其之二|第七章|名を持つ者
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【名前】
ポテトイーター
【身長】
十五メートル(成獣)
【体重】
十二トン(成獣)
【概要】
外見は海洋生物のアザラシに似た容姿で、オスは額に角を持つ。
通常時は人畜無害でぬいぐるみなどのモデルになるなど愛されるモンスター。
主な生息地としては木々の少ない山などに棲息している。
主食としては土を喰み、土の中に生息する虫や魔物の他に植物の根を栄養源とし、その糞は上質な肥料となるため山の再生を促す益獣としての一面も持つ。
基本的にはオス一匹・メス一匹・子供一匹で構成された家族が二つから五つ程度が集まり群れとなって行動をする。
冬に始めに繁殖期を迎え、晩夏の頃には出産を終えて子育て期に入る。
この子育て期と、人間が育てる作物の収穫期が重なる事から、秋のポテトイーターは害獣として駆除対象となる。
この時期のポテトイーターは非常に凶暴で、出産で失った体力の回復に必要なのだと思われる一定量の芋類を主とした農作物を奪うまで収まることはない。
ここで奪うと言う表現を用いるのは、襲撃の群れがオスメスの混合で有る事、げっ歯類の様に頬袋を有している事、討伐されたポテトイーターを解剖した際に頬袋に農作物が溜め込まれている事から、田畑を食い荒らしているのではなく、農作物を奪い確保しメスの体力回復と子育ての為のエサとして蓄えているのではないかと言われているが、農作物を強奪して以降のポテトイーターは点々と拠点を移し、春頃まで確認される事は少なく、子育てなどは謎で憶測としてそう考えられている。
作物の収穫期にポテトイーターが山を降りて人間の田畑を荒らす理由としては諸説あるが、普段より植物の根などを食べる事の多いポテトイーターにとって、栄養を豊富に含んだ芋類は出産で失った体力を回復するのに最適な食べ物で、それが豊富に有る農地で摂取するのが効率が良いからだと言う説が通説となっている。
ポテトイーターとの農作物の攻防の歴史は農耕の歴史と言っても過言ではなく、農耕文化が始まった頃より記録されている。
一時期はポテトイーターの為の畑を郊外に作るなどされていた時期も有るが、人間用の田畑への被害が多少減る程度で、武具や魔術・魔法などが発展した現代では討伐にて対処するのが主流。
撃退されても逃げ帰らず暴れ続けるポテトイーターを肉や脂など全てを活用すると言う原則の元で、殺処分する地域が多い。
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「つまり、このポテちゃんを倒して作物の収穫をお祝いするお祭りなんですかー?」
「そういう事。普段は温厚だが、この時期のヤツは凶暴で放置していると怪我人が出るだけでなく、芋が全滅する可能性も高いからね。益獣でもあるから狩り尽くしはしないが、諦めて逃げ帰るくらいには痛めつけないと死活問題ってワケだ。」
後片付けから戻った妙子ちゃんを交えて「ポテトイーター」についての説明を行う。
「パターンを読み間違えなければ、そんなに強くないけどさ。結構、厄介な相手なのは間違いないさね。その可愛い外見とは裏腹に体力だけはあるから。」
師匠がさり気なく補足説明を入れてくれる。
「でも、ポテちゃんってアレですよねー?ぬいぐるみとかで売ってるツノの有るゴマフアザラシっぽい?」
「あぁ。そうだ。おめめがクリっとしていて実に愛らしいアレだ。」
ポテトイーターは、毎年やってくると言う事に加えて愛らしい外見から子供には人気のモンスターとも言える。
ぬいぐるみやキーホルダー、冒険者カード入れなど色々なグッズが売られているので身近なモンスターとして愛されている。
「えー!じゃあ、そんな子を倒さなくてもぉー!」
「バカモン!お前は子供か!何もせずに奴らに芋を全部食われたら、この先の一年間フライドポテトもスイートポテトも食えんのだぞ?カレーもじゃがいも抜きだ!生産者も奴らに食わせる為に芋を育ててるワケじゃないさね!」
師匠が言いたい事を言ってくれたので言う事が無いが、実際にこう言う抗議が行われる事が有る。
それが、子供だけでなくいい年した大人からも出てくるから困ったものだ。
全てを駆逐すると言うなら俺も止めるが、必要な数を間引くと言うのはある程度必要な事だ。
そう言う事を言い出す連中は
『それを人間に置き換えても言えるのか!!』
などと、大人げない事を言い出すので、この時期は毎年疲れる事になる。
神でも何でも無い俺達が数を見て調整しながら狩ると言うのは確かに大それた事なのかも知れない。
だが、油断をすれば人間側が過酷な環境に陥る。
このポテトイーター狩りもそんな厳しいこの世界の環境の中では必要な事なのだ。
昔からそうやって付き合ってバランスをとってきたのだから、可哀想と言う感情論だけでバランスを崩すのは愚策と言えるだろう。
もちろん、乱獲をして良いと言う事にはならないが、文化や歴史が有って現在に至っていると言う事を理解せずに自分の感情や思想だけを押し付けてくるのは問題だと言える。
ポテトイーターもその脂を目的として乱獲された過去が有るそうだ。
そう言った過去を反省し、この街では自衛の為に狩った獲物は余す所なく活用するように徹底している。
食べ物や素材となる命へ感謝や喜びを忘れて、粗末に扱う様な事をしていけないのはどの世界でも同じだろう。
脂のみを目的として他の部分を捨てている街や地域も未だに有るそうだが、全てを一括りにして論じて良い話ではない。
「妙子ちゃんの言う事も分からなくはないが、これがこの街とポテトイーターとの付き合い方だからね。この街の歴史は浅いが、何度も撃退されても毎年の様にポテトイーターがやってくると言う事は、それが彼らにとっても必要な事と言う事だ。普通はこれだけ追い払われたらどんな動物でも河岸を変える。それをしないと言う事は食い物の確保と言う以外に理由があるはずだ。これは彼らにとっても何らかの儀式なんだと俺は思っているんだが?」
「そうなんですかねー?でも、やっぱり可哀想な気がしますー!」
納得は出来ないと言う感じだが、アレを見ればそうも言っていられないだろう。
すっごい数のポテトイーターがやってくるのを見れば。
「まあ、アレを見ればそうも言ってらんないさね!タエコも参加できるようにみっちり鍛えてやるからな!」
「えぇー!?私はいいですよー!!隅っこで応援だけしてますからー!!」
妙にやる気まんまんの師匠に不安を覚えるが調度良い機会だ。
師匠に鍛えられれば、妙子ちゃんの魔法も上達するだろう。
まあ、最初は座学が中心なので妙子ちゃんの性格を考えると地獄かも知れないが…。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「と、言う事で、この数は例年より多く何らかの対策が必要かと。参加者の応募状況を考えると人数的には足りるとは思いますが、職ごとの編成にした方が安定するかも知れませんね。以上です。何かご質問などは有りますか?」
整った顔立ちと鋭い視線。この世界ではあまり見かけないスーツを着こなし、隙のない雰囲気を醸し出す彼女、エレナ=ブラフマンは報告を終えるとこちらに視線を向けて俺の言葉を待った。
