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第19話 ギルマスからの呼び出し

朝の9時の鐘の音で礼治は目を覚ました。

フールが異空間に戻っていった後、結局することが見つからなかった礼治は仮眠を取っていた。

礼治は目を覚ましてから大きく伸びをした後、フールを呼び出すために呪文を唱える。


「【タロットマジック】大アルカナNO.0『フール』」


呪文を唱えるといつも通りの光が放たれ、中からフールが現れる。


「礼治様二時間一分十五秒振りですね。私は首を長くして待っていました」


「ハハハ、フールは相変わらずだな」


礼治は昨日と同じく秒刻みだったフールについつい笑ってしまう。


「プゥー。私は礼治様とは一秒でも長く一緒にいたいんですー」


頰を膨らませながらそう言ってきたフールであり、礼治はそんなフールの頭に手を置き。


「ごめんねフール。依頼を受けにギルドに行こうか?」


フールの頭を撫でながらギルドに行くことを提案するとフールは頰を膨らますのを止め、今度は頰を赤く染めてから一度だけコクンと頷いた。


それから二人は部屋を出て鍵を閉めその鍵を一階にいたラルファに預けてギルドへと向かった。


宿屋を出て約十分後、二人はギルドに着くと昨日、礼治が壊していた扉は修理されており、その修理された扉を開けてギルドの中へと入る。

ギルドに入ってきた二人に他の冒険者から注目の的となり、冒険者達がひそひそと何かを話していたので礼治は耳を傾けてみる。


〔あのガキが昨日冒険者になって早々Dランクの冒険者を一方的に倒した奴かよ〕


〔ああ、何もないところから杖やコップそれからコインや剣とかを取り出したりして火と水と土の魔法を放っていたらしいぞ〕


〔じゃあ、あのガキの隣にいるのがEランクパーティーの狼の牙を風魔法一発で一人を気絶させ、残りの二人は威圧して腰を抜けさせた嬢ちゃんか?全くそんな力があるように見えないんだが?〕


〔バカ野郎!お前はあの時ここにいなかったからそう言えるんだよ!あの時の嬢ちゃんの威圧は遠くで見ていた俺の所にまで届いたんだぞ‼︎〕


〔あの男スゴくカッコいいし、それでいて強いんだなんて。私の男になってくれないかな?〕


〔そんなこと言うんじゃあねえよ!お前あの嬢ちゃんにもし聞かれたら威圧だけで殺されるぞ‼︎〕


昨日の礼治とフールの起こしていた騒動のせいですっかり目立つ存在になってしまったが二人はそんなことは気にせずに受付カウンターへと向かう。

受付に行くと昨日と同じくマリーがいるところが空いていたので礼治はそこへ向かう。その時フールは少し嫌な顔をしたものの、礼治はそれには気づかなかった。


「おはようございます。レイジ様、フール様。お二人はもうギルドの中では有名人ですよ。私達ギルド職員の中ども『期待の新人現る‼︎』って感じで盛り上がっています」


マリーは二人が有名になったことをまるで自分のことのように喜んでおり、そのマリーの様子に自然と笑みを浮かべてしまう礼治であった。


「おはようございますマリーさん。早速なんですが、Fランクに昇格した冒険者にする説明を聴かせてもらっていいですか?」


二人は昨日聞けなかったFランクに昇格してから受けないといけない説明を聞いておらず、今日の朝ギルドに来てから説明を受けることにしていたのだ。


「あの、実はそのことなのですが。レイジ様とフール様には大変申し訳ございませんが説明を受ける前に一度、ギルドマスターにお会いして頂けませんか?」


「「ヘェ?」」


しかし、マリーの突然の申し出に二人は変な声を出してしまった。


「あの、すみませんマリーさん?ギルドマスターが俺とフールに会いたいと言っているんですか?」


変な声を出してから数秒後、礼治はマリーにそう聞き返した。


「はい。ギルドマスター直々にお二人にお会いして話をしたいらしく、お二人がギルドに来たらすぐにギルドマスターの部屋にお通しするようにと承っております。多分昨日のことでだと思います」


(イヤイヤイヤ。逆にそれしかないでしょう⁉︎)


礼治は心の中でマリーにツッコミを入れた。

その後はマリーの話を聞いた後で考えるふりをしてフールに合図を出してから【念話】で話し始めた。


[フールはどうしたらいいと思う?]


