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暴かれた過去~そして~ 4

 エルンストは以前ゲオルグから聞いた話を思い出していた。


 そうだ確か、陛下は大陸一美しいと言われたシュタインベルグの姫に求婚し、断られていたことがあった。

 それがフィーアだと言うのか!?


「ところでお父上は息災かな?」

「風の噂で私が奴隷になったことをご存じならば、父がどうなったかもご存じのはず」

「ははは、そうであったな。そなたの父は死んだのであったな。フォーゲルザンクの兵によって殺されたのだったな」


 どこまでも嫌な男だ。エルンストは思う。


 シュタインベルグとフォーゲルザンクは国境を接している。両国は同盟を結び互いの国境を侵すことなく平和だったはずだ。

 それが数か月前、突然フォーゲルザンクがシュタインベルグに攻め入ったのだ。

 虚を突かれたシュタインベルグの国王、王妃はその場で殺され、王女だけ行方不明とされていた。


 この件に関しては、エルンストも部下から報告を受けて知っていた。


 その王女が今、目の前にいる。


「そなたの父上は領民にとっては良い王であったが、いささか人が良すぎたのではないか?いくら平和条約を結んでいても、まだ戦乱の世が完全に終わってはいなのに、油断したな」


 カラカラと笑うゲオルグをフィーアは鋭い瞳で見つめていた。


「父は油断などしていませんでした。けれど、フォーゲルザンクはこのカールリンゲンと並ぶほどの大国。虚を突かれてはどうしようも無かった。まさかフォーゲルザンクが裏切るなんて」


 大陸がまだ戦乱の世であった頃。

 カールリンゲン帝国はシュタインベルグを除く、フォーゲルザンク王国、ブラウンシュバイク公国と戦闘状態にあった。

 そして小国シュタインベルグは中立状態にあった。

 最初にブラウンシュバイクとの戦闘に勝利し、その勢いでフォーゲルザンクにも勝利したのだった。

 

 ブラウンシュバイクに関しては自治を認め、現在も大公が治めている。だがフォーゲルザンクはそうではなかった。この戦でゲオルグは弟を亡くし、その遺恨からフォーゲルザンクの王政を認めず、全権を手元に置いたのだった。


 カールリンゲンの属国であるフォーゲルザンクがどうしてシュタインベルグに攻め入ったのか、エルンストは不思議だった。

 何故ならば属国である以上、自由に兵を動かせないからだ。


 まさか――。

 陛下の指示で、シュタインベルグに攻め込んだのか!?


 あり得ないことではない。いやそれしか考えられない。

 つまり、フィーアに求婚を断られ、その報復として――。


 エルンストは唖然とするしか無かった。

 国をあずかる人間のすることではない。

 自らの手を汚さず、相手を倒す。戦略として優れているが、その動機はあまりにも幼稚すぎる。


 フィーアは奴隷となり知りえないだろうが、その後のシュタインベルグは俺が統治を預かっている。辺境の視察もそのためだった。

 

 何という運命の巡り合わせなのだ。


 しかし、国を滅ぼした原因が自分にあったなどと知ったら。

 それこそフィーアは生きてはいまい。


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