「なるほど。職ごとの構成にした方が距離が取りやすいか。そうなると前衛に回復職を多目に回したいが、教会からどれくらい人数を出してもらえるかだな。後衛にもパーティに一人は回復職が居て欲しいが、最悪の場合でもグループに二人は居てもらわないとポテトイーター相手には辛いだろう?」
「そうですね。私もその想定で考えてはいるのですが…。少しお待ちを。」
俺の提案に対して回答する為にエレナは資料を見直し始めた。
大体、四人から六人でパーティ。
パーティが五つ集まってグループ。
グループが十グループ集まってフォースとなる。
今回の討伐では五フォースくらいでの予定だが、問題となってくるのが職バランスの問題だ。
特に回復職の割合が一定数を越えているなら問題ないのだが、得てして足りない事が多いのは回復職の特性上、仕方が無いと言える。
例え範囲回復を駆使しても限界はグループまでで、それを越えての回復は至難の業である。
今回の様に職ごとに編成したとしても、ターゲットが魔術職に移ってしまうと盾職でも完全に足を止めるのは難しい。
そうなった時の事を考えると、やはりグループに二人くらいは回復職を編成したいものである。
『ハルトさん。ハルトさん。私って居る必要ありますか?』
師匠から魔法の講義を受けるようになって一週間と数日。
講義もお店も休みの日だと言うのに朝早くに起こされたと思ったら市議会館の一番豪華な市長室に通されて、よく分からない話を聞かされた上に蚊帳の外の妙子ちゃんが不満の声を上げる。
「うむ。今回はあいつとの顔合わせをさせるつもりだったから、今の所は必要無いと言えばないけど、仕事を終わらせた後の方が効率良いと思ったんだが退屈かい?」
『た・い・く・つ・で・す!』
俺としては退屈な業務をさっさと済ませてから顔合わせさせようと気を使ったつもりだったのだが、どうやら妙子ちゃんには少々不満だったようだ。
「ハルト様。私も思っていたのですが、やはり顔合わせなら部屋に入って来られた際に紹介する方がよろしいかと…。」
「ですよねー!普通の人なら部屋に入ってすぐに、私の紹介もせず、何もなかったかの様にお仕事の話とか始めませんよねー!これだから引きこもりは!」
どうやら、人の世でも悪魔の世でも俺の気遣いは非常識だったみたいだ…。
両者から不満の声が上がる。
不満の声だけならまだ良いのだが、二人からの冷ややかな視線が突き刺さる。
「はいはい。引きこもりで悪うございました。」
妙子ちゃんもエレナも開き直った俺に対し困った顔をしているので取り敢えず仕事は中断しお互いの紹介をしておいた方が良さそうだ。
「妙子ちゃん。こちらはこの街「ダンジョンガーデン」の市長を任せているエレナ=ブラフマン。こと、計略の悪魔として知られている一級魔界策略師のマステマムさん。その人だ。いや。悪魔か?」
「えーーーー!?悪魔が市長さんなんですかぁ??????」
俺の紹介にオーバーリアクションでナイスリアクションを返してくれる妙子ちゃん。
まあ、悪魔が人間の街を仕切っているんだ。妙子ちゃんが驚くのも仕方ない。
だが、人に任せるよりも契約により縛られてくれる悪魔を召喚して任せてしまった方が確実に物事が俺の思う通りに進む事を考えると、これ以上の策は無いと言っても過言じゃない。
「そう。召喚術式で召喚した彼女に、この街の運営を任せているってワケだ。こちらが契約した対価を支払いさえすれば、人間よりも信頼出来るからね。こっちの悪魔は死後の魂を要求しなくてもマナに溢れたこの世界では問題ないし、万が一の場合にも召喚陣のアレでペナルティが課せられるから裏切る事も出来ないからね。」
と、説明をすると妙子ちゃんは辛い事を思い出したかのような表情をしてエレナの肩をポンポンと叩き、エレナを哀れんだ。
「いやいやいや!タエコさん!?大丈夫ですよ!?ハルト様はちゃんと遅延なく対価を支払ってくれる良いお客様ですから!主人としても部下を大事にしてくれますし、街の運営も私の得意分野ですので!」
エレナが慌てるなんて、これは面白い。
では、なくて珍しい。
これはこのままにしておいた方が…。
「大丈夫です!ハルトさんの手前言えない事も多いでしょう!大丈夫ですよー!妙子はエレナさんの味方です!私がハルトさんに文句は言わせませんから、この機会にハルトさんへの不満とか、どんなペナルティが課せられてるのかとか、どどーん!と言っちゃいましょう!」
と、言いつつ妙子ちゃんがあからさまにエレナの弱点を聞き出そうとしているのが手に取る様に分かるので思わず笑いそうになる。
エレナもエレナで俺と妙子ちゃんの顔を交互に見てアタフタしている。
開始十秒でエレナのこんなレアな表情を引き出すとは。
妙子ちゃんの押しの強さには感心させられてしまう。
「いえいえ!文句など!そもそも、我々悪魔の場合は契約の際にある程度の制約を受けるのは常ですので!それよりも、私はタエコさんの紹介を受けていないのですが!ハルト様!?」
ふむ。エレナを相手にワンターンキルとは…。
さすが妙子ちゃんと言うべきか、エレナがヘタレなのか。
この短いやり取りで妙子ちゃんは相手にしてはいけない相手だと察したのか、エレナが助け舟を求めてきた。
このままにしていても面白いが、普段から色々と押し付けている手前、ここは恩を売っておいた方が得策な気がする。
「まあまあ。妙子ちゃん。それくらいにしておいてやってくれ。エレナはこの後も仕事があるんだ。妙子ちゃんに詰められて、このあと仕事にならないのでは契約不履行でペナルティが発動してしまうかも知れないからね。それに契約と言うのは当人同士の機密事項だ。それを聞き出そうとするのは良くないと思うぞ?」
妙子ちゃんに言い聞かせると「ふぁ~い」と不満そうな返事をすると椅子に座り直し、用意してくれていた紅茶を再び飲み始めた。
「と、言う事でエレナ。この子がタエコ=イタミさん。事情は前に話したと思うが、これからはメッセンジャーで飛ばせない物とか、他人に任せられない物などを届けてもらう事も有るだろうから仲良くしてやってくれ。」
「それはもちろん。しかし、ハルト様の話よりも利発な方ですね。ハルト様の元居た世界の方々は皆さん迫力の有る方々ばかりなのですか?思わず圧倒されてしまいました…。」
元々は悪魔なので性別など有って無い様な物だが、女性市長ながらも男を圧倒するエレナが、妙子ちゃん相手にタジタジとは。基本的にどんな相手でも物怖じをしない妙子ちゃんらしいとも言える。
エレナには俺の事情を召喚時に話しており、妙子ちゃんの事もこの前に祭りの打ち合わせでここに寄った際に事情を話していた事もあって、俺達が居た元の世界の人間はみんなこんな感じだと勘違いしてしまった様だ。
こちらの世界では、俺や妙子ちゃんの様に一癖も二癖も有る人間は珍しく、普通の一般人は基本的に純朴なので余計に際立ったのだろう。
まあ、その分リックや師匠の様な極端にぶっ飛んだ人間も居るので、ある意味バランスは取れているはずなのだが。
悪魔から見ても俺と妙子ちゃんは別格なのかも知れない。
「いや。この世界でも色々な人が居るように全てが全てと言うワケではないよ。異世界に飛ばされるなんて経験をしてしまっては俺のように塞ぎ込むか、妙子ちゃんのように弾けるかのどちらかだろうしね。多分、妙子ちゃんもこっちに飛ばされて才能が開花したんだろう。」
エレナには、それらしい理由付けをして納得をしてもらう事にする。