[そうですね……。私の正体と礼治様が異世界人であることがバレなければ大丈夫だと思います。逆にここで拒んでしまうとかえって怪しまれるかと思います]


[やっぱりそうだよな…。じゃあ念のためフールはステータスを今のうちに偽装しておいて。ギルドマスターになる人だからステータスを見るスキル持ちかもしれないし]


[分かりました礼治様]


二人が話し合った結果、ギルドマスターに会うことに決まり、二人はスキルを使ってステータスの偽装を始める。


「分かりましたマリーさん。今からギルドマスターに会わせてもらっていいですか?」


「はいもちろんです。それではギルドマスターがおられる部屋まで案内しますのでついてきてください」


ステータスの偽装を終えた二人を案内するためにマリーはカウンターの上に『現在お取り込み中』と書いてある立て札を置いてから二人をギルマスのいる部屋に連れて行く。

その途中、他の冒険者達がひそひそと何かを話していたがそれを二人は気にせずにマリーの後をついていく。


三人は階段で五階まで上がり、廊下を少し歩くと周りの部屋の扉に比べ大きい部屋の扉の前に着いた。

マリーはその扉をノックする。


「ギルドマスター様。受付嬢のマリーです。お二人をお連れしました」


「入ってくれ。扉の鍵は開けてあるから」


マリーが呼びかけた後、間をおかずに部屋の中から返事が返ってくる。


「失礼します」


マリーは部屋の主であるギルドマスターの指示に従って扉を開け、中に二人を招いた。


部屋の中はシンプルで、壁際には沢山の本棚があり大量の資料が詰め込まれていた。部屋の中央には客人を座らせておくソファーとテーブルが置いてあり、その奥には机の上に大量の資料の山からこちらを覗く見た目が三十代前半の女性がいた。

その女性の耳は尖っており礼治はすぐに彼女が小説でよく出てくるエルフであることに気づいた。


「よく来てくれたねお二人さん。マリーもわざわざ案内をありがとう。後はこっちでするから持ち場に戻ってくれ」


「わかりました。では私はこれで失礼させていただきます」


「案内ありがとうございましたマリーさん。お仕事頑張ってくださいね」


マリーはギルマスからの指示で部屋を出ようとしたところを礼治はわざわざ仕事の合間を縫って案内してくれたマリーにお礼を言った。


「は、はい。私は今から仕事に全力を尽くし頑張らせて頂きますニャ!そ、それでは失礼しますニャ‼︎」


礼治に応援されたマリーは顔を赤くさせ、嬉しさと恥ずかしさによって俯いた状態から風のように仕事場へと戻って行った。


それを見送った礼治がフールの方を振り向くとフールは礼治のマリーに対しての対応に不機嫌な顔をしていた。


「どうしたのフール?」


「別に何もありません‼︎」


鈍感すぎる礼治には彼女が不機嫌になる理由を理解するはずもなく、フール機嫌を悪くしそっぽを向く。


「おーいお二人さん?そんなとこにいないでこっちに来て座ってくれないか?」


その声を聞きずっと扉の前で立っていた二人が部屋の方に顔を向けると、ギルマスは先程まで座っていた席からソファーに移動しており、今はいつのまにか準備されていたお茶を飲んでいた。


二人は慌ててギルマスの向かい側のソファーに座る。


「冒険者登録して次の日に早速呼び出してすまないな。私はこの冒険者ギルド『アルバス』支部のギルマスをしているエネドラだ。よろしくなお二人さん」


「Fランクの冒険者の礼治です。よろしくお願いします」


「同じくFランクの冒険者のフールです。礼治様共々よろしくお願いします」


礼治とフールはギルマスに頭を下げて挨拶をする。


「そう畏まらなくていいよ。私はそう言った硬いのはあまり好きじゃなくてな。だから楽にしてもらえるとありがたい。まあ、取り敢えずお茶でも飲んでくれ」


ギルマスであるエネドラに薦められるまま二人はお茶を飲んで一旦落ち着くことにした。

そして二人が落ち着いたと判断したギルマスは本題へと入った。


「今日二人を呼んだのは別に昨日ギルドの扉を壊したりだとか壁を壊したから説教しようと思っているわけじゃなく、ただ君達二人に興味があったからなんだよね」


「俺達にですか?」


「そう。君達はもうギルドでは知らない奴はほぼいないからね」


礼治達はただ絡まれただけであるが結果的に一日で二回も騒ぎを起こせば注目を集めてしまうのは当然のことである。


「確かに今までにも有名になった奴はごまんといた。だけどたった一日だけで有名になる奴はお前達二人が数十年振りでな、それと君はたしかレイジといったな。私は君に一番興味がある」


