ヒロインは主人公が好きなのか(1)
私の家として設定された家は森から出て少ししたところにある小さな集落にあった。
そこは人間と獣人族が共存する集落という設定のため、さまざまな獣耳を装着したスタッフがいる。
私たちが近づいた内々の連絡によって、誰もが元々そこで生活している雰囲気を演出していた。
「驚いたな……本当に違世界に来たって感じがするよ」
ナオトはそこかしこを見回しながら私の隣を歩いていた。
「ナオト様? 先ほどもチラッと聞いたけど、違世界ってなんニャ?」
あくまでここが違世界なのはナオトだけであって、元々暮らしていた設定の私たちには『違世界』とは聞き慣れないはずの言葉だ。
序盤のうちに認識のすり合わせをしておいたほうがボロも出にくくなるだろう。
「あ、うん……俺もあとで詳しく教えてほしいと思ってるんだけど、どうやら俺、こことは違う世界からやって来たみたいなんだ」
「そうだったのニャ~。不思議なこともあるものニャ~」
「ずいぶん突拍子もない話だと思うけど、リリアンは信じてくれるの?」
「ナオト様は命の恩人ニャ! ぜ~んぶ信じるニャ!」
これぞ違世界的シンプルな思考回路の極意である。
「ありがとう、リリアン」
そう言ってナオトは私の頭にポンと軽く手を置いた。
「にゃふ!?」
私は待ってましたとばかりに身体を跳ね上がらせて驚いたふりをする。
「ど、どうしたのリリアン!?」
「だ、だめニャア……私、耳を触られると弱いニャア……」
これもいつかすり合わせたかった通過点の一つ。こうしておくことで不意に触られてネコ耳型インカムがズレてしまうなどのトラブルを防止するのが狙いだ。
「ご、ごめん! 俺、そうとは知らずに!」
「へ、平気ニャ……恩人のナオト様なら……と、特別ニャ……?」
で、で、出たぁ! あなただけ特別アピールぅ!
と自分でもツッコみながらナオトを上目遣いで見つめていく。
「う、うん……ありがとう。でも、次は気をつけるよ」
ナオトは純情にも顔を染めていた。
いや、それにしてもよく初対面の女性に頭ポンができたものだ。
よく考えてみれば現実世界ではそう簡単に頭ポンなどできないだろうし、これもまたナオトが違世界だと信じたことによる補正なのかもしれなかった。
ともかく私たちは仲良く会話をしながら我が家|(仮)まで帰ってきたのだった。
主人公は転生すれば頭ポン出来るほど前向きになるだろうか。
(いや、ならない)










