9.コンビニの仕事は無いそうです
お風呂から出た私は、食卓に呼ばれた。
マノアさんの料理はとても美味しくて、とてもホッとさせられる、優しい味だった。
夕飯も終わり、片付けを手伝っていた私は、ヌェイリブさんに呼ばれてリビングへと向かった。
対面のソファーに座った私に、ヌェイリブさんは質問をして来た。
「歳は?」
「十八歳です」
「なんだ、成人しているのか。少し若い感じがしていたから、未成年かと思っていたのだが……。まあ、それなら働いた事はあるな。何が出来る」
「えっ?」
十八歳で成人していると言われたのは、少し驚きだった。
日本にいた時は学生だったので、働いた事なんて殆ど無いし、異世界の仕事はどんな物があるのか分からない。
取り敢えず、高校の時のバイトを口に出してみた。
「コンビニで……品出しとか、レジ打ちとかなら……」
「はあ?なんだ、それは」
やっぱりコンビニのバイトは、異世界には無い様です。
(他に仕事なんてした事ないし、どうしよう……)
戸惑う私に、ヌェイリブさんは少し苛立ち気味に尋ねた。
「俺が聞いているのは、能力の話だ。魔法はどの辺が使える。魔力値は高い方なのか?」
「魔法……」
異世界では、やっぱり魔法が使える様だ。
そんな事を聞いてしまったら、ちょっと期待してしまう。
聖女の私は、どれ程までの力を有しているのだろうか。
ってか、魔法ってどうやって使うの?
えっ?私って使えるんだよね?
さっぱり分かりませんと言う顔をすると、ヌェイリブさんが呆れ顔を見せた。
「なんだ。自分の能力の事すら知らないのか」
「はい……」
「分かった。兎に角、これからはキチンと仕事をしていって貰わなければならない。一から教えてやるから、きちんと覚えるように!いいな」
「はい。よろしくお願いします」
この日から、ヌェイリブさんのスパルタ教育が始まった。
能力判定で出た私の適正職業は、主に回復系の治癒師だった。
それはどんな仕事なのかと聞いたら、割と大雑把な括りらしくて、治癒師の仕事と言うのは、幅開く存在しているらしい。
取り敢えず、この街で人手不足と言われている、薬剤調合調剤師と言う職業を目指して修行する事が決まった。
様々な薬の精製をする人の事らしい。
仕事を覚えたら、あとは自分で薬を作って販売所にその薬を卸す。
その売り上げが生活費になる。
簡単に言えば、こんな感じの職業だった。
ヌェイリブさんと一緒に、街にある調合を生業としている方のお店に出かけて行き、お部屋をお借りして、調合の仕方を教えて貰った。
私は紙を束ねただけのノートに調合の仕方を書き留めながら、一生懸命やり方を覚えて行く。
そして家に帰ったら、魔力の使い方のレッスンだ。
全部を覚えるのは無理な為、取り敢えず薬の精製に必要な魔法だけを取得していった。
私はとても凄い聖女の力を発揮して、皆んなを驚かせた……などと言う華々しいデビューは無かった。
なんでこんな魔法も出来ないんだ?
今までどうやって生きて来たんだ!
ヌェイリブさんの口からは、この言葉しか出てこない。
城から追い出される時、異世界から来たと言う事は、他言無用と言われているので、なんとか誤魔化しながら魔法を教えて貰っている。
一生懸命、頑張ったお陰で、薬の生成に使う魔法だけは、なんとか一通り全部使える様になった。
今日は夜にもう一本更新します。
少し話の展開が、ゆっくり過ぎるので……。
話を細かく切りすぎたみたいです。
すみません