この時ギルマスからの言葉に礼治は驚きを隠せずギルマスを凝視してしまった。


<ピキ>


突如、聞こえてきた音により我に返った礼治はその音が聞こえた方へ向くとそこにはフールが額に怒りマークをつくりギルマスを睨んでいた。


「ああ、勘違いはしないでくれよ。私が言った『興味がある』は男としてではなくてレイジが使う【タロットマジック】についてだよ。だから別にあんたから最愛の男を盗もうとかしないから安心しな」


フールのそれに気がついたギルマスは直ぐに弁解に入った。


「それなら別に構いませんね。私の礼治様は誰にもあげませんから」


フールは怒りの表情から一変すぐに元の表情に戻ったのである。


「よし。あんたの奥さんの機嫌も直ったから本題に入らせて貰うよ」


フールはギルマスの言葉を聞いた瞬間、今度は顔を真っ赤にしてから。


「私は礼治様の奥さん♡、私は礼治様の奥さん♡、私は礼治様の奥さん♡、…………」


っと自分の世界へと入っていってしまった。


そんなフールを置いて礼治とギルマスは会話を始める。


「まず私は見ての通りエルフ族であり、弓はもちろんのこと四大元素魔法や生活魔法の基本的な魔法からエルフが最も得意とする精霊の力を借りて放つ魔法【精霊魔法】を熟知している」


(やっぱりエルフはこの世界でも弓や魔法の扱いに長けた種族なんだな)


エネドラの話を聞き、礼治が元の世界で読んでいた小説の内容とエルフ族の特徴が一致していたので話を直ぐに理解する。


「そんな魔法に特化した種族でその中でも私は長い間、独学で魔法の研究をしているにも関わらずだ!君は何故、私が知らない魔法【タロットマジック】という魔法を扱っている!」


突然エネドラがテーブル越しに礼治に迫ってくる。


「昨日の君の魔法を見ていた者達から聞いた所によるとだな。君は何もない所から杖を取り出し火魔法で槍を放ち、今度は聖杯を取り出して水魔法で回復を行い、次には二つの武器を何処かになおしたかと思ったら、今度は金貨を複数枚取り出して投げつけてそれから土魔法を使い大きな壁を形成した。他にも剣を取り出していたらしいが私の見解では君が使う武器にはそれぞれ四大元素魔法の一つ一つを使うことができ、その剣は風魔法を扱うことができる装備だろう。どうだ?違うか?」


礼治はギルマスの勢いに驚き、また【タロットマジック】の小アルカナの仕組みを実際に見ていないにも関わらず完璧に理解されたことに驚いた。


「しかもだ!タダでさえヒューマンは四大元素魔法のうち三つの属性魔法を取得していれば大賢者と扱われるのに対して君は四つ全ての魔法を扱え、尚且つ召喚魔法で強力な使い魔を呼び出すことができる。それら全てが詰め込まれた【タロットマジック】という世界の理を超越した魔法を取得している君は一体何者なんだ⁉︎」


どうやら礼治はギルマスですら驚きを隠せない程の力を持っていたらしく、世界の理を超越した者として見られているらしい。


(もう化け物決定かー。まあ前から気づいてはいたけどやっぱり他人からそう言われると落ち込むなー<ガックシ>)


魔法を熱く語るギルマスの言葉に自分が化け物である事を認めざるを得なくなり落ち込んでしまった。


それに対してフールは、主人である礼治が凄い者という扱いをされている事にまるで自身が褒められているかのように喜んでいた。


「そんであんたらは一体何者なんだい?君は異世界人(・・・・)で君は精霊の中でも上位の扱いをされる聖霊(・・)で使い魔なんだろう?」


そんな二人の様子を見ていたギルマスは突然とんでもない言葉を放った。

礼治とフールはギルマスの言葉に驚き、フリーズしてしまった。


(なんでバレた⁉︎今までに一度もその話に触れてないぞ‼︎それなのになんで‼︎⁉︎)


礼治はどうして自分とフールの正体がバレたのかが不思議でならなかった。それはフールも同じく不思議でならなかったらしく、礼治と同様に驚愕の表情を浮かべていた。

そもそも礼治はスキルの【偽装】を使っており、自分より運が低い相手からは本来のステータスがバレないようにしていたのに対してギルマスであるエネドラはコレを見事に見抜いた。

