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其之一|第終章|エピローグ

「エマージェンシーゲートオープン」

 ハルトさんが唱えると、備え付けの魔法陣が緑色に輝きその姿を現す。

「先に入って。」

 と、促されたので先に入る。


 転送された先はハルトさんの地下工房だった。


「本当だったんだ。」


 言われて見れば、ダンジョンと地下工房の作りは似ている。

 使われている素材や飾りなどダンジョンの中で散々見た物と同じだ。


 程なくして、ハルトさんの姿が現れる。


 あの後、回復したハルトさんに大体の事情を話してもらった。

 例によって例のごとく、得意な事にとなると話が長いので要約すると…


 あのダンジョンを作ったのはハルトさんらしい。

 正確にはハルトさんが使い魔を大量に使って建設したダンジョンだそうだ。

 私が心配していたみたいに魔王がどうとかそう言うのとは一切関係ないらしい。


 この世界には『魔王』と言う存在は居るものの、複数の王国からなる世界政府と契約を結んでいて、お互いがお互いを仮想敵とし、緊張状態を維持する事で軍事産業と言うお互いのメリットを発展させる為のシステムの一部として、ある意味で世界の平和の一翼を担っているらしい。


 もちろん、それを知っているのは一部の人間だけなんだそうな。

 戦争をしているフリをして軍事産業を活性化し経済を回して、たまにガチで戦争させる事で人間や魔物の破壊衝動を発散させる場として戦場を利用し国内の平和を維持しているらしい。


 たまに暴走する者も居るらしいけど、そこは何をされても個人の自己責任で政府も魔王も合意しているとか。実際には一定地域以外は不可侵として世界のバランスを保っているそうだ。


 完全にマッチポンプです。ありがとうございます。


 マッチポンプと言うとダンジョンだけでなく、この街の建物とか役所とか、この街の全てがハルトさんの物らしい。


 広大な未開の地を貴族から買って、ダンジョンがある出来上がった所で開拓団を送り込み、自分もその開拓に参加して自然と住民として溶け込み、開拓した土地に街を建設し、開拓で分配された開拓者の土地や建設を全部買い取って、自治組織を置き、そこに自分の息がかかった者を送り込んで全てを牛耳っているらしい。


 ハルトさん曰く


「この街の全部が完全に俺が引きこもる為の金を生み出すシステムなんだ!」


 だ、そうだ。


 酷い…。これは酷い。

 地下十階で五十分も何も無い所を歩かせる人なだけはある。

 あの時点で、このダンジョンを作ったヤツはろくでなしだと思ってはいたけど…。


 私の前に座ってニコニコしてるのが『それ』である。


 酷い!思った以上に酷い!

 これでも結構、ハルトさんの事は信頼していたのに…。

 実は本当にクズなのかも知れない…。

 って言うか、完全にクズでしょ?

 五十分も何も無い所を歩かせるとか普通は思いつかないよ?

 そして、引きこもりの資金を得るために街を作るとか頭おかしいでしょ!?


『街のみなさーーん!この街はハルトさんが引きこもる為のマッチポンプですよー!!にーげーてー!!引きこもりにお金を吸い取られますよー!!』


 街の皆さん!本当にありがとうございます!!

 マジでクズです!うちのハルトさんは!!


「でも!考えてみなよ!俺の引きこもりの為の街だけどさ!そのお陰で街の人の生活も潤ってるワケだよ?WINWINの関係じゃないか!」


「・・・・。」


 あー。駄目だ。こう言う事を言い出す人はダメ人間だと私は知っている。

 前にテレビで見た。


 まあ、お金と人の生活を生み出して、この街の経済を回しているだけテレビで見たクズよりは、ハルトさんの方がマシかも知れないけど…。


 でも、何だか納得がいかない!


 ハルトさんは「取り敢えずダンジョンをある程度見てから説明した方が分かってもらえると思って」とか言っていたけど、無意味に長い距離を歩かされた事や、ハルトさんの駄目っぷりを知って私の中で折り合いをつけるのは、何というか凄く!凄く!難しそうだ。


 だけど、どう転がってもダンジョンの手伝いをするのは避けられそうにない。

 ハルトさんはそれを強要する事はないと思う。

 でも、このままハルトさんを放っておくと…。

 うん。何だかダメな方に雪だるま式に転がって行く未来が見える。

 それで、被害が降り掛かってくるのは私だ。

 まったく関係ないならハルトさんが最悪どうなろうが関係ないって割り切れるかも知れないけど、それは私の生活に直結する由々しき事態だ!


