最後の戦い~大蛇
大蛇になったアケルナルに二人して黙り込む。
「フフフ……恐怖に声も出ないようね?」
大蛇を見ながらアリアが呆れる様な口調で告げる。
「蛇って変温動物って聞いたことない? そして私は氷の魔法が得意。 言いたい意味わかる?」
「そうかしら? それじゃあ試してみれば?」
ビュン!!
いきなり尻尾で叩きつける!!
「あぶねぇ!」
ロードが抱きかかえたアリアごと地面を転がる!!
バシン!!
尻尾がアリアを捉えきれず地面を叩きつけた!
石畳みの石にひびが入る!
「『氷葬』」
転がりながら魔法を唱えたアリア。
アケルナルの体が瞬時に凍り付く!!
「これなら……」
凍り付いたアケルナルに勝ち誇った顔をするアリアだが、
ビュン!
「ぐあ!」
「きゃぁ!!」
叩きつけた尻尾を横にスライドし、ロードとアリアが叩きつけられる!
そして、そのまま壁に激突し地面に倒れこむ!
必死に上半身を起こすアリア、その頭部からは血が流れて地面に滴る。
驚愕しながら、
「そ、そんな! 完全に凍ったはずなのに……」
ピシィ!!
凍ったアケルナルの氷にひびが入り、下から大蛇の姿を現す。
「私を普通の蛇扱いした罰ね。 私はいつでも何回でも脱皮出来る」
赤い舌をチロチロさせる。
「じゃあ、私が凍らせたのは……」
「そう、表面の皮だけ」
鎌首を上げてアリアを見下ろす。
体を引きずりつつ立ち上がったロードがその体に剣を振り下ろす!
ジュゥゥウ!!
振り下ろした刃から煙が上がる!
「!?」
見ると刃部分が溶けていた!
「刃が……溶けて……」
「私の体表には溶解液が付いているの。 だからね」
アケルナルの体が素早くロードに巻き付く!!
ジュゥゥゥゥゥゥゥゥ!!
「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
ロードの体から煙が上がり、大声で叫ぶ!!
「ロード!!」
アリアがヨロヨロと立ち上がると、
「『氷槍』」
氷の槍を出現させ、ロードに巻き付いている胴体目掛けて飛翔させる!
アケルナルはロードを解放してそれを躱すと、元の位置でとぐろを巻く。
氷の槍は空をきって床で砕け散った!
「はぁ……ぐっ! はぁ……はぁ」
皮膚が爛れたロードが息絶え絶えに倒れこむ。
鎧のおかげで体の大部分は無事なようだが、むき出しの腕や足などが溶けかけている。
鎧や服も溶けかけており……なんでも溶かすようだ。
「フフッ どう? 私の熱い抱擁は?」
倒れこんだロードだが、剣を杖代わりに必死に立ち上がると、
「お、お前なんかに抱きしめられてもなんとも思わねーよ」
「あら? そう? じゃあもっと抱きしめてあげるわね」
「『氷葬』」
瞬時にアケルナルが凍るが、すぐに氷が剥がれ落ちていく!
「無駄だと……」
「『氷葬』」
再度凍って、すぐに氷が剥がれていく。
「『氷葬』」
「言っているのよ!」
何回も繰り返されイラついたアケルナルが尻尾で薙ぎ払う!!
「アリア!」
ロードが盾を構えてアリアを守るが、力が強く二人して再度壁に叩きつけられた!!
「がはぁ!」
「きゃ!!」
倒れこむ二人にアケルナルが近づく……近づこうとして、
「?」
違和感を感じたアケルナルが床を見ると……凍り付いている。
『氷床』により床が凍ってゆく。
「いつの間に……」
「貴方が……さっきロードの剣を……つぅ……受けている、時よ」
立ち上がれないのか膝を地面について四つん這いの体勢でアリアが答える。
凍り付いていく床に額や口から血が垂れていく。
ロードも剣を手に必死に立ち上がる……盾は今の一撃で凹んでひびが入っている。
もう盾の意味をなさないだろう。
「コホッ! カハッ! 」
アリアの口から血が吐きだされる。
しかし、息を絶え絶えにしつつ、
「『静寂世界』」
瞬時にアケルナルが凍り付く!
「魔法を変えても一緒よ!」
凍り付いた蛇の皮の下から新しい姿が出てくる。
またもや脱皮で回避したようだ。
しかし血を吐きながらもアリアは魔法を止めない。
「『氷葬』」
「『氷葬』」
「『氷葬』」
その度にアケルナルが脱皮で回避する。
「一体なんのつもり?」
苛立ただしいのか口調が鋭くなるアケルナル。
「フッ……フフッ。 どう? まだ気づかない? 『氷葬』」
「何を……!?」
再び脱皮で回避すると……違和感を感じて口を閉じる。
(こ、これは……)
「気づいたかしら? 今の状況」
アリアの吐く息が白い……。
(か、体が……)
部屋中の温度が下がっている……部屋中に撒かれた氷、そして氷魔法の乱発。
更には『氷床』により部屋中が凍らせられて行っている。
それによりアケルナルの体も徐々に動きが硬くなる。
脱皮をしても……新しい皮がすぐに凍り始め動きを阻害し始める。
アケルナル自身も体温が下がり体が動かなくなりつつあった。
(あそこから部屋の外へ……)
キープ達が入ってきた部屋の入口は開いている。
あそこから部屋の外へ出れば寒さから逃げられるだろう。
しかし……、
(ま、前に進まない!)
前に進もうと胴をウネウネさせるアルケナルにアリアがニヤリとし、
「蛇は……鱗の境目を地面に引っ掛けて進むのよね? ツルツルの氷の床に引っ掛けられるかしら?」
「……甘く見ない事よ! こうなったらあなた達ごと踏みつぶしてやる!」
アケルナルが尻尾を壁に叩きつけた!!
その反動を使って移動し始める!
床が凍っている事もあり、ツーと滑ってアリアに迫る!
「『氷槍』」
向かってくるアケルナルに氷の槍を出現させ……放つ!!
「貴方の軌道は丸わかりなのよ!!」
アリアの魔法は直線に飛ぶ……放ってしまえば躱すのは容易い。
「俺もそう思うよ」
「なっ!」
飛翔する氷の槍にロードが飛びついた!!
それにより……槍のコースが変わる!!
「あ、やめ……」
ドス!!
深い音がしてアケルナルの頭を氷の槍が貫いた!!
「あ……ああ……」
アケルナルが倒れる……体を震わせ……尻尾がぱたりと床に垂れる。
そして……完全に動かなくなった。
「ぜーはー……さ、寒い」
力尽き地面に倒れたロードが体を震わせつつ呟く。
「わ、私も流石に寒いわ……」
アリアも白い息を吐きだしつつ答える。
「ま、魔法を解除してくれ……」
「もうしているわ……でも石作りの部屋だし……自然に気温が下がるのを待つしか」
「まじか……」
四つん這いだったアリアがぺたりと倒れこむ。
「冷たい……ゴホッ!」
口からはまだ血が出ている……。
「だ、大丈夫か? アリア」
「……ええ、何とか……ゴホッ! ね」
倒れて四肢を投げ出すロードも体中が傷と爛れで酷い有様だ。
「チッ 早く……追いつきてーが……」
「体がね……動かないわ……」
「同じくだ」
ロードとアリアはそれだけ言うとキープ達の消えて行った扉を見るのであった。