この話が長引いても誰も得する気がしないしな。
「はぁ。経験者のご意見は重さが違いますね。タエコさんが私を悪魔と知って物怖じをせずに会話を出来ると言うのも特異な体験により成せる業と言う事ですね。」
「んぁ。多分そうだろうな。」
まあ、何か違う気もするがそう言う事にしておこう。
ここで仕事以外の話が長引いても仕方ないからな。
出来れば、とっとと仕事を片付けて早くお家に帰りたい。
本来なら、こう言う面倒事は誰かに任せて、もっと引きこもり生活を満喫できると思っていたのだが、何故かこのような雑用に手を煩わされる事が最近増えている様な気がする…。
一応の納得を得たのか気を取り直したエレナが妙子ちゃんの方に歩みを進め手を差し出した。
「タエコさん。これからお世話になると思いますが宜しくお願いいたします。ハルト様よりも迫力が有りましたので出来ればお手柔らかに願います。」
俺に対しても妙子ちゃん対しても失礼な事を言われた気がしたが、今は掘り下げる場面でも無いだろうからスルーしておく。
どこに照れる所があったのか分からないが、エレナが差し出した手を握り返し妙子ちゃんが「いやぁ~。それほどでも~。」と照れながら握手を返す、この光景も微笑ましい光景だと思ってそっとしておいた方が、後の話もスムースに進みそうな気がする。
取り敢えず、顔合わせは何の問題も無く終わったと言えるのではないだろうか。
見ていた限りじゃ妙子ちゃんが先制パンチを食らわした感じだが、エレナも妙子ちゃんの接し方を何となく理解したのか、妙子ちゃんを少し持ち上げて接してるみたいだし、これからの関係も問題なく構築していってくれるだろう。
妙子ちゃんの突飛な行動にエレナが困る事は有るかも知れないが、妙子ちゃんは分かってやってるフシが有るので調子に乗りすぎなければ問題は無いだろう。
妙子ちゃんが度の過ぎた行動をしたとしても、悪魔であるエレナなら上手く対処してくれるだろうと期待したい。
「それではタエコさん。お待たせして申し訳有りませんが、もう少しハルト様をお借りしますね。」
上手に話を切り上げてエレナが戻ってくる。
早速、タエコちゃんの扱い方を実戦している様子を見ると安心感を感じる。
角が立たない様に引き上げてくるその顔には安堵の表情が浮かんでいた。
「それでですね。ハルト様。先程の話ですが街に居る聖職者だけでもギリギリ足りると思われますが、教会が他の地域からの協力も可能だと先日打診が有りましたので、状況を見て教会への協力要請は討伐の一週間前をリミットとして教会に必要人数を要請して頂いて構いませんか?」
エレナは戻ってくると瞬時に気持ちを切り替えて、先程の件についての報告をしてくれる。
気の緩みを引きずって無駄話をしないと言うのは実にありがたく優秀な人材と言えるだろう。
エレナを市長として配置したのは間違いなかったようだ。
「了解。祭に関する話はどのみち俺の所に集まってくるからな。問題はないよ。もう少しダンジョンの方が落ち着けばシュバリエさん辺りに会長職を押し付けるんだが…。」
俺の方がまだ気が緩んでいるのか、つい愚痴がこぼれ出る。
出来れば、自治組織の会長など誰かに投げてしまいたいのだが、もう少しダンジョン建設が落ち着くまでは、召喚した悪魔達を余計な物事に割く余裕がない。
現在、ダンジョンの難易度設定を任せている一級魔界工作師シュバリエに、色々と街の事も任せたい所なのだが、現状では無理が有るだろう。
彼は、昼間はダンジョンで冒険者の相手をし、夜は趣味でバーを営んでいる。
この街ではちょっとした隠れた名店だ。
人間の時の顔が男前って事もあってシュバリエさん目当ての若い女性も多い。
それだけでなく、この街のご老体の方々や商売を行っている連中からも人気の店で信頼も厚いときている。
それもあってか、顔も広く悪魔なのに俺よりも人望が有るときたもんだ。
それだけの人脈や人望が有るなら会長職などを投げてしまいたいのだが…。
ダンジョン拡張に伴うエネミーの配置設定や冒険者の進行に伴う難易度の見直しなども任せてしまっているので、現状では俺が自治組織の仕切りをした方が上手くダンジョンが回ると言う状態だ。
「さすがにそれは…。シュバリエさんはお店の為に仕事を頑張ってるタイプの方なので…。今以上の負担は。」
「そうだなー。任せたら任せたで上手く回してくれそうだが、ダンジョンの増設が落ち着くまでは、ダンジョンに集中してもらうよ。それでポテトイーター関連は以上で良いのか?それ以外でも何か有ればついでに指示を出しておくが?」
出来れば、面倒な事は一回で済ませておきたいので現在エレナが何か問題を抱えているなら聞いておくに越したことはない。
いつもの事だが、主題がある程度片付いたなら他の雑多な問題も報告してもらおう。
「そうですね。ポテトイーター関連は今の所は回復職の調整くらいですね。例年よりも参加者は多そうなので先程話した様な対策をすれば問題は無いかと。他には…。王国からの税の無心が有りましたが私市法を盾にデータを見せて違法である事を立証して追い返しましたし…。生産計画も今年は順調ですね。居住区の拡張計画も上下水道の進歩状況が少し遅れていますが許容範囲です。王都の有名飲食店の誘致には苦戦していますが、前にお話した通り長期戦のつもりで進行中です。市議のリビルド氏がおいたを行っている様ですが、これ以上調子にのるようでしたら名前だけのお飾りですので裏から手痛いお仕置きをして排斥する予定です。構いませんよね?」
「あー。リビルドさんは相変わらずお元気だね。でも、結構使える人だから使える限りは使い倒して。あの人って何故か人望は有るから。私市とは言え市民の要望を吸い上げる為に議会制にしているんだし。手加減してあげてね。」
この街は私市と言って私市法に基づいた税金を王国に支払う事で一人のオーナーが都市運営をする事が出来る仕組みを利用して成り立っている街である。
王国と言っても民主制が導入されており、王様が自由勝手に何でも出来るワケではない。
昔のノリで景気の良い街は金を要求される事も有るが、この街の様な私市では無茶な要求の場合、それを拒否する権利を有しており、ある種の独立国家的な側面もある。
まあ、そんな私市にも色々あってワンマンオーナーのワンマン都市と言う場合も有るが、この街では一応の議会が存在し、この街に貢献した人物などが議員として名を連ねている。
議員たちの役割としては市民の声を聞き、必要な設備の要求や切迫した問題をオーナーに伝える事。つまり、最終的に俺に街に住む人の声を届けるのが主な仕事だ。
俺も妙子ちゃんが来てから少しマシになったとは言え、あまり接点の無い人と話をしたり、長時間人混みの中に居ると気分が悪くなるのは変わっていない。
街の人間に俺がこの街のオーナーだと知られていないとは言え、どこかの副将軍やら暴れん坊の様に街を練り歩き問題を解決していくなんて事は出来ないし、議員と言う市民の声が集まる場所が有れば市民も声を出しやすい。
市議と言っても、基本的には普通に生活して商売をしている市民で、小さな村の議員の様な名誉職的な感じなので話もしやすい。
議員と言うより町内会長の様な感じだと思ってもらえば分かりやすいだろう。
リビルドさんの様に立場を利用して自分の商売に有利になる様に工作する人も居るが、基本的には少しガメツイが気の良いおっちゃんなので荒事にはしたくない。
