第18話 大アルカナ達の意思
翌朝6時の鐘の音で礼治は目を覚ました。
礼治は寝返りを打ち横を向くと先に目を覚ましていたフールと目があう。
フールは礼治と目があうと同時に目覚めの軽いキスをした。
「おはようございます。礼治様」
「おはようフール。先に目が覚めてたんだな」
「はい。おかげさまで礼治様の寝顔をたっぷりと観賞することができました」
「ハハハハハ、それは良かったね」
いつも通りのフールに礼治は自然と笑みがこぼれる。
二人はしばらくいちゃついてからベットから起き上がり、毎度お馴染みのフールの【生活魔法】の一つ【クリーン】を使って身体とシーツの色々な汚れを落としてから一階に降りた。
礼治とフールは食堂で朝食を食べた後ギルドへは行かずに部屋へと戻る。
現在の時刻は午前7時。
部屋に戻った礼治とフールはというと。
「じゃあフール。いってらっしゃい」
「はい礼治様。二時間後に必ず呼んでくださいね」
「わかってるよ、じゃあまた二時間後ね」
そう言うとフールは礼治の頰にキスをしてから満面の笑みで手を振り、そして光を放ち消えていった。
フールは大アルカナ達との約束を守るために一度、異空間へと戻っていったのである。
フールがいなくなり部屋には礼治だけが残ってしまい、礼治はフールにキスされた左の頰に手を当て少し笑ってから時間潰しに何をするかを考えた。
〜side:フール〜
フールは礼治と別れて大アルカナ達の住む異空間に戻ってきた。
フールが異空間に戻ってくると突然。
「「フール姉さんおかえり。早く俺たち(私たち)にレイジ兄さんの近況報告を聞かせて」」
フールの目の前に黒髮で灰色の瞳の中学生くらいの少年と白髮で少年と同じく灰色の瞳の中学生くらいの少女が息を合わせて寄ってきた。
「ただいま帰りました。クロ、シロ」
クロと呼ばれた少年は肌が焼けており短髪で黒シャツに黒ズボン、そして黒の底が少し高めのローファーを履いており。シロと呼ばれた少女は肌が絹のような白さで肩まで伸ばした髮に白のベアトップに白のショートブーツを履いていた。
それ以外の二人の特徴は瓜二つであり、身長155センチでまだ子供のあどけない表情を残した顔立ちで、靴底の爪先と踵部分は鉄で覆われているので二人が歩くたびにカツンカツンと音が鳴り響く。
「「じゃあ早くみんなのところに行くよフール姉さん。ほら早くして」」
クロはフールの右手を掴み、シロはフールの左手を掴み、引っ張りながら他の大アルカナ達が集まっている広場の一角に床をカツンカツンと鳴らしながら連れていく。
三人が広場の一角に着くとそこには走りながら遊びまわる者や紅茶やコーヒーを飲む者、それから読書をする者や雑談をする者など、大アルカナ達は自分のやりたい事をして朝の優雅な時間を過ごしていた。
「「みんな注目ーーー!フール姉さんが戻って来たぞ(よ)ーーー‼︎」」
クロとシロは息のあった声かけをし、今まで思い思いに自分がしたい事で時間を潰していた大アルカナ達が一斉に三人の方を向いた。
「っよ、フールの姐御。ちゃんと約束通りに戻ってきたな」
サタンが戻ってきたフールに声をかける。
「昨日振りですねサタン。あの……そのですね…」
「どうしたんだよフールの姐御?」
サタンはフールがもじもじしている事に疑問を持つ。
「あのー。テミスのことはどうなりましたか?」
「ああ、それなら大丈夫だぜ。テミスの姐御なら「私がどうかしましたかお二人とも?」<<ビクン>>‼︎」
その質問でフールが何を言いたいかを理解したサタンは答えようとしたが、突然背後から声をかけられ驚く二人はそのまま振り返るとそこにはテミスがいたのだ。
「た、ただいま戻りましたテミス」
フールは昨日の件でテミスからの説教が始まると覚悟していた。
「お帰りなさいませフール様。早速ですがレイジ様の近況報告をお願いします」
しかし、テミスは説教をせずに近況報告をするように急かしたのだ。
「へぇ?」
これには説教をくらう覚悟を決めていたフールにとっては予想外であり唖然としてしまった。
「どうかなさいましたかフール様?そんな変な声を出して?」
テミスはフールが発した変な声に疑問を投げかける。
「いえ、別に大したことじゃないんですが。私を怒らないんですか?」
フールはいくら礼治から怒らないであげてという伝言があったとしてもテミスからは少しは怒られると覚悟していた。しかし、実際には何も怒ってこなかったテミスにフールは動揺のあまり質問してしまう。
「レイジ様からの頼みを無視することは私達大アルカナにとってあるまじき行いです。なので今回の件につきましては不問にします。それよりもフール様は早くレイジ様の近況報告をお願いいたします」
「はい、分かりました。それでは今から礼治様の昨日から今朝にかけての近況報告をさせていただきます!」
フールはテミスに怒らなかったことで礼治に再び心の底から感謝をしてから近況報告を始めた。
近況報告の内容は、礼治がフールと一緒に冒険者ギルドで冒険者登録をしたこと。Dランクの冒険者に因縁をつけられ絡まれたが礼治がこれを見事に片付けたこと。初めての依頼を無事に達成したこと。ランクがGからFに昇格したこと。そして礼治がこれからは大アルカナ達を家族として扱ってくれることを余す事なく報告する。
フールが近況報告を終えてからの他の大アルカナ達の反応は。
「流石は儂等の主のレイジ殿じゃ。自分よりランクの高い相手をいとも簡単に対峙するとはあっぱれじゃのう。後、レイジ殿と家族になるということは儂は叔父になるということかのう?」
「ボクもレイジ兄と家族だから本当の意味でレイジ兄の妹になれたんだよねえ‼︎ボクね今スゴく嬉しいな〜。へへへ<ニコニコ>」
「そうですね。私達大アルカナを心から家族として認めてくださるレイジ様の御考えは嬉しいものですね。でしたら私はレイジ様の母親代わりとしてレイジ様を支えていきましょう」
「家族ってことは俺はレイジの兄貴の兄貴になるのか?なんかややこしくないか?」
「私はレイジの姉としてこれから全力で弟を支えていくよ‼︎」
「「俺(私)もレイジ兄さんの弟(妹)としてこれからレイジ兄さんの手脚として頑張っていくぜ(よ)‼︎」」
大アルカナ達は皆、礼治の実力を誇らしげに思い。また、礼治から家族という存在として見てもらえることに嬉しさを隠しきれずにいた。
「ねえねえフール姉」
「どうしましたかトラン?」
トランがフールの服の裾部分を引っ張り声をかけてくる。
「ボクはもっとレイジ兄のこと知りたいからフール姉が知っているレイジ兄のこともっとも〜っと教えて!」
「「それ俺(私)ももっと知りたい!フール姉さん話して話して‼︎」」
ホースとポニーがトランの話を聞き、同時にフールのもとに駆け寄る。
「はい。喜んで!私が知る限りの礼治様の全てをお話ししましょう‼︎」
私は礼治様から呼ばれるまで大アルカナ達と主の礼治様のことについて熱く語り合いました。
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クロ、シロ:大アルカナNO.7『チャリオット』
正位置の意味
『勝利、成功、征服、援軍、独立、開拓精神』
逆位置の意味
『暴走、不注意、好戦的、失敗、挫折』