第21話 グリフォンの翼
今回は修正に加え、前作には登場していない新しい登場人物達を加えました。
二人がギルドの外に出るとギルド前の広場には多くの冒険者達おり、そのうちの一人の冒険者が礼治達に近づいてきた。
その冒険者は茶髪のオールバックで顎ヒゲを生やし、金ピカな斧を背負ったヒューマン族で三十代後半の身長185センチの筋肉質な男性だった。
「おい坊主。お前まさか戦いに参加するつもりじゃないだろうな?」
男は礼治に質問を投げ掛けた。
「はい。戦いに参加しますが」
礼治はさも当たり前かのように答る。
「ふざけてんじゃねえぞ坊主‼︎」
すると男は礼治の答えを聞いた瞬間怒鳴り声を上げる。
「何が『参加しますが』だ⁉︎テメエは昨日冒険者になったばかりの新米だろうが‼︎新米は大人しく避難しろ‼︎」
「嫌です。それに俺はあなたの指図を受けるつもりはないので」
怒鳴り声を上げる男に対して礼治は自身の意思を曲げることはなかった。
礼治の返答を聞くとほぼ同時に男は背負っていた金の斧を手に取り斧の刃を礼治の首元に当てる。
「坊主。これが最終忠告だ。ここで死ぬか?それとも避難して生きるか?選べ」
男は武器を使い、礼治を脅すようにして二択を迫ってきた。
これを見ていたフールは当然の如く礼治を守るために動こうとした。しかし、それに気づいた礼治は右手を上げフールを静止させる。
フールは礼治の指示に渋々であるが従う。
「【タロットマジック】小アルカナ、剣」
フールが指示に従ってくれたことを確認すると呪文を唱えて異空間から『風の剣』を取り出し、礼治は臆することなく男の喉元に剣先を突きつける。
「俺は戦って生き残り帰ってくるとギルドの職員さん達と約束をしました。なので俺はここで死ぬつもりも逃げるつもりもありません。もし邪魔をするんでしたら死なない程度で邪魔者というあなたを排除しますが?」
「男に二言はないか?」
「はい」
お互い相手に武器を向けたまま暫くの間睨み合った。
暫くの間ギルド前の広場は突然の静けさに包まれる。
「ぷっはははははーーー‼︎」
「「‼︎‼︎‼︎」」
礼治と睨み合っていた男が突然、沈黙を破る大声で笑い始め、礼治に向けていた斧を離した。
突然の笑いに二人は動揺する。
「ちょっとリーダー。睨み合ってた相手が急に笑い出すから二人が動揺してますよ」
「まったく。こいつは毎回やることが極端なんだよな」
「まあ、それがウチらのリーダーだから仕方ないっすよ」
二人が動揺していると男の少し後ろで控えていたヒューマンの男二人と女一人がこちらに寄ってきていた。
「あの、あなた方はいったい?」
未だに状況が飲み込めずにただ呆然としてしまう礼治は今の状況に戸惑うばかりである。
「そういや自己紹介がまだだったな」
戸惑う礼治に対し四人のうち、剣士風の男が自己紹介を始める。
「俺はAランク冒険者パーティー『グリフォンの翼』の一人、パルケスだ。よろしくな」
パルケスと名乗る男は二十代後半で赤い鎧を身に纏っていた。
「次はウチっすね。ウチは『グリフォンの翼』の一人、カルナっす。よろしくっす」
次に自己紹介をした女性は二十代前半で身軽な装備に腰には二本の短剣がさしてある。
「同じく『グリフォンの翼』の一人、アスマンだ。このバカが迷惑をかけたなっ‼︎」
「ゴフッ‼︎」
アスマンと名乗った男は黒のローブを身に纏っており、手に持っていた杖を斧を持つ男の腹に力強く叩きつけた。
見事に鳩尾に杖がクリーンヒットに男はあまりの痛みに一歩下がり鳩尾辺りを手で抑える。
