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それは静かな夏の夜 5
「行きましょうフィーア」
ヘレナと肩を並べて歩いていた。
「あなたがこのお屋敷に来てから、ご主人様は変わったわ」
それはフィーアにとって意外なものだった。
「私が来てからですか?」
「ええ、そうよ」
ヘレナはフィーアを優しい瞳で見つめると、にっこりと笑う。
「以前のご主人様は、今よりずっと愛想がなくて怖かったの。口数も少なかったわ」
今でも充分愛想はないと思うのだけれど。
「ふふ、嘘みたいでしょ。みんなご主人様を怖がっていたのよ。ルイーザなんて、屋敷に入りたての頃なんて出仕を拒んだのよ。あなたが来て、本当に良かった。みんなも明るくなったし」
ヘレナの声が優しかったから、フィーアは泣いてしまった。
この屋敷に来てからと言うもの、使用人のみんなは優しいし、私を侍女としてここに置いてもらえたきっかけは、ヘレナのおかげだとルイーザから聞いていた。
「ありがとうござます、ヘレナさん。最高の賛辞です。自分の存在を認められたみたいで嬉しい」
「一番あなたに感謝しているのは、コンラートじゃないかしら」
「コンラートさんが?」
「そう。口には出さないけどね」
何故?
その理由をヘレナに聞いても、教えてくれなかった。