人死とか薬物とか不当な労働を強いたりなどと言う事が無い限りは上手く使って付き合って行きたいと言うのが正直な所だ。
「仕方ないですね。本来、契約に反する行為には徹底した制裁が必要だと思うのですが。リビルド氏には通知無しの査察と追徴金程度で勘弁して差し上げます。」
「うーん。程々にね。ハハハ…。」
悪魔と言うのは自分の不利益に対して厳しいので、こう言う場合には もう笑うしかない。
うちの召喚陣ではあり得ないが、本来なら悪魔と言う存在は契約の抜け道が有るならそれを利用して主人をあざ笑うと言う事も多いのだが、取り締まる側に回ると融通がきかないらしい。
仕事を任せる方としては頼もしいのだが、あまり敵に回したくないものだ。
「さて。妙子ちゃん帰ろうか。」
報告も以上な様なので帰り支度をする。
余程、暇だったのか出されたお茶請けを食べ尽しウトウトしていた妙子ちゃんに声をかける。
「ふぁぃ。終わりましたー?」
さも、退屈だったと言わんばかりに椅子から立ち上がり、目を擦りながら妙子ちゃんも帰り支度を始めた。
「じゃあ、何か問題があったらいつでも連絡をしてくれ。あと、制裁は程々にね。」
エレナからすれば俺の措置が甘いと思っているのか苦笑をしつつ「滞りなく。」とだけ答えて市議会館の玄関まで見送ってくれた。
* * * * *
「それにしてもすっごい美人さんですね!エレナさんって!ハルトさんの趣味ですか?」
家への帰り道、妙子ちゃんから思いも寄らない角度の質問が飛んできた。
「俺の趣味というよりエレナの趣味だろうな。あの顔立ちは。悪魔ってのは畏怖で人を誘導したり、外見で人を魅了したりするのが商売だからね。都合の良いように使い分けるのは得意なんだよ。妙子ちゃんが良い印象を持ったと言う事はエレナも妙子ちゃんに対して友好的であろうとした証拠だと思うよ。相手によってはそれこそ鬼の形相に見える事もあるだろうし。」
実際にエレナも妙子ちゃんを丁寧に持て成す対象だと認識していただろうし解釈としては間違っていないだろう。
「ほほー。じゃあ、ハルトさんの趣味でこっちの世界じゃあまり見かけないタイトなスカートのスーツを着ていたワケじゃないんですね?」
うぅ…。少し痛い所にジャブが飛んでくる。
確かにタイトスカートや黒ストッキングや片目を髪で隠すアイ ハイディング コワフ的な髪型も俺好みとは言えるが…。
俺の趣味に合わせてあの恰好なのか?
「いゃあ。そんな事は無いとぉもうよ?」
よく考えると思い当たるフシが有り、思わず声が裏返ってしまう。
今まで深く考えたりはしなかったがそう言う事なのだろうか?
「ほほー。ハルトさんはああ言うのが好きなんですね。メモしましたー!」
してやったり!と言う表情で本当にメモする妙子ちゃんに為す術も無く俺の趣味が露呈してしまった。
俺の指示とかじゃないので後ろ暗い所は無いのだが…。
何というかとてもパーソナルな部分を見られた感じがしてとても居心地が悪い!
「俺が指示したとかじゃ無いからね!悪魔的な何かで察して自らやってるんだと思うからね!」
と、言い訳っぽい訂正を加えるが自分でも嘘っぽく聞こえる。
相手が悪魔だと知らなければ小一時間眺めていても飽きない格好ではあるし…。
「出来ればシルバーフレームの知的っぽい眼鏡とか装備してくれていれば言う事無いのだが…。」
って、ちっがーーーう!
思わず、声に出して言ってしまってる場合ではない!
「ふむふむ。ハルトさんはメガネフェチと…。カキカキ。」
案の定、すかさず俺の独り言をメモする妙子ちゃん。
単にこれからの事を考えて顔合わせをさせただけなのに、何故か俺のフェチ的でデリケートな部分が暴露されていくと言う超展開に顔から火が出そうだ!
「はっ!私のメガネはあげませんからね!!」
「いらんわ!!!アンダーリムの眼鏡も好きだけどいらんわ!!!!」
はっ!!!!!
余計な事を口走ったと思った時には時すでに遅く「師匠さん用にも伊達メガネ買ってくるので少し遅くなるって師匠さんに伝えてくださーーい!」と、俺が眼鏡フェチだと確信した妙子ちゃんは師匠と一緒に俺をからかうべく伊達眼鏡を買いに走って行ってしまった…。
「はぁ。それで妙子ちゃんが楽しいなら良いが困ったもんだ…。」
思わずひとりごちる。
妙子ちゃんがこの世界に慣れ順応しているとは言え、時折見せる寂しげな表情や感情の不安定さには心配になる事がある。
エレナに引き合わせ、新たな仕事を頼もうと思ったのもその事が大きい。
多分、師匠がポテトイーター狩りに妙子ちゃんを引っ張り出そうと魔法を教えているのも、妙子ちゃんのそう言う危うさを感じての事だろう。
元の世界の事を忘れろと言っても難しいのは俺が嫌と言うほど経験済みだ。
元の世界で部屋に引きこもって最終的に自殺を選んだ俺ですら、家族の事や友人の事を考えて悩んだ事もあった。
不幸とは言え死体でも残ってるなら一つの節目となるだろうが、俺がこっちに来た後どの様な状態なのか全く確認もしようのない状態なのだ。
魂だけがこちらに来て受肉しているのだとするなら家族も諦めるしかないだろうが…。
肉体ごとこちらに来ているなら失踪状態と言う事になる。
そうなれば、区切りなど無く家族はあっちの世界に居もしない俺や妙子ちゃんを探し続けるだろう。一縷の望みを信じて。
それが十代の妙子ちゃんともなれば、それこそ家族も必死で探すに違いない。
妙子ちゃんは頭の良い子であり優しい子だ。
そう言う事はもちろん考えるだろし理解もしているだろう。
そんな状況でこちらの世界ので幸せや楽しさを受け入れられるかと言うと難しいに決まっている。
普段は事情を知る人間に心配を掛けないように振る舞っているが、家族や友人の事を気にしているのだろうと感じる事は多い。
それは、この世界で暮らしていく以上どうにもならない事で彼女に一生つきまとう解決されない問題だとは思うが、仕事や冒険者としての討伐を経験するなど、彼女が将来それを割り切れるだけの材料だけは用意してあげたいと思う。
それが俺の出来る精一杯なのだから。
* * * * *
うん。確かにそう思っているのは紛れもない本心なのだが…。
「師匠さん!見て下さい!これだけ有ればメガネフェチのハルトさんもイチコロのメガネが見つかりますよ!あ!ハルトさんのツケで買ったからハルトさん支払いお願いしますねー!」
買い物バッグの中にいっぱい詰め込まれた山ほど眼鏡の数々を持って喜々として帰って来た妙子ちゃんを見ていると、時折見せるあの物憂げな表情は「はぁー。お腹すいたなー。」とかどうでも良い事を考えて居るんじゃないかと疑いたくなってくる…。
「帰ってくるのが遅いと思ったらハルトのめがねフェチの話かい?タエコは甲斐甲斐しいねー。でも、この童貞は私のめがね姿じゃ一線を越えられないヘタレさね。あれだけめがね着用時にはジーっと見てくるのにさぁ。」
な!
またしても俺の知らない俺の恥ずかしい部分を暴露される!
やけに一時期、師匠が眼鏡を着用している時期があったと思ったがなんじゃそりゃ!?
気が付かれていた…だとぉ…!?
「えぇー!?それはハルトさん酷いですよー!!女の子がハルトさんのフェチを理解してアプローチしてくれているって言うのにぃ!?」
「タエコはいい子じゃのぉー!齢百歳を越えてる私を女の子と言ってくれる辺り、どこぞの弟子とは違うのぉ!」
なな!