「おい、アスマン。流石にそれはないだろ」
「バカにはこれぐらいが丁度いいんだよ。それよりサッサと自己紹介しろ」
あまりの対応に文句をつけるもバッサリと意見を無視された男は黙って礼治とフールの方に向き直る。
「会っていきなり試すようなことをしてすまなかったな。俺の名はロイド。『グリフォンの翼』のリーダーをしている」
最後にロイドと名乗ったAランクの仙人級冒険者は金色の斧を背負い直すと二人に謝罪してきた。
「いえ、俺も忠告された時に剣先を突きつけてスミマセンでした。しかし、俺は何を試されていたんですか?」
礼治も慌てて『風の剣』を異空間になおしてからロイドに謝罪した後で疑問に思ったことをロイドに質問した。
「確かレイジだよな?いい名じゃねえか。試したのはお前の宣言がでまかせかどうかだ」
「俺の宣言がですか?」
「ああそうだ。お前は新米なのにギルド職員達に『生きて帰ってきます』って言ってたろう?そんなことは誰にでも言えるが実行できるやつは殆どいねえ。だから俺はFランクで新米のお前を試した。本当に強い意思を持っているのかどうかをな」
どうやら礼治の声は本人が思っていた以上に大きかったらしく、ギルドの外にまで聞こえていたらしい。
それを知った礼治は恥ずかしさのあまり悶え死にそうだった。そんなことを知らずロイドの後に他のメンバーである三人が話を続ける。
「その宣言を聞いたリーダーがその覚悟を確かめる為にあんな考えなしの馬鹿な行動をしたというわけだよ」
「リーダーはいつもこんな感じで馬鹿で脳筋っす」
「こんな奴だが、後輩を気にかける面倒見が良い奴でもある。だから後輩思いの筋肉馬鹿と理解してくれればありがたい」
「おい、お前ら。流石に酷くないか?」
三人からの酷い言われように文句をつける。
「脳筋馬鹿は黙ってて下さい」
「脳筋馬鹿は黙ってて欲しいっす」
「脳筋馬鹿は黙ってろ」
「っあ、はい……」
しかし、三人から同時に返ってきた身もふたもない言葉に黙り込んでしまった。
「あ、あの。大丈夫ですか?」
そのあまりにも居た堪れない姿に礼治は落ち着き、声をかける。
「あ、ありがとな」
礼治の一言にロイドは救われ、その状況から先程の話に戻した。
「そんでレイジ。お前は最後まで自分の意思を曲げずに貫き通した!もうここにはお前を新米だからと見下そうとする奴はいねえ!」
ロイドは落ち込みを振り払い、先程の失態を挽回しようと腹から大声で先輩の立場として礼治を冒険者として認めると宣言した後、背後を振り返り他の冒険者達に目を向けた。
「ヨッシャーー野郎ども‼︎コイツが言うように俺らの力でこの戦いに勝って全員で生きて帰るぞ‼︎‼︎」
『おおーーーーーーー‼︎』
冒険者達の心が思いが一つになった瞬間だった。
「なんだい?私を抜きにしてもう士気を鼓舞したのかい?」
突然の声に礼治やフール、それと『グリフォンの翼』を含む冒険者達が一斉に声の聞こえた方向を向くとそこにはギルドから出てきたギルマスのエネドラと警備兵団長のジグトが立っていた。
「お前んとこの冒険者は元気だけが取り柄で良かったなハッハッハッハッハーーー!」
「あんたんトコも似たようなもんだろうがこのジジイ」
「何言ってんだ?俺はまだ四十二だぞ?俺よかあんたの方が結構年う「<ギロ>なんか言いたいことがあるのかいジジイ?」……ハイ、俺がジジイです」
ジグトがエネドラに対し、女性にとってはタブーなことを言おうとした瞬間、エネドラの刺されんばかりの強く恐ろしい視線で睨まれ言葉を濁した。
そんな光景に礼治を含む冒険者の男性一同は女性と話す時は言葉に気をつけようと誓った。