 それに。


 それに、私はもうハルトさんの優しさや、時折見せる寂しそうな表情を知ってしまっている。


 放っておけるかと言うと無理だ。


 それなら、私が関わる事で『引きこもり』なんてネガティブな理由でダンジョンや街を運用するのではなくて、ハルトさんが完全に立ち直る方向に持っていきたい。


 多分、ハルトさんも自分が気が付かない心の奥で立ち直りたいと望んでいるから、私にアレを見せたんだと思う。

 そうでないなら、黙って黙々とダンジョン運営を行えば良いだけだもん。

 ハルトさんも、自分を変えたいと無意識に思っているじゃないだろうか。


 少なくとも、最初に会ったあの日からハルトさんは変わってきている。

 目を見て話してくれる事も多くなったし、ダンジョンの事も相談してくれた。

 買い物の時も話せば理解してくれたし、女の子の買い物に一緒について行こうかと言ってくれたのも私を心配しての事だ。


『うん。この世界での目標ができた。ハルトさんに立ち直ってもらおう。』


 それでも俺は引きこもりたいなんて言い出すなら、無理やりでも外に引っ張り出そう。

 嫌がっても毎日連れ出そう。

 嫌ってほどハルトさんを振り回して、そんな事を考えられなくしちゃおう!

 それがハルトさんのためになるのかは分からないけど、私の気持ちは感じてくれるはずだ!


 それでダメなら、その時はその時だと思うけど…。


「妙子ちゃん。そろそろ上に戻るよ!そんな所でむくれてドナドナ歌ってないで…。ね?」


 ツーンとそっぽを向く。

 今日はとりあえず許してあげないんだから!


「そうだ!お腹空いたよね?カレー作ってあげるから!カレー好きだろ!?カレー!」


 何というか、ハルトさん的に私はそう言うキャラらしい。

 食べ物を与えていれば機嫌がなおると思ってるとか多感な女子高生に対して失礼な!

 しかもカレーって!私は黄色か!イエローなの!?力持ちだから!?

 そう言うキャラ付けなの?!失礼な!!!


 まあ、でも。お腹すいたから行かない事もないけど…。


 取り敢えず、階段に向かう。

 あからさまにホッとした様子のハルトさんに態度に何だかイラっとする。


 初めてここに来た時と同じ階段。

 あの時と同じ様に無言で階段を上がる。

 あの時と違うのは少なからず、この人の事をある程度信用している事。

 あの時と違うのは少なからず、この人の事がちょっと心配な事。

 あの時と違うのは少なからず、この人の優しさを知っている事。


 この世界で、この状況で自分を失わずに過ごせているのはこの人のおかげだ。


「そうそう。さっき外の画像を確認したらベッドが届いているみたいだから日が暮れる前に奥の部屋に入れてしまってね。あの部屋使って良いから。リミッターまだ入れてないだろ?そのままベット入れちゃって。」


 リミッターを外したままなのは、その通りだけど何だか女の子扱いされていない感じがする一連の発言にまたイラっとした。


 ハルトさんも私のリミッターをかけられるのに、リミッターが外れたままなのは、少なからず私を信用してくれている証なのだとは思う。

 けど、それにしたってもう少し気遣いとか女の子扱いがあってもバチは当たらないと思う。


 そういう点でも再教育が必要な気がする。何というか女の子の気持ちが分かってない感じ。

 これじゃあ、女の子と付き合った事があっても良い所まで行ったりとかした事無いんじゃないだろうか。

 まあ、私もそんな経験ないけど…。

 はっ…。もしかして魔法使いってそう言う事!?だから魔法使い??