アレがアプローチだと言うのか!?
あれはどう見てもそんなもんじゃなかったぞ!?
眼鏡を着用時に要求される無理難題的なおつかいは地獄だったぞ!?
時にはドラゴンのウロコが欲しいだとか、時には金の燕の巣が欲しいだとか、時にはファイアサラマンダーの革が欲しいだとか!!
お前がどこの月のお姫様だとキレそうになったのを今も克明に思い出せるぞ!
それを言うに事欠いてアプローチだったと?
思い出しても腹が立つ!
そんな俺の思いを知ってか知らずか、師匠と妙子ちゃんは買ってきた眼鏡を試着しては大盛り上がりだ!
・・・・・・。
「ふぅ。まあ良いか。楽しそうだし。」
あれを師匠のアプローチだと言うのはいつか訂正したい気もするが、妙子ちゃんが楽しんでいるなら今は良しとしておこう。
こう言う女性同士の楽しみと言うか、友達と一緒になってはしゃぐと言う普通の高校生が自然と行うような楽しみは、男の俺では与えてあげられないからな。
師匠が来た事によって巻き起こされた事件によるダメージは大きいが、この家に妙子ちゃん以外の女性が居て一緒に生活をしていると言う事の大きさも感じている。
まあ、実年齢は百歳超えのBBAなので十七歳の妙子ちゃんの友達と言うには無理は有るが…。
「そう言えば、今日は魔法の勉強はもう良いのですか? と、言うか妙子ちゃんはしっかりやってますか?普通のポテトイーターだけなら問題ないでしょうけど、この時期に現れる群れには「七つ星の帝王」も含まれる可能性が高いですからね。」
楽しそうな今の状況に水を差すつもりは無いのだが、ポテトイーター討伐決行日まで二週間を切っている。
本気で妙子ちゃんを参戦させようと言うなら、残された時間はあまり無いはずだ。
俺としてもフォローはするが、参戦すると言う事は傷つく覚悟も無ければいけないし、あまりにも戦力にならないと言うのは他の冒険者からの印象も悪くなる。
普通のポテトイーター狩りだけなら、そこまで考える必要は無い。
だが、この時期にやってくるポテトイーターに関しては例外と言えるだろう。
その年のボスとなったポテトイーターの背中に現れる七つの星。
ボスの証を背負ったポテトイーター。
ネームド「七つ星の帝王」が含まれるからだ。
駆け出しの冒険者の頃には経験を積むために強い仲間に守られながらパワーレベリングをすると言う事も有るがネームド狩りとなると事情が変わってくる。
ネームド討伐達成時に冒険者組合からの支払われる報酬の金額も並の依頼と比べても大きい上の、肉や革には等分で金が支払われる事は元より、飲み込んでいるアイテムなど貴重な武具やアイテムが出てくる可能性も有る。
そうなると、基本的には参加者に配られているアイテム分配用の魔具でランダムに獲得者を抽選するなどの他に、どうしてもそれが欲しいと言う者が居れば相場の価格を基準に参加メンバーの数で割って買い取りと言う事も有る。
聞こえは良くないが、こんな美味しい仕事を戦力にもならない初心者にくれてやる理由は無いのだ。
冒険者も慈善事業でモンスター討伐をやっているワケではない。
統率可能な人数と言う理由以外にも、冒険者組合から支払われる報酬の上限と言う理由からも参加人数は限られて居るのだから余計なパイを初心者にやる余裕は無い。
この街はダンジョンに簡単にアクセス出来るから他の街よりも簡単に金儲けが出来るとは言え、消耗品を買うための必要経費もかかれば、アタックする階層に見合った装備の更新するにも金が掛かるのだから、足手まといになるだけのヒヨッコが必要ないと言うのは当然と言えば当然の話である。
故に妙子ちゃんがある程度使い物にならないなら、妙子ちゃんの為に早めに辞退した方が懸命なのだ。
「そうさねぇ。問題ないんじゃないか?」
師匠が軽い口調でそう答えた。
「も…問題ない?」
「ああ。問題ない。」
いやいや。妙子ちゃんには魔法の素養があって、飲み込みは良くて、師匠の講義を受けているとは言え…。
問題はない?
いやいや。何か、こう、ちょっとくらい問題は有るだろう?普通?
師匠の講義を受けだしてから一週間とちょっとしか経っていないのだぞ?
「問題ないと言うのはどの程度、問題がないのでしょうか。」
あまりの事にいつも以上の丁寧語で聞いてしまう。
「聞いてないのかい?そうさね。時間が無いから攻撃系に特化しているが、初級魔術系は無詠唱で魔法の行使が可能だ。中級魔術系は一部が無詠唱で魔法の行使が可能程度だが、魔術としての発動はだいたい可能さね。まあ、この時点である程度の貢献は出来るわな。フォースで狩るならある程度は詠唱時間にも余裕が有るだろうし、上級魔術を一つでも覚えさせたい所だが、これは間に合うか微妙な所じゃからどうしようか検討中って所じゃの。発動に時間が掛かってしまうだろうから普通の敵には役立たないだろうが、今回のケースなら使えるなら使えた方が良いだろう?」
マ ジ か !?
思わず、振り返り妙子ちゃんをマジマジと見つめる。
「てへー☆」
照れる妙子ちゃん。
いやいやいや!「てへー」じゃないって!「てへー」じゃ!
早いってレベルの話じゃないぞ!?
本来なら最低でも四年でルーキー、十年で使い物になるかって話だったじゃないですか?
師匠さま!?あんたの言葉だぞ?
って言うか一般の魔術師さんとか観察してても本当にそんな感じだよ!?
信 じ ら れ ん !!
「妙子ちゃん。非常時でも無いのにステータスとか見るのは心苦しいんだが見て良い?」
あまりもの衝撃に確認せずにはいられない。
妙子ちゃんは満面の笑顔で微笑んで「良いですよー!」と快諾してくれる。
「マスター権限。ステータスオープン。」
早速、妙子ちゃんのステータスを確認する。
・・・・・・。
へ?
思わずステータス画面を二度見する。
「ステータスクローズ。からのマスター権限。ステータスオープン。」
うん。数値や情報に間違いは無いようだ。
なんじゃこりゃーーーーーー!!!!!!
見間違いかと思った!
俺や師匠には遠く及ばないものの、妙子ちゃんが魔術や魔法を勉強しだしてから一ヶ月も経っていないと言うのに魔術を学び始めて二年目並の魔術を習得していた!
いや。魔法として行使出来る物を考えるとそれ以上だと言っても良いだろう…。
普通なら魔術から魔法へと変換して行く過程でも苦労すると言うのに一部であっても魔法として扱えるのだ。
才能がどうとか言うレベルじゃない。桁外れだ。
桁外れと言うとその魔力量。
知力はそれほど伸びていないが、魔力量数値がヤバイ…。
魔力量が三千五百四十六…だとぉ…。
俺と比べれば一割程度だが、魔術を学び始めて二年目の平均的な魔術師と比べると三倍以上だ。
魔術を学び始めた魔術師が二年目を終える頃に低くて九百程度、高くても千五百くらいの魔力量が普通だ。
それが「三千五百四十六」と言う魔力量を保持していると言うのか?
ダメだ!これじゃあチート物のラノベみたいじゃないか!
そんな展開なんて誰も期待してなかったぞ!?
ダメだ。あまりにもの衝撃に冷静な判断が出来そうにない。
信じられない状況に妙子ちゃんの顔を再度マジマジと見つめてしまう。
「さすがにそんなジッと見られると恥ずかしいですよぉー。」
うん。この反応はいつもの妙子ちゃんだ。
いつもよりしおらしい分、いつもより可愛く見える。
頬を染めて顔をうつむかせ、アンダーリムの眼鏡のレンズ越し見える潤む瞳が実に情緒的だ。
じゃ!なーーーーーーーーい!
