確定してたけど運命の出会い(2)
私が胸の前で両手を合わせ、上目遣いで究極アクションをかませば途端に周囲にほわ~んとした雰囲気が広がる。
ナオトは私に間近で見つめられて、視線をそらしながら頬を赤らめた。
「ま、まぁ、二人とも助かったんだから、あんまり深く気にしなくてもいいかな……」
究極アクション、効果テキメンだな!
私はあざとく振る舞っておきながら内心で冷静にツッコんでいた。
とにかくプロジェクト崩壊の危機は回避できたようである。
そんなふうに私が安堵している暇もなく、次の指示が飛んでくる。
「何をしているリリアン君! 油断するな! ここは勇者に惚れ込む絶好のチャンスなんだ! 運命の出会いを演出せよ」
くっ、なんて気の抜けないプロジェクトなんだ。
私はそう思いながら素早くナオトに身を寄せ、その手を握った。
「あ、あの! 助けていただいてありがとうニャ~! あなたは命の恩人ニャ~」
ナオトはまた頬を赤らめて顔を背けた。
「いいぞリリアン君。ナオトはどうせ童貞だ。そのままキミの虜にしたまえ」
ここはキャバクラか?
「私はリリアン・ドゥと言うニャ……あの、よろしければあなたのお名前を教えてほしいニャ」
私が名乗ると、そこでようやくナオトは私のネコ耳やピンクの髪色に気づいたようだった。
「え……ネコ耳……?」
当然驚くだろう。だが私は何食わぬ顔で首を傾げて見せる。
「はいニャ。私は見てのとおり獣人族ニャ~。もしかして獣人族を見るのは初めてだったニャ?」
「そ、そうだね……あ。名乗り遅れちゃったけど俺はナオト。九条ナオトっていうんだ」
「ナオト様……なんて素敵なお名前ニャア……」
私はうっとりとした顔でさらにナオトに身を寄せた。
「おいリリアン君。もっと密着してナオトを落とすんだ。違世界ヒロインなら胸を押しつけるシーンだぞ」
く……なんで私がそんなことを……。
そう思いつつも私は指示に従う。ここで好意的な信頼関係を築けるかどうかでその後のプロジェクト進行に影響するからだ。
案の定ナオトは顔を背けて照れていた。
「ち、近いよリリアンさん……」
「あっ、ご、ごめんなさいニャ」
私はパッと離れて少し頬を赤くさせ、上目遣いでナオトを見上げる。
「ナオト様、とっても素敵だったからついニャ……」
「い、いいんだ。そんなに気にしないでリリアンさん」
「あ、あの……わ、私のことはリリアンと呼んでほしいニャ……」
「わ、わかったよリリアン……」
よし、ひとまずは親しく呼ばせることに成功した。
このあとのミッションは助けてもらったお礼と称して集落にある私の家に招くこと。
これによって一過性の関係に終わることを防ぐのが目的だ。
ただし私の家と言っても、私自身寝泊まりしたのは前泊した昨日が初めてだったわけだが。
「ナオト様。もしよろしければ私の家に来ないかニャ……? 先ほどのお礼をさせてほしいニャ……」
「えっ? お礼?」
「だめニャ……?」
私はまた少し身体を寄せ、うるうると潤ませた瞳でナオトに迫る。このあたりは約一ヶ月にも及ぶヒロイン修行の賜物だ。
「う、うん……そう言われてみると実は俺もリリアンに聞きたいことがたくさんあるんだった……」
これも計画どおり。
見知らぬ土地で自身の置かれた状況すらわからなければ誰かに聞くしかないだろう。
そこへ自分に好意的な相手が現れた。
序盤からトラブルには見舞われたが、あくまでシナリオは一本道なのである。
「にゃふ~ん! とっても嬉しいニャ~! それではさっそく、私の家に案内するニャ~!」
私は逃がすまじとナオトに腕を絡め、自宅までの道のりをともに歩いた。
とりまヒロインは主人公に惚れる呪いが掛かってますよね。