 いやいや。さすがにそんな事はないだろう。顔は悪くないし…。


 色々な事を考えつつ上がる階段。

 あの時とは違って見える、その階段を無言のまま登り続けた。

 たまに、ハルトさんがチラっと見て着いてきてるか確認しながら歩調を調整してくれる。


 ちょっと、見直した。

 その気遣いをいつもしてくれれば完璧なのになぁ。

 いやいやいや。完璧って誰の完璧?ないない。それはない。


 ブルンブルンと頭を振った時、夕日の色なのか赤く染まった階段の出口が見えてきた。


「よーし!張り切ってカレー作るから、妙子ちゃんは悪いけどベッドお願いする!」


「しょうがないなー。仕方ないからもうひと働きしてあげます!美味しいの作って下さい!」


「まかせとけって!ビックリするくらい美味しいカレーを作るからな!」


 まだ、ぎこちないけど、これでとりあえず仲直りだ。


* * * * *


「ふぅ。設置完了!」


 そのままベットに倒れ込む。

 窓から入ってくる赤色の夕日がとても綺麗で気を緩ませると泣いてしまいそうだ。


「って!言う事はこの部屋って西日!!!」


 やられた…。

 締め切っていたら夏とか凄い事になりそうだ。

 ハルトさんはそんな事は考えずに部屋を指定したのだと思うけど…。

 あーぁ。少し見直して損した気分だ。


 でも、夕日が見える風景と言うのも嫌いじゃない。

 暑いって言っても自然の風が涼しい、この世界なら窓でも開けておけば大丈夫だろう。

 うん。良いふうに解釈しとこう。


 ベッドから見える夕焼けを眺めながら気持ちを切り替える。

 

 日が暮れる。

 空を真っ赤に染めて太陽が沈み夜がやってくる。

 朝日と違って夕日はどうしてこんなにも切ない気持ちになるのだろうか。


 多分、見えない明日が不安だからかも知れない。

 今の私がそうだ。

 でも、ワクワクもする。


「ダンジョンマスターかぁ。」


 未だにそんな厨二病設定を分かりたくもないけど、落ち着いて考えてみると面白そうだ。


「だから、ああ言う仕掛けをして出来るだけ助けるようにしてるのかぁ。」


 今ならリザレクションコインを配布している理由も納得出来そうな気がする。


「妙子ちゃーん!ご飯できたよー!」


「はーい!カレー大盛りでお願いします!!」


 気がつくと美味しそうなカレーの香りが漂ってきていた。

 何となく、夕方に感じる幸せの香りだ。


 今日はいっぱい食べてゆっくり寝てしまおう。


 きっと、明日からも大変なはずだから。


 明日からどうなるか分からないけど、もう一つの新しい明日が始まるっぽい。

 そう思うと何だかちょっと楽しくなってきた。


 不安はあるけどやるだけやってみよう。

 気持ちを切り替えると夕日に染まった部屋から飛び出した。


 きっと、昨日までとは全く違った明日がこれからはじまる。

読了、お疲れ様でした。

隣の新兵ちゃんです。


しかし、第十二章の最後のアレは酷かったですね。

でも、最初に思いついたのが、あのシーンだったので仕方ないです。


しかも、ダラダラ長いし。

もう少し、小分けにしてアップしても良かったのですが面倒だったので、そのままアップしました。

ホントモウシワケナイ…。


と、言う事でこの物語はダンジョンマスター物っぽい何かとして話が進行する予定です。


でも、ダンジョンの中って大きな展開とかあまり無い気がするんですよね。

ただ、延々とマッピングしてダンジョンに潜り続けて、己を鍛え、テレポーターで飛ばされて石の中に居る状態になるとかくらいしか…。

あとは、PKで身ぐるみ剥がれて耳を奪われるとかでしょうか。


今のところ考えている話ではダンジョンで何か物語が進行すると言う事はあまり無い気がします…。


現在、其之二の話の流れを考えていますが、誰も主要人物がダンジョンに潜って話を展開する気配が有りません…。

どうしたものか。


まあ、そのうち…。そのうち…。


取り敢えず、これで其之一は終了です。

お付き合い頂きありがとうございました。


其之二はもう少し先になると思いますが、先の展開を考える中で短い話を思いつきましたので近々掲載致します。

一応、本編にも続く話ですのでご一読頂ければと思います。


それでは、またいつか。

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