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EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season17 その行いの先にあるもの  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season17 その行いの先にあるもの
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プロローグ

[オクトーブル社・会議室/午後15時]



ミーティングが終わり、資料を片付けていると背後から、控えめな声がした。


「あの……すみません……」


振り返ると、小柄で少し幼い顔立ちの女性が立っていた。


緊張しているのか、両手を胸の前で重ねている。


「あの……如月(きさらぎ)さん……如月(きさらぎ)……環(たまき)さん、ですよね?」


「え? あ、はい……そうですけど……」


「あ、よかった……」


ほっと息をついたあと、彼女は深く頭を下げた。


「私、立原(たてはら)美玖(みく)といいます。ここの事務職の派遣で……名刺がなくて……すみません」


「あ、いえ……大丈夫ですよ。立原(たてはら)さん……わたしに、何か……?」


「その……突然すみません……私、子どものころ、児童保護施設で育っていて……その時、よく一緒に遊んでくれた年上の方がいたんです」


言葉を探すように、一度視線を落とす。


「その方に……とても、よく似ていて……違いますよね……名字も違いますし……でも、雰囲気が……」


「え……?」


「……あ、すみません。変なこと言って……本当に失礼しました」


美玖(みく)は、また深く頭を下げ、立ち去ろうとした。


「あ、待って……」


自分の口から、自然に言葉がこぼれていた。


「もしかして……美玖(みく)ちゃん?」


美玖(みく)が、はっと顔を上げる。


「……え?あ、はい……美玖(みく)、です!」


「ごめんなさい……すぐに気づかなくて……」


「いえ……!私こそ、突然声をかけてしまって……」


「ううん……ありがとう。覚えててくれて……うれしい」


美玖(みく)の表情が、ぱっと明るくなる。


「はい……!会議中、環(たまき)さんが気になって……内容、ほとんど覚えてないくらいで……」


「ふふ……それは困りましたね」


少し近づいた美玖(みく)が、小さな声で言った。


「あの……環(たまき)さん……ご結婚、されたんですか? あちらの……すっごく、かっこいい方と……」


「え? あ、はい……結婚しました」


環(たまき)はそう言って、少し離れた場所に立つ柊(しゅう)を見る。


視線に気づいた柊(しゅう)が、微笑んだ。


「環(たまき)? どうした?」


「あ、柊(しゅう)……こちら、立原(たてはら)美玖(みく)さん。子どものころ、同じ施設にいて……わたしを覚えていてくれたんです」


「あ、た、立原(たてはら)美玖(みく)と申します……すみません、長く呼び止めてしまって……」


「いえ。如月(きさらぎ)柊(しゅう)です。はじめまして」


「あ、は、はじめまして……」


「どうしたんですか〜?」


「あ、凪(なぎ)くん」


「環(たまき)さん、お知り合いですか?」


「はい……子どものころ、同じ施設にいた立原(たてはら)美玖(みく)さんです」


「へぇ〜……すごい偶然ですね。あ、はじめまして。僕、凪(なぎ)陽翔(はると)です」


「は、はじめまして……立原(たてはら)美玖(みく)です。よろしくお願いします」


「美玖(みく)さんも、このプロジェクトのメンバーなんですか?」


「はい……一応……派遣なので、資料作成とか雑用が中心ですけど……」


「それなら、またお会いできますね」


一瞬、迷うように視線を伏せてから、美玖(みく)は言った。


「……でも、今回は顔合わせだけって言われていて……今後のミーティングには出ないと思います」


「そうなんですね……」


美玖(みく)は、環(たまき)の名刺を見つめた。


「あの……何かあったら……ここに、連絡してもいいですか?」


「はい……ぜひ」


「……ありがとうございます」


深く頭を下げ、美玖(みく)は会議室を後にした。


その後ろ姿を見つめながら、環(たまき)の胸が、きゅっと締めつけられた。



理由は、わからない。


懐かしさなのか、うれしさなのか、それとも……別の、何かなのか。



「環(たまき)?」


柊(しゅう)が、そっと肩に手を置く。


「気になること、あったか?」


「……うん……なんだか……胸が、きゅっとして……いいことなのか……イヤなことなのか……よく、わからなくて……」


「……そうか」


「何もないといいですね〜」


|凪(なぎ)の明るい声が、少しだけ空気を和らげる。


「……そうだな」


「……はい」


環(たまき)の胸に残る、説明のつかない“きゅっ”が当たらないことを願いながら3人は会議室を後にした。

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