この場合はエネドラが礼治よりも運が高いと判断でき、この問題は解決する。しかし、フールの正体がバレたことに関しては解決しない。

フールのスキルである【完全偽装】は【偽装】の上位互換であり、幾ら相手の運が高かったとしてもバレることはない。

それを見事に見抜いたエネドラである。


「ふふふ。どうやら図星のようだな」


二人はどうやらタダの探りを入れただけらしく、それにまんまと引っかかってしまった二人はエネドラを睨む。


「そう睨まないでくれよお二人さん。私もタダ考え無しに言ったんじゃなく、一応筋が通った理由があるからそれを聞いてくれないかな?」


二人は一旦睨むのを止めて理由を聞くことにした。


「では、俺達の正体がバレてしまった理由を教えてください」


「そうだね。まず初めに私がお二人の秘密を知ったんだから私の秘密も君らに知ってもらうよ。私はエルフよりも上位に位置する『ハイエルフ』であり、この事実を知る者は君達二人を抜いて私が知る限りはこの世界には五人しかいなんだよ」


「ハイエルフなんですか⁉︎」


エネドラの発言にフールが驚いた。


「どうしたんだフール?ハイエルフはそんなに珍しいのか?」


礼治もハイエルフの存在は知ってはいるが(小説で)実際はどれだけ貴重な存在か知らなかった。


「すみません礼治様!つい興奮してしまい。こちらの世界でエルフは大変長寿の種族である代わりに新しい命を授かることができるのはエルフ同士のカップルの場合でも百組の内たったの十組前後ぐらいで、更に産まれてくる子供がハイエルフである確率は千人に一人の確率なんです。つまり、簡単に申しますとレイジ様の世界で人で例えるならば『人間国宝』、動物で例えるなら『絶滅危惧種』に認定される程の存在なのです」


「なるほど。それだけハイエルフは貴重な存在なのか」


フールの分かりやすい解説でハイエルフがどれだけ貴重な存在なのかを理解した礼治。


「理解してくれたところで説明を再開させてもらうよ」


エネドラは礼治がハイエルフについて大まかに理解したところで説明を再開する。


「エルフはエルフ独自の力で精霊を見ることができ。また、会話ができることによって精霊から力を借りて【精霊魔法】を使うことができる。そしてハイエルフは精霊よりも上位に位置する存在の聖霊ともコンタクトがとれる」


エネドラそこでフールの方を向く。


「つまり私が何故、君の正体が分かったかというと。私がハイエルフであり聖霊である君の放つオーラで君の存在がわかったと言うわけだ」


「なるほど。フールの件はそれで理解出来ました。では次に俺がどうして異世界人とバレてしまったのでしょうか?」


エネドラの説明で理解し、次に礼治は自身の正体がバレた理由を聞く。


「それは簡単。私は長く生きているから君と会うずっと昔に異世界人に会っていて、その人は君みたいなバカすごい力を持っていたんだ」


「つまり俺はその人のせいでバレたということですか?」


「簡単に言えばそうなるね。まあ実際は過去の文献でも異世界人の存在を仄めかすことが書かれていたからね」


「そうなのか?」


エネドラの話を聞いた後、フールに質問をする。


「はい、その通りでございます礼治様。以前に神がイレギュラーを除きその世界で生きる者と関わることは禁止されているとご説明した事を覚えてなさいますか?」


「異世界に来てからフールが洞窟の中で話してくれた事か?」


異世界に来て『フール』として生まれ変わった神に初めて会った時のことを思い出す。


「はいその通りです。そのイレギュラーというのが礼治様のように、その世界の何らかの均衡を崩す恐れのある人物の人生を強制的に終わらせて新しい世界で第二の人生を送ってもらう。それをするのが元神である私や他の神の仕事であり、私も実際に礼治様以外のお方を異世界に転生させており、他の神がこの世界に何人かを転生させていたことは知っていました」


「なるほどな〜」


礼治とフールは二人だけで話していると。


「あのーお二人さん?私にも理解できるように話してくれないか?」


話についていけてなかったエネドラが声をかけてきた。

礼治とフールは相談した後にこの人なら大丈夫だろうと判断し、礼治が転生した理由やフールが元は神の存在であることを話した。


話を聞き終わったエネドラはその話を聞き、何かに驚くような表情で礼治を見ていた。


「君はもしかして「<バタン>ギルドマスター緊急事態です‼︎」⁈」


エネドラが何かをいいかけようとした時、部屋の扉が突然開き、男性のギルド職員が慌てて部屋に入ってきた。


「どうした‼︎一体何があった‼︎⁉︎」


エネドラ自身、出かけた言葉を飲み込み慌てて入ってきたギルド職員に尋ねる。


「初心の森の奥を散策していた冒険者グループが森の奥でゴブリンの群れを発見し、此方の街に向かって移動しているということです!そしてゴブリンの数は500体を超えているとのことです‼︎」

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