表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/86

虚飾の城 4

 翌日に許可が下り、エルンストは皇帝の執務室にいた。

 皇帝への挨拶を済ませると、すかさず本題に入った


「陛下、恐れながら人払いをお願いしたいのですが」

「はて?お前から人払いとは珍しいな」


 ゲオルグが片手をあげると、傍らに控えていた側近が席を外す。


「さて、余に人払いをさせてどんな話をするつもりだ」

「陛下におかれましては、最近側室を迎えられたとか?」


 ここでいきなりゾフィーの話題を出すと、ゲオルグは拒否反応を示すだろう。

 エルンストは外堀から埋めていくことにした。


「お前の耳にも入ったか。ゲルフェルトの娘グレーテだ。グレーテはそれは気の利く出来た娘だ。しかも若くて美しい」


 大して歳差もないゾフィーも十分若いのだが。エルンストは眉根を寄せる。


「既に陛下の御子を身籠られているとか。誠におめでたく存じます」

「うむ」


 満足気に頷くゲオルグ。


「お世継ぎのご誕生はいつのご予定ですか?」

「薬師によると、冬の終わりか春の頭だそうだ」


 嬉しそうな顔をする。

 それを聞いたエルンストはとっさに計算する。やはり出産日に狂いはなさそうだった。

 ゾフィーと出産月が重なる。

 

 女狐のことだ、薬草を用いて出産を早める可能性もある。

 とにかく情報を集めるしかない。エルンストは思案する。


「そうだエルンスト」

 

 何かを思い立ったように、ゲオルグは椅子から身を乗り出した。


「ランドルフ・フォン・ベッヘムの身柄を拘束しようと思うのだ」

 

 突然のことにエルンストはいささか驚く。

 ベッヘム伯爵は文官として若く有能な人物だ。エルンストは何度か酒を酌み交わしたことがある。

 罪を犯す人物とは思えない。


「ベッヘム伯をでございますか?その罪状は?」

「何でもいい、適当に考えてくれ」

「は!?」


 バツの悪そうなゲオルグの表情を、エルンストは見逃さなかった。


「つまりだな、グレーテが奴を処断して欲しいと言うのだ」


 エルンストは耳を疑った。


「余の愛しいグレーテがベッヘムを見るだけで嫌悪感を抱くから、出来れば殺して欲しいと言うのだ」


 正気か?

 無実の人間を殺せと言うのか?

 若く有能な人材を失うと言うのに。


 エルンストはまじまじと皇帝の顔を眺めた。

 側室の甘言で、こともなげに人の命を奪える人間になってしまったのか。

 しかし皇帝の命令は絶対だ。専制君主制である以上、臣下はそれに従うしかない。

 どんなに理不尽で納得がいかなくとも。


「すぐにベッヘムを拘禁してくれ」


「はっ」


 敬礼すると執務室から退出し、自分の執務室へと戻ったのだった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