確定してたけど運命の出会い(1)
私が必死な叫び声を上げたとき、ようやく願いが天に届いた。
いつの間にか距離を詰めていたナオトの影が私の視界に入ったのだ。
「うおおおお! やめろォっ!」
「グギャー!」
ナオトのドロップキックが高橋さんの肩に当たり、高橋さんは吹き飛ぶように地に転がる。
「ギャッ! ギャッ!」
高橋さんはすぐに体勢を立て直し、ナオトもまた横たわる私をかばうように立ちはだかってくれていた。
「キミ! 大丈夫?」
高橋さんから視線を切らないまでも、声だけは私に掛けてくれるナオト。
「だ、大丈夫ですニャ! あ、あなたは……?」
「今は俺のことなんかいい……それより、あのサルみたいな化け物はなんなんだ!?」
よかった。ナオトの目には高橋さんがしっかりモンスターに見えているようだ。
「あれはサルキメラ! とっても獰猛なモンスターですニャ!」
「モンスター!? やっぱここは違世界ってわけかよ」
ナオトは身構えた身体をこわばらせていた。
「キミ、何か武器になりそうな物は持ってない?」
「ご、ごめんなさいニャア……」
「そっか……じゃあ、素手で戦うしかないのか……」
ナオトが覚悟を決めた表情で拳を握ったときだった。
「ギャ……ギャギ……」
高橋さんはナオトに恐れをなしたような動きであとずさり、やがて背を向けて森の奥深くへと逃げ去っていった。
助かった……高橋さんも実に上手い引き際だったと思う。
「ど、どうしたんだ……? なんで逃げたんだ……?」
事情を知らないナオトは首を傾げていた。
「き、きっとあなたに恐れをなして逃げ出したのニャ」
「俺、特に何もしてないけど……?」
「そ、そんなことないニャ! きっと先ほどのドロップキックが致命傷になっていたのニャ!」
「そうかなぁ……? 俺のステータスと、さっきのモンスターのステータスじゃ、そんなに大きく変わらなかったし、そんなふうには見えなかったけどなぁ……」
くっ! ナオトはわりとゲーム事情に詳しいと見える。
ステータス画面に表示されるパラメータは裏方のステータス担当が調整したものを表示しているだけなので、ナオトが詳しければそのぶん今後の調整が難しくなったことを意味する。
改めてになるが、この世界は実は現実世界。
敵を倒したとてチャララーとレベルが上がったりはしない。倒すべきキメラとの相対的な強さが変わるわけではないのだ。
だがそれでもナオトに表示されるステータス画面上ではレベルが上がる。強さも上がったように表示される。
要はナオトが必要以上にビビったりしないよう数値で可視化して調整する役割があるのだ。
もちろん序盤で勝てなそうな凶悪なキメラに遭遇したときは敵のステータスを上げまくって逃げる選択をさせる。
女神ノアの声に続く、第二の誘導システムの性質を持っているのだ。
「き、きっとあなたのオーラに気圧されたのニャ!」
違世界ヒロインたるもの、いついかなるときも勇者を持ち上げるべし!
「この世界にはオーラなんて概念があるの?」
だがナオトはなかなか納得してくれなかった。
……そこ、ツッコむかなぁ。
「いや、特にオーラとかの概念はないですけどニャ……」
「じゃあなぜなんだ……?」
「き、きっとおなかを空かせていたんですニャ!」
「それだったら、まずキミを食べようとしていたはずだろう? 本来の意味で」
う。なんだこの勇者……余計なことを細かく気にしやがって……。
私は以外と神経質なナオトの質問に対し困っていた。
「何をしているリリアン君! 今こそ究極アクションだ!」
私が返答に困っているとネコ耳型インカムから九条専務の指示が来る。
そ、そうだ、あれを使えば……!
「にゃふ~ん! きゅぴきゅぴ!」
ほわ~ん。
すべての場の空気をうやむやにする「にゃふ~ん! きゅぴきゅぴ!」
ぜひ職場で、ご家庭で、ご活用ください。










