戦いの末に
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普通の魔石は、明るい紫色をしているが、レンの体についている魔石は黒い。漆黒のようだった。
悪意なのか、恨みなのか分からないが、黒い魔石が体について魔物化していた。
マキのスキルのお陰か体から魔石が無くなり人間の姿に戻っていく。
レンとの戦いは、一段落かもしれないが、この20階にはまだ多くの魔物が存在している。
(戦闘していた周辺は、魔石合成で魔力を吸収して減らしていたので突然魔物が発生したりはしないが、他の場所には、まだ大量の魔物がいるし、魔力濃度が高く魔物も発生している。)
この戦いの末に、魔物たちは何を悟ったのか、一斉にこの階層から離れていく。
どうやら上の階層を目指す動きを始めた。
ボス(レン)がいなくなり、統制から一時的に解放され、強者が倒された恐怖からか、魔物たちは、群れを成して逃げ出していた。
しばらくすると、20階の魔物たちの数は、平常に戻っていた。
強敵との戦闘からか、魔物が減ったことを嬉しく思っていたみんなでも…
周辺の魔力濃度は高いままだ。魔物も減ったので急いで、マキは、魔石合成を使いあたりの魔力を魔石に吸収し沈静化させた。
「まだ、終わっていない。急いで町に戻らないと」
ガルジは、険しい表情でキワザスでスタンピードが発生することを思い出した。
この場所が沈静化しても魔物は、階段の方へ地上の方へ逃げ出していた。
みんなも、気づき不安な表情を隠せない。
この逃げ出した魔物たちは、どこへ行くのか。
地上へ逃げそして、どこに向かうのか。
みんなはキワザスに向かうことが容易に想像できた。
20階層より上に、どのくらいの魔物がいたのかは分からないが、かなりの数がいたと予想される。
それが、一斉に地上に出てしまったら、せっかくスタンピード抑制のために20階まで来て、魔力を正常に戻しても意味がない。
「その前に、レンをどうするんだ?」
沈黙を破ったのはニウテだった。彼はマキの隣に立ち、まっすぐな目で問いかける。
「このままにしておけない。みんなも協力してくれたから、殺すつもりがないのはわかっている。
罪はある。それも、分かっている。」
「騎士団へ突き出して、裁いてもらうのか?」
ガルジが腕を組みながら問う。その問いに、マキは首を横に振った。
マキのわがままだけど
「それも、したくない。」
「じゃあ、どうするの?」
エメダは不安な顔でマキを見た。
その時、レンは目を覚ます。
「俺は……」
「レン!」
マキが彼に駆け寄ろうとするが、レンは動けない。
彼は静かに自分の手を見つめ、魔物から人間に戻っていることに驚いていた。
レンは、闇から解放されたためだろう
「……俺がやったことは、許されることじゃない」
過去を悔いて、これまでの罪を思い出した。
「いっそ殺してくれれば、良かったのに…」
「殺してしまっては、私たちが罪を背負うことになる。
恨みや憎しみから、あなたを殺せば、あなたと同じことをしたことになるからよ」
マキは、複雑な表情でレンに答えた。
「俺は……俺は、取り返しのつかないことを……」
「だからって、このまま後悔だけして生きるの?」
エメダは、真っ直ぐに言った。
「昔、わたしたちを救ってくれたじゃない。だから、私はあなたを救いたいと思ったの。あなたが仲間になってくれるなら心強いわ。」
マキの言葉に、一同が息をのむ。
「仲間に…!」
「私たちはあなたを救った。レンも昔私たちを救ってくれた。ただ、それだけじゃない。
人は過ちを起こすもの。あなたはここで終わる人じゃない。
贖罪の方法、イコール死ぬことではないわ。共に未来をき築き罪を償うことよ」
レンは目を閉じ、そして、静かに息を吐いた。
長い間人のやさしさに触れてこなかったせいなのか、目にはうっすら涙を浮かべていた。
「……お前たちは、甘いな。もっと早くこんな奴らと会えていればよかった。」
だが、彼の口元には、わずかな微笑みが浮かんでいた。
レンから魔力を吸収して得た魔石には、「魔鱗」と読めた。
(魔鱗ってなんだ?…)
次回の投稿は、7月11日を予定しております。