「オッホン。じゃあもう一発士気に鼓舞すっかな」
エネドラはわざとらしい咳をした後に一歩前に出た。
「おい、野郎どもよく聞け‼︎ 後一時間したらゴブリン軍団が南門に到着する!その数は500体以上だ!しかも上位種や特異種が混じってやがる‼︎だがそれがどうした!私ら冒険者がそんな奴らに負けるはずがない‼︎中には全員で生きて帰るとほざく『新米化け物バカ』がいたが上等じゃないか‼︎私らギルドの冒険者として魔獣共に力の差を見せつけてやろじゃないか‼︎‼︎」
『おおーーーーーー‼︎‼︎』
エネドラの鼓舞にまた一段と声を大きくあげる冒険者達。
若干一名の心には大きな傷が付いたが誰かの支えがあって何とか持ちこたえる。
「よし!士気が高まったところで今回の討伐戦の作戦内容を説明する。全員耳の穴かっぽじってよく聞いてな」
エネドラは討伐戦の作戦内容を説明し出した。
「まず私らは南門近くに待機。ゴブリン軍団が森から出て来た時は直ぐには攻撃を開始せずに粗方のザコが森から出てきてから魔法と弓矢を主体とした遠距離攻撃で先手を打つ。しかし、その間に敵が遠距離攻撃を仕掛けてきたり、回復をされたら厄介だ。だから敵の遠距離攻撃役と回復役を無力化する者が必要だ」
エネドラがそう言い放った後、礼治の方を向く。
「お前の使い魔の中には鎖で敵を拘束する者がいたな?」
礼治はエネドラが言おうとしていることが何かを分かった。
「ハイ。確かに鎖で敵を拘束する家族がいます。しかし、鎖で一体一体を拘束をするよりも、重力を操れる家族が一人いるので今回はザコを重力で押し潰し、更に残ったゴブリンを遠距離攻撃で潰した方が効率がいいと思います」
礼治はエネドラの言わんとすることを理解した上で、更に効率が良い別の作戦を提案する。
「それは便利だな。先に聞いておくがお前は今回どんな使い魔を呼ぶつもりだ?」
礼治に対しエネドラは更に質問をする。
「そうですね…。先程申したように重力でザコを押し潰すのに一人、強力な敵の拘束役に一人、音が届く範囲にいる仲間のみを回復させることができる回復役を一人、攻撃に特化した突撃役を一人、後は敵の頭までの道を切り開いてくれる役を一人、その間の頭と戦う役の人の守りに徹してくれる防御役に一人と合わせて六人の家族に力を借りようと思います」
礼治はその質問に少し考えてから答える。
何故ここでフールを数に入れなかったかというと、一応エネドラ以外にはまだフールが大アルカナの一人であることを保険のために隠しておくことにしたからだ。
まあ、バラして良かったんなら昨日のフールが暴走しそうになった時に人目を気にせずに強制で異空間に戻すことができた礼治なのである。
「お前は色々な種類の使い魔を従えているんだな」
「お前って結構すごいやつなのか?」
その返答によりエネドラやロイドを含む冒険者達から関心されるのであった。
「よし。作戦内容はこうだ。まずは敵が森から出てきたところを重力魔法を使うレイジの使い魔が一掃。その後は遠距離攻撃で敵を粗方片付ける。次に敵の頭が見えたら私と今ギルドで一番ランクの高いロイドと私に大口を叩いたレイジを中心にして周りを固めてから敵陣に突撃して頭に近づき、そして潰す!後の残りの者はザコの相手や後方支援役の守りを街の警備兵と一緒にこなしてくれ。わかったか野郎共‼︎」
『おおーーーーーーー‼︎‼︎』
いつの間にか重要な役の一端を担うことになり驚く礼治をよそにギルド前の広場には戦いに向けて雄叫びが上がるのであった。