これは、師匠が言っていた『十年やそこらで世界で一番の魔法使いになれるかも知れない』と言う話に真実味を持たせるくらいの成長だ。
あの時は話半分で聞いていたが、元の世界に戻るとしても、こちらの世界で生きる覚悟を決めるとしても、一度しっかりと話す必要が有るだろう。
大きな力を持つと言う事は、それなりの覚悟と責任が発生する。
この世界では特にそうだ。
まだ、妙子ちゃんはその事を知らないのだから。
「師匠はこれを予測して教えていたんですか?コレがどう言う事か分からない師匠ではないですよね?」
空気が変わった事を察したのだろう。
妙子ちゃんが不安そうにオロオロする。
「いやだなぁー!ハルトさん!そんな怖い顔しなくても~。大丈夫ですよー!まだ、ハルトさんを追い越したりしませんから!」
「悪い。黙ってて。妙子ちゃん。」
場を和ませようと妙子ちゃんがおどけるが、構っている余裕が今の俺にはない。
「覚悟も無く大きな力を得る事の危うさは師匠が教えてくれた事ですよね。場合によっては成熟する前に消してしまえと命を狙われる事も有るんですよ?何を考えているんですか!?せめて、俺に話しておくくらいの事は…!!」
詰め寄る俺にため息で返事をする師匠にイラっとしたが、師匠の返事を待つ。
大きな魔法を行使したり、莫大な魔力を保持すると言うのは身体的な負荷だけでなく、外敵を作る可能性も有ると言う事だ。
制御も出来ない魔法や魔術を習得する危険さや、急激な魔力量の保持による暴走なども問題だが、それ以上に魔法使いと言う世界にも自己顕示欲からの妨害なども有る。
単なる警告などだけじゃない。
出る杭が打たれるだけでなく消される可能性だってある。
対抗する力や対処方法を身につける前に叩き潰される事もある。
穏健な魔法使いの方が多いが、パトロンを逃さず研究費を頂きたいと言う魔法使いや世界で何番と言う自分の地位の為に相手を殺そうと言う魔法使いも少なからず居る。
それが、この世界での普通なのだ。
その覚悟なしに、それらに対処する力も無しに、これだけの急激な成長を知らせなかった師匠が何を考えているのか分からなかった。
「まあ、君がそう言うのももっともだ。ここまでの成長を予想できなかったと言う事も有るが、あまりもの吸収力の良さに興が乗った部分も有る。君に報告くらいしておくべきだったな。すまない。タエコにも大事な事をちゃんと話すべきだったな。すまない。」
師匠はすんなりと非を認め、俺と妙子ちゃんに頭を下げた。
「対処法は考えてあってな。これを作った後にお前達二人に話をしようと思っていたんだが、タイミングが悪かったわね。」
と、言うと巨乳の谷間からブレスレットを取り出し机の上に置く。
「これは?」
なぜ、この人はいつも胸の谷間から物を出そうとするのか小一時間くらい問い詰めたい気もするが、今はそれについては聞かないでおこう。
「これは妙子の能力を敵対者に察知されない為のマジックジャマーでありリミッターさね。材料は工房から拝借したから数を確認しておくように。必要なら材料費を請求してくれれば良いさ。」
使用した材料の種類と数が書かれたメモを手渡される。
大した材料でも量でも無いので問題はないのだが、これで本当に誤魔化せるのかの方が気になる。
「これくらいは構いませんけど、本当にこれで対処になるのですか?」
俺の問題ならお守り程度に持っておくのも悪くはないが、これを持つのは妙子ちゃんだ。
大丈夫だと言われても、にわかには鵜呑みで信じられない。
「ああ。自分で試してみたが概ね良好さね。タエコにも効果が有るかは装着してからとなるが、問題はなかろうて。」
師匠が自分を実験台として魔法道具を作ると言うのは極めて珍しい事だ。
普段ならどんな小さな魔法道具でも使い魔を使って実験する様な人なのだから。
それだけ妙子ちゃんの事を考えて、これを作ってくれたのだろう。
理由も聞く前から怒ってしまった自分が情けなくなる。
「タエコ。こっちへ。」
不安そうに様子を見守っていた妙子ちゃんを呼びブレスレットを師匠自ら装着させる。
「これには五つの機能が有る。そのどれもがタエコを守る為の機能じゃから肌身離さず装着しておくようにな。」
そう言う師匠の声はとても優しくて妙子ちゃんの事を真剣に心配する母のようだった。
あぁ。何だろう。トシだろうか。
俺に対しては傍若無人だった師匠が妙子ちゃんに向ける優しい瞳と声が聖母の様に見えて目頭が熱くなる。
「ありがとうございます!師匠さん!絶対に大事にします!」
妙子ちゃんも妙子ちゃんで師匠の好意に対して素直にお礼を言って目を潤ませている。
あぁ。ダメだ。涙が出ちゃいそうだ。
「こら!お前たち!しんみりしていないで説明をしっかり聞くさね!いざと言う時に使い方が分からないじゃ宝の持ち腐れさね!」
「はい!師匠!説明お願いします!」
「はい!師匠さん!説明お願いします!」
師匠の言うとおりだ。
使い方が分からなければ持っていても意味がない!
ここはちゃんと説明を聞こう。
妙子ちゃんを見ると既に聞く体勢だった。
それを確認したのか師匠が説明を始める。
「よし。説明しよう!この『マジカル☆ブレス』の五つの機能を!!」
うん。ネーミングには定評の有る師匠なので突っ込まない事にする。
一抹の不安を感じなくも無いが、さっきの様子を見ると名前が若干痛いだけだろう。
うん。大丈夫なはずだ。
なんか、妙子ちゃんもワクワクしてるっぽいし。
「じゃじゃん!第一の機能!マジックジャマー! マジックジャマーはその名の通り魔力感知を邪魔する機能だ! 他にも魔法使いが持つ膨大な魔力量が魔法使用時以外でもどうしても漏れ出して感知されてしまうと言う現象にも対処したお漏らし防止機能も付いておるぞ! いやぁ~。自分には必要の無い機能じゃから開発に時間がかかってなぁ~。出来ない事を出来ると言うのは嫌いだから、これが確実になるまではと思ってハルトにタエコの事を話すのが遅れたんじゃが、そのせいでハルトには余計な心配をかけた。すまんかった!」
師匠にも師匠の考えがあったのはよく分かった。
確かに対策が出来るかもと言われて期待していたのに出来ませんでしたでは話にならない。
ある程度の目処がつくまでは余計な心配をかけまいと言う師匠の優しさだったのだろう。
それは良く分かった。
分かったのだが…。
「師匠。それに関してはよく分かりました。ありがとうございます。でも、その説明の口調は…。」
「ん?何か問題が有るのか?」
「いえ…。何でもないです。」
何というかアレっぽいが、気分良く説明しているだけなら気分良く説明してもらおう…。
若干、空想科学的な何かを感じるが師匠が知るワケもないので何かの偶然だろう。
でも、出来れば胡散臭く感じるので普通に説明して欲しい所だが…。
「問題ないなら良いな!じゃじゃん!続いて第二の機能!マジックリミッター! マジックリミッターは魔法抑制機能だ! 普段の生活での魔法の暴発防止や、ルーキー魔術師を演出する為にランダムで使った魔術とは違う魔術が発動するぞ!これであなたもドジっ子魔術師じゃ!」
「うわー!すごいです!パチパチパチ!」
感心して師匠に拍手を送るタエコちゃん。
いやいやいや。
さっきよりも説明がパワーアップしている気がするんだが気の所為だろうか?
