にゃ……にゃめ……あーもー締まらにゃい!!」
この口はどうも滑舌が悪い。あんまり長い言葉をしゃべろうとすると、段々呂律が回らなくなるし、相変わらず『な』は言えない。
……もう前口上は封印しようかな。い、いやいや、諦めてはならない。気持ちで負けてはダメだ。オレはまだ負けてない、奴に勝つまで負けは存在しないのだ。
「先生の許可も貰ってきたよー。はいこれ腕輪ね」
一方のユウは相変わらずこちらの意も介さず、雰囲気をぶち壊してくる。 ……でも腕輪は受け取っておく。
「ところでー……」
ユウが何やら言いたそうにしている。ふむ、勝負の時に何か言おうとするのはユウにしては珍しい気がする。いつもニコニコしながら「じゃあやろっか」で問答無用の一撃をかましてくる奴らしくない。
「折角だから、わたしが勝ったらご褒美がほしいなぁ…なんて」
「……ふん、いいだろう。こんかいは万一にもオマエが勝つことはにゃいだろうからにゃ」
ユウは無邪気に「やったぁ、うふふ」と喜んでいるようだが、そんなものは絶対に無い。今日は完全にオレの独壇場となるはずなのだ。授業の内容から少しだけ手を加えた秘密兵器であるオリジナルの回路の魔術も用意してあり、これで奴を消し炭にする予定だ。
「―――……」
オレは手を上に掲げて、詠唱を詠みあげる。すると、左右に二つ顔くらいの大きさの火球がゆらゆらと生成された。火の初級魔術だ。
ふっふっふ、我ながら良い火球だ。今日は冴えわたっている。
焔が安定したのを確認してから、手を振り下ろすと、ユウへと二つの球がボウを音を立てて向かっていった。
一方のユウはひらりひらりと火球を避けてから、両手に白く輝く光を携えると、体をひねるように一回転させて、両手の光をこちらへ投げ飛ばしてきた。ユウから放たれた光は微妙に速度が出ていない。これくらいなら余裕で弾けるだろう。
オレはすぐさま空中で闇の障壁を作り出し、前方へドスンと設置する。夜闇のような黒い壁にユウの光はガンガンと子気味の良い音で弾かれ、霧散する。よし、順調だ。
……そして、いよいよこれのお目見えだ!
「―――……!」
詠唱が終ると、空中に無数の火球が作り出され、空を覆った。これがオリジナル回路の魔術。名付けてファイアーフェスティバル!
……まあ、一気に初級魔術を大量に作り出しているだけなのだが、見た目がカッコイイから良しとする。それはともかく、オレはユウのいる地点めがけて空の火球を連続で放ちまくった。火球はうなりを上げ、バラバラとユウのいる地点に乱雑に着弾する。ふっふっふ、圧倒的な物量で圧倒的なパワーが圧倒的だ。勝てる、勝てるぞ!
……しばらく火球による弾幕をはり続け、いよいよ空の火球がなくなると、オレは最後に少しだけ大きめの火球を放ち、全弾放ち終えた。様子を伺ってみていたが、ユウがいるであろう地点は、もくもくと煙があがるばかりであり、反撃は特に来ないようだ。
…………勝った。ついに……!
「はい、捕まえた」
…………!?
突然後ろからユウの腕が現れ、オレの胴を捕まえ、抱き上げられた。足が地面から離れ、体が宙に浮く。ぎょっとして、自分が攻撃していた地点を見ると、何やら人の大きさくらいの土くれが盛り上がっているだけなのが見える。 ……どうやらいつの間にやら入れ替わっていたらしい。
……しまった。撃つことに集中していて、避けられることを想定していなかった。と、とりあえず抜け出さねば……!!
「は、はにゃせ!はーにゃーせーよー!!」
「ふふん、これで私の勝ちだよね!」
「んにゃっ……!まだ!まだ勝負はおわってにゃい!」
ユウは既に勝ち誇った感じの顔だが、そうは問屋が卸さない……!オレは必死にもがいて、奴の手から逃れようとするが……ビクともしない。いや、ほんとコイツの怪力なんなの……。
「ふぅん……」
オレが決死の抵抗を続けていると、ユウは何やらいじわるそうな顔をして、オレをにんまりと見下ろしているのが目に入った。
…………嫌な予感。
「えい、こちょこちょこちょこちょー」
「にゃっ!にゃはっ!んにゃはははは!ひゃっんははは!ひゃ、ひゃめっ!にゃはははははは!」
「ほらほらーこれでもか~これでもか~」
「にゃはははふふふふははは!や、やめっ…んみゃぅ!ひゃっひゃふふふふふふ!かちで、かちでいいからぁ!んにゃはははははは!!」




