21. 第1回 ユウにチャレンジ (1)
……マオは激怒した。必ずかの邪知暴虐なユウを除かねばならぬと決意した。メシデスに、お風呂であ……あ……あんな事!今回ばかりは許しておけぬ……!
お風呂事件から数日。あれから授業が進み、トンデモ魔法ではない、しっかりとした初歩魔術を覚えることができた。授業が始まってすぐの頃は適性が分からず、この口はどうも滑舌が悪いから不安だったのだが杞憂だったようで、特に縛りもなく魔術を使えるようだし、詠唱の方は音さえ沿っていれば割となんとかなるようだ。ボソボソした声でも良いのだから、そうゆう事なのだと思っているが実際の所は不明だ。
そこで、この魔術を駆使して、奴にお礼参りをしようと画策している。オレの魔力は奴よりは高い事が測定で証明されている。つまり、今ならば奴に勝てる見込みが十分にあるという訳だ。作戦名は「新芽摘み取り作戦 -ユウがまだあまり魔術を使えないうちに叩く-」である。卑怯?お風呂に入れるほうが卑怯だ、問題ない。
さて、オレは学食でセシルと共にどんな感じで奴に魔術をぶち込むかの談義をしながら、昼食を食べていた。オレの計画を聞いたセシルは、オロオロとしているようだ。
「やめておいた方がいいよ……先生も、無暗に人に向けるなって言っていたでしょう?」
「アイツは人じゃにゃいから問題にゃし」
「えぇ……」
うん、奴に流れている血はきっと黒色とか紫色とかに違いない。セシルは大丈夫かなぁとオレの事を心配してくれているようだが、心配は無用だ。長年培ってきたユウ対策のお陰で、オレの心は強靭無敵だ、しかも、今回はちゃんとした魔術という武器を手に入れているのだ、勝てる予感しかしない。 ……ん、ポトフのニンジンは避けて、と。
「で、どうするの?」
「とりあえず広いところによびだして、魔術をありったけぶつける」
「……あんまり考えてないんだね……」
大丈夫だ、これは一見雑に見えて、実に高度な計算の元で導き出された最良の方法であるのだ。なんといっても、ユウとオレだと魔力量はオレの方が上。奴が1発撃ったら10発撃ち返せば良い、10倍返しだ。例えるならば、雪合戦で、手持ちの雪がこちらにはいっぱいあるということなのだ。
……つまり、ゴリ押せばなんとかなる!高度な計算?10倍だぞ、強いに決まっている。勝ったな。
「ところでマオ」
「……んぅ?にゃんだ?」
心の中でガッツポーズをしていると、困った笑顔をしたセシルがこちらを見つめていた。ふむ、どうやら、まだ不安要素があるらしい。オレはダイジョウブ!と胸を張っていってみたが「いや……」と、煮え切らない返事だ。どうゆう事だろうか?
「……ニンジンも食べてね。大きくなれないよ」
「いらにゃい」
……ハッ。こちとら大きくなるどころか二回り以上コンパクトになった身だ、もう知った事ではない。いうなれば最早無敵というやつだ。だから、ニンジンは食べなくていいし、お肉だけ食べていても良いのだ。
「好き嫌いは……ダメ、だよ?」
いつもは優しいセシルから、黒めのオーラが見える。その顔には笑顔が貼りついているが、言い知れぬプレッシャーを感じる。
……え、コワイ……。
「……食べてね?」
「………………ハイ」
―――……。
昼食を食べ終わった後、オレは、ユウに果たし状を叩きつけるべく、Bクラスを訪れていた。
「たのもーう!!」
扉を開けて辺りを見回すと、ユウは教室の真ん中あたりで4人の女子と談笑していたようだ。オレは人をぬって避けながらズカズカとユウの前に躍り出ると、用意してきた果たし状をユウの座っている傍の机に叩きつけた。ユウはキョトンとしていたが、すぐに「ああ」と分かったような感じの声を上げると、オレの渡した果たし状に目を通した。
「明日、けっちゃくつけてやるからにゃ!」
「うーん……私はいいんだけど~……うん、今のマオちゃんだと危ないからコロセウムを用意かなぁ」
コロセウムとは、アルカ王国の技術の粋を集めて作られた、ボードゲームのコマのような形をした置き型のモノと、それに対応する腕輪型の魔道具だ。自身と周囲の地形に強烈なバリアを張って、自身のバリアが弾けたら負けという、闘技場や御前試合なんかで使用されている代物で、ルールを守れば安全に決闘が出来るわけだ。既に舐められている気がするが……。まぁ、それくらいはいいか。
「とにかく、にげるにゃよ」
よし、これで準備は完了だ。ふっ、覚悟するがいい。……うん?何やら、囲まれているような…。
「この子がユウちゃんがいつも言っているマオちゃん?」
「遠くに見かけたことはあったけど、近くで見ると本当に可愛いー!」
………………。
戦略的撤退ッ!!