何か深夜の通販番組的な何かの様な様相になってきたぞ…。
大丈夫なのか?本当に!?
「師匠さん!すっごいですね!それなら誤魔化すとか苦手な私でも自然にドジッ子魔術師を装えそうですよ!」
「ハッハッハ!そうだろ?でも、それだけじゃないんだ!タエコ!」
「まぁ!何ですか!?他の機能も教えてください!」
ふぅ。なんだろう。
なんでこんなにノリノリなんだ…。
さっきまでのシリアスな感じはどこに行ったんだ…。
機能的には信頼しても良いのだろうが、何とも言えないこの感じ…。
この人達は俺とは違う種族なのかも知れない…。
「ほらほら!ハルト!そんな所で一人で居ないで私の説明を聞くさね!」
若干引いている俺の手を取り妙子ちゃんの前に引っ張られる。
なんだ…。もしかしてこの流れは…。
「ハルト!それでも妙子ちゃんが不意に刺客に襲われないか心配じゃぁないかい?」
やっぱり、この流れか…。
俺もこの三文芝居に参加しないといけないのか…。
「そうですね。師匠。心配ですね。」
「ハルト~?声が小さいさね~?何がどうだって?」
逃げられないか…。
何だか妙子ちゃんも楽しんでいるようだしやるしかないのか…。
南無三!
「そうだね!フィーナ!それが一番心配さ!そう言う奴らはどこから情報を仕入れるか分からないからね!」
バコン!
「人の事を呼び捨てにするんじゃないよ!なんだい?その三文芝居は!気持ち悪い!」
「そうですよ!ハルトさん!師匠さんに失礼ですよ!それに三文芝居はいりません!」
なんだろうか…。
すっごい理不尽なんだが…。
「まあ良いさね!そう言う時も安心の第三の機能!じゃじゃん!位置座標通知機能!! 位置座標通知機能はタエコの危機を当社独自基準を元に魔法で自動判定して、私とハルトにタエコの現在地をライトニングメッセンジャーで知らせる機能だ!ライトニングだからどんな距離や場所でも一瞬通知されるぞ! また周辺の異常な魔力量の増大や強力な殺意に加えプロが隠した殺意も感知して、その状態も通知するから、私とハルトのテレポート能力ならトイレでウンコとかしてなければ一瞬で駆けつけられるってワケさ!どうだい!?ハルト!?」
「ええ。すごいですね。魔法道具にライトニングメッセンジャーを組み込める辺りとか世界でも師匠しか出来ませんね。あの。席に戻って良いですか?」
「そうだろ?そうだろ?凄いだろ?ご協力ありがとう!ハルト!席に戻って良いぞ!」
正直、魂が持ってかれるかと思うくらい疲れた。一瞬だったのに。
なんで、あんな仕打ちを受けなくてはいけなかったのかよく分からない。
しかし、ここまでの三つ。
説明は何だかアレだが、まともな機能だ。
特にさっきの位置座標通知機能は誤動作があったとしても必要な機能だと言える。
何も無ければそれで良いし、何かありそう時には手遅れになる前に対処出来そうだ。
ウンコのくだりは置いておくとして、次の機能も期待できるんじゃないだろうか?
「さて!お立ち会い!ここからが本番だ!これまでの機能は私から言わせれば遊びさね!タエコ!こっちにおいで!」
いやいや。これまでの機能も充分な機能と技術だと思うのだが、これ以上だと?
これ以上と言われてもすぐには思いつかない。
今までの三つである程度はカバー出来そうな感じがするのだが…。
師匠に呼ばれた妙子ちゃんが何やらコソコソと耳打ちをされている。
そして、何やらポーズ的な何かを指導されている。
いや。まさかな。
これまでの流れを見ると変な機能だと言う事はないだろう。
あのポーズもシールド系の魔術を発動する為の魔術陣的な感じがするし大丈夫だと願いたい。
「よし!お待たせしたな!第四の機能は取り敢えずタエコに実演してもらってから説明するぞ!じゃあ、タエコ!言った通りにやってごらん!」
何を言われたのか分からないが、いつの間にかバミられた立ち位置に立ち妙子ちゃんが準備を始める。
「えー。でも、師匠さん。これってアレっぽいアレですか?ちょっと恥ずかしいですよー。」
「これはタエコを守る大事な機能さね!文句を言わずにキビキビやる!」
うーん。何だろう。この会話は。
妙子ちゃんの様子を見ていると一抹の不安から確実な不安にランクアップしそうだ…。
「よし!妙子行きます!」
珍しく妙子ちゃんが顔を真っ赤にしながら、意を決したのか師匠に指導された魔術陣を発動させようとする。
ブレスレットが装着された右腕をエル字に曲げて拳を顔の付近に置く。
左手を大きく上げて、その手でブレスレットにハメられたボールの様な物体を勢い良く回す。
「マジカル☆チェンジ!プラミティセットアーーーーップ!!!」
妙子ちゃんの掛け声と同時に部屋が光に包まれる。
それと同時に軽快な音楽が流れ出す。
光の中に妙子ちゃんのシルエットが浮かび上がり、生まれたままの姿だと思われるプロポーションが映し出される。
次第に光が和らぎ、妙子ちゃんのシルエットに肌色が増えてくる。
その回りには星やら花やらのビジュアルエフェクトが飛び交い大事な部分が見えそうで見えない!
そのエフェクトが落ち着いたかと思ったら、何やら妙子ちゃんが魔法少女的なアクションをする度にその部分に衣装が装着されていく!
くそ!大事な部分に謎の光がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
最後に胴体部分の衣装が首元から股にかけて徐々に広がって行き全身を覆う!
光が邪魔だ!光が邪魔だ!光が邪魔だ!
ぱららちゃっちゃらー!と効果音が鳴り、邪魔だった光も無くなり次第に飛び交っていたエフェクトが無くなる。
「マジカル☆チェンジ!プラミティ降臨! いたずらするなら喰らうわよ!」
そして、妙子ちゃんの決めポーズと決めゼリフが炸裂する…。
うん。とても恥ずかしそうだが、照れながらもポーズを決める辺りは深夜枠の魔法少女モノっぽくてとてもツボを抑えていると言えるだろう。
「って、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
本当になんじゃこりゃ!なんじゃこりゃ!なんじゃこりゃ!
そう言うキャラの盛り方は誰も望んでない!
そんな展開なんて誰も期待してなかったぞ!?
言うに事欠いて魔法少女的な変身って!
