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私はこの国の王の娘として生まれ、強すぎる魔力と聖力を生まれながらに持っていた。
その証拠に魔力の多いものは色素が薄いという特徴を瞳にも髪にも備え、肌も透き通るように真っ白だった。
生まれた瞬間からその力の強さに周りの者は耐えられず、私は姫として生まれながらなかば幽閉のような生活をしていた。
ただ、私はあまり自分を不幸だとは思っていなかった。
魔力の強い父は頻繁に私に会いに来たし、身の回りの世話は父に命じられた精霊がしてくれたし、父も同じように育ったと聞いていたから。
母には会えなかったが、母という存在を知らなかったから。
精霊たちが母替わりであり、友人であり私の世界を作っていた。
父は私に時折こう言った。
「力があるものはそれを制御しなくてはいけない。でないと私たちの一族は人でなくなってしまうのだから。」
人でないということが幼い私には分からなかったが、人でいなければいけないのだとなんとなく思っていた。
私は父と精霊たちに言われるままに魔力と聖力の制御を幼い時から鍛錬し、その膨大な力を息を吸って吐くように扱えるようになった。
そして6歳を迎えたころ、父からの命令により私に人間の側仕え兼友人ができることとなった。
父曰く、「人間としてこの世界につなぎとめるため」らしい。
ただ、私や父の膨大な力を直近で浴びても問題がないのは同様に強い力を持つ貴族か一切の魔力が効かない黒髪と紫目を持つ者だというが、前者は私が幽閉されていることからも力の強さが足りる貴族がおらず、後者にかけるしかないとのことだった。
黒髪と紫目の者は夜の者と呼ばれ、この魔力と聖力が当たり前の世界で異端児とされ、迫害の歴史を歩み、今はほとんど存在していないという。
父は
「夜の者は私たちと対になるものだから。」
とは言っていたが、だから少ないのね、としか当時は思わなかった。
彼、ドゥグムとは私の幽閉されていた部屋で出会った。
私は制御方法を得たとはいえ、膨大な魔力を持て余している部分もあり、魔力を吸い取りため込む石を敷き詰めた部屋で暮らしていた。
成長して石に囲まれた部屋が普通ではないと知ったけれど、ひんやりした石がけだるげな体から魔力を吸い取ってくれるのが好きで辛いと思ったこともなかった。
…普通の貴族がその部屋に入ればあっという間に魔力が食い尽くされ倒れてしまうことすら知らなかったけれども。
ドゥグムは私と会ったときやせっぽちで鋭い目をした男の子だった。
男の子は私の姿を見た途端、おぼつかないながらも跪き「聖女様」とつぶやいた。
私は聖女と呼ばれたことよりも同い年とは思えない痩せ方に目を瞠り、ご飯を一緒に食べたいと父にねだった。
そして、その日から私とドゥグムの生活は始まった。