「せーつめいしよう!第四の機能!マジカル☆チェンジ!! マジカル☆チェンジはタエコ専用の変身機能だ!今度のネームド狩りの様に素性を隠しつつ魔法の行使を行うなどの隠密活動に特化した機能!!決めゼリフはもちろん!仮名もタエコの自由に設定出来るだけでなく、衣装や変身演出に、マスクのオンオフなど細部までタエコの想像力によって設定可能でマンネリした夜の生活にも大活躍じゃ!!もちろん!上手く想像出来なくても安心のクオリティフォロー機能も有るから妄想初心者のあなたにも安心!!そしてタエコが登録した者以外には顔がそこはかとなく別人に見える身バレ防止機能を搭載!また、変身時には魔法抵抗力や物理回避などの防御力がアップ!さらには魔法攻撃力が当社比で三倍!!もう貧弱な坊やと言わせない親切設計じゃ!ちなみにディフォルトの衣装はダメージを受けると実際には大したダメージじゃなくても破損して衣装が剥かれてるように見えるキャストオフ偽装仕様だ!あ!でも!変身中やキャストオフされても大事な部分をガードする謎の光は宇宙の真理的な何かによって、私を持ってしても解除が出来なかったから大事な部分を見ようとするのは諦めろ!もとい安心しろ!どうじゃ!すっごいじゃろ!!!」
えーと。説明を聞いて余計に何から突っ込んで良いのか分からなくなった。
もう良いよね。突っ込まなくても。
確かに素晴らしかった。
ある意味これが本番だと言う意味も分からなくもない。
いや。痛いほど分かるが普通はこんなもん実装しない。
チラっと妙子ちゃんの方に目を向けたがさすがに恥ずかしいのか顔を真っ赤にしてへたり込んでいる。
ふぅ。それを見るとこの状況に嫌でも突っ込んで抗議をしないと行けない気がするので困る。
「はい。師匠。良いですか?」
意を決して師匠に対して異論を唱える。
「ハイ!ハルト!何か質問かね?」
すっごい上手く行ったので凄くご機嫌だが言わねばならないだろう。
「いや。さすがにコレは無いんじゃないかと。色々と悪くは無いですけど、悪目立ちしますから。もう少しほら。何とかなりませんか?」
悪目立ちすると余計に妙子ちゃんが恥ずかしいのでジャージとか体操服くらいで何とか勘弁してやって欲しい。
「何を言うか!妙子の想像力で変更が可能だと言っておろうが!魔法少女的な何かは付属するが一定以上の肌の露出が有るなら変更は可能じゃぞ!それに身バレ防止機能も有るから問題なかろうが!?なぁ!タエコ!タエコだとバレなければどうと言う事はないぞ!!」
何と言う事でしょう。一定量の肌の露出が必要とか何ともけしからん!
体操服辺りなら変更は可能そうだが、ヒーロー物的な全身タイツに仮面を被ったアレじゃダメっぽい!!
実にけしからん!!
「それに、これは調整が大変だったからこれ以上は無理。後はどこまでどうするかは妙子の想像力を執念次第さね。それに大きな秘密を覆い隠すなら更に大きな秘密で覆い隠すに限る!」
さっき『出来ない事を出来ると言うのは嫌いだから、これが確実になるまでは』とか最初の方に言ってた気がするんだが、気の所為だったのだろうか…。
と、言うかコレに関しては出来ない事を出来ないと言っても師匠的には問題ないから無理と言っちゃったワケか…。
うむ。確実に、この機能は師匠の趣味の産物ななんだろうな…。
とは言え、趣味的な以外は機能しているようで、さっきから妙子ちゃんが身バレ機能に俺を登録したり削除したりしているのか、効果が発動している時には妙子ちゃんの顔が別人に見えている。
どうしようもなく趣味的だと言う事を除けば確かに身元を隠した行動には使えそうだ。
「妙子ちゃん。嫌なら出来るだけこの機能は使わなくて良いから。今度のポテトイーター狩りや、どうしても身バレしてはいけない時だけ使うようにしよう。普段はこんなの覚えてなくて良いから。」
さすがに妙子ちゃんもこの機能は無いと思ったのか押し黙ったままだ。
声をかけても…。って、あれ?さっきと衣装が違うような。
と、思った次の瞬間、妙子ちゃんの衣装がどっかの超時空歌姫的な衣装に変わる。
「やった!思い通りー!って、あれ?ハルトさん何かありました?」
「うん。良いや。その機能楽しんでいるようで何よりですね。」
「はい!自由に編集出来るなら想像力の見せ所ですよねー!」
「うん。そうか。良かったね。」
「はい!良かったです!」
だ、そうだ。
何だかやるせない。
やるせないが本人が良いなら良しとしよう。
だが、となると問題は最後の機能だ。
師匠のここからが本番だと言う不気味な言葉が気にかかる。
これで満足しきっている感じが俺の不安に拍車をかける。
「師匠。これで四つですけど。最後の機能って何なんですか?」
「あぁ。じば…」
「却下です!!!それだけは絶対外して下さい!!!!」
「何を言うんじゃ!自爆はロマンで必須機能じゃろうが!それに自爆と言ってもタエコを中心に半径三十メートルを吹き飛ばすだけで、タエコは防護機能に守られて、その隙きに逃げられるんじゃぞ!?」
「却 下 で す ! そんな物騒な物は外して下さい!そんなのは自分で範囲や威力を全て制御できて初めて使える物なんですから!良いですね!?」
何となくそんな予感はしていたが、まさか本当にそうだったとは…。
そんなシュンとした目をして巨乳を押し付け無言で訴えかけられても許可出来ない!
確かに、そんな感じで魔法を行使して離脱する事もあるが、自分が使い方を理解していてこそだ。
機能で実装して良い物でないくらい師匠なら想像できるだろうが。
「本当に本当にダメか?」
「却下です!外さないと今すぐ帰ってもらいますからね!」
強く言い放つを渋々だが分かってくれたようだ。
全く困ったものだが、妙子ちゃんの事を考えて色々としてくれた事には感謝したい。
思いの外、妙子ちゃんの能力が成長していた事には驚いたが、これからも注意して対処していけば問題は減るだろう。
最悪の場合でも、俺と師匠が居れば何とかなるだろうし、滅多な事は起きないと思いたい。
取り敢えずは差し迫ったポテトイーター狩りだ。
問題は有るとは言え、あのブレスレットの機能を使えば妙子ちゃんにとって良い経験となる実戦の機会だろう。
本当にこれが正しい選択なのか俺も判断しかねる所だが、やってみて判断をすると言うのも良い経験になると思う。
この程度の経験なら後悔はやってみてからでも遅くない。
と、思っていた時期も有りました。
この後に降りかかる出来事をこの時の俺はまだ知らなかったのだから。
どうも。となりの新兵ちゃんです。
少し区切りが付けにくくて長い感じになってしまいました。
大まかな話としては次回の狩りのターゲットについての説明回でしたね。
あと、新キャラが出てきたり、新キャラっぽい名前が出て来ていますが…。
以降、登場機会が有るかどうかは分かりません…。
この辺は設定上の説明的な何かだと思って頂ければ有り難いです。
なかなかダンジョンに関係した行動をハルトがしてくれないので、周辺の事情を埋めていこうみたいな感じだと思って頂ければ。
そして、なぜか魔法少女系のアイテムが登場と言う意味不明な展開。
どうしてこうなったかと言うと興が乗ったとしか…。
覚悟も無く大きな力を持つと色々危ないって話だったはずだったんですけど、変な人に狙われないように正体を隠す方法を考えてたら、こんな事になってしまいました。
まあ、自分的に楽しかったので良しとしましょう。
と、言う事で大型MOBとネームド狩りのお話に続く下準備は完了です。
戦闘シーンとかが上手く書けるかは分かりませんが頑張りたいと思います。
現時点であまり話は進んでいませんが、林檎も無くなったので少しは話も進むでしょう…。
ええ。7月末からアレがアレ過ぎて周回していてアレだったので…。
今週辺りに水着イベが発生しそうなので、また筆が進まない気もしますが。
週末になっても更新されてなかったらどっかのカルデアで奮闘しているのだと思って頂いて間違いない気がします。
タイミング的に8月末もプリヤ関係で何か有りそうな気がするので月が明けるまでアレな気もしますが、時間を作って更新していきたいと思っているので気長にお待ち頂ければと思います。
と、言う事で今回もお付き合い頂きありがとうございました。
それでは、またいつか。




