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27.砦内が悲しみに包まれる日

 ロッチアに壁の上に連れて行って貰ってから、二週間が経った。


 初めて繋いだ男の人の手の温もり。

 あの時ロッチアと一緒に歩いた事を思い出すと、未だにドキドキしまう。


 あれからロッチアとはタイミングが上手く合わなくて、全然会えていない。

 こういう時、日本だったらスマホを使って連絡が取れるのに……と、少し残念に思える。


 今日は調合の日なので、朝から調合を頑張って終わらせた。

 鑑定をして貰おうと家を出た私は、街の人達のいつもとは違う空気を、直ぐに感じ取った。


 今日は砦の漆黒の門が、全開に開かれている。


(ああ……。またあれがあるんだ)


 私は沢山の人達と一緒に、門から真っ直ぐに伸びる大きな道の沿道に立った。


 上級層と中級層と下級層。

 上の方から順々に、数人の人に持ち抱えられた黒い棺が道を下って来る。


 これは、一ヶ月に一度行われる合同葬儀だ。

 この一ヶ月間に亡くなった人達が、門の外へと運ばれていく。


 この砦では、遺体は魔力を使って冷凍保存をし、ひと月ごとに纏めて外に掘った大きな穴の中で焼却するというのが一般的なのだそうだ。


 邪紋の広がりを警戒して、土葬は禁止。

 焼却後は土をかけて埋めなければならず、掘り起こしたり骨を持ち帰るのは禁止行為となっている。


 今日の棺の数は、大小合わせて六十八個。

 先月よりも少し多かった。


 棺の横には、白い花を持った関係者達が寄り添いながら歩いて行く。

 深い悲しみに包まれた沿道で、私は手を合わせながら棺の流れを見送った。



◇◆◇



 なんだかとても悲しい気持ちになってしまった私は、人恋しくなってしまった。


 今日の予定を早めに終わらせると、マノアさんに会いに行った。

 急に行った私を、マノアさんは笑顔で出迎えてくれた。


「あら、サナ。週末以外で家に来るだなんて、珍しいのね」


「うん。たまには良いかなって……。でも、今日は早く帰らないと、馬車が無くなっちゃうみたいで……」


「そうなのね……」


 マノアさんはなんとなく、私が今日来た理由が分かっている様だった。

 それ以上は何も聞かれなかったので、ちょっとホッとした。


「そうだわ!帰りがけに、ヌェイリブとロッチアに、お夜食のお弁当を届けて来てくれないかしら」


「うん、行く!私が渡して来る」


 私は、思いっきり元気いっぱいな返事を返した。

 ロッチアに直接会いに行くのは少し気恥ずかしくて行けなかった。

 だけど、こうやって用事があるのなら、普通に会いに行けそうだからだ。


 私はマノアさんから二人分のお弁当を受け取ると、ルンルンとした足取りでお城を目指した。


 城内に入った私は、ふと時計を見た。

 あと十五分で城の門が閉まる時刻で、ロッチアはまだ警備の仕事をしている時間だ。

 それならばと、先にヌェイリブさんの所にお弁当を届ける事にした。


 執務室に行くと、ヌェイリブさんは書き物をしていた。


「ヌェイリブさん」


「ん?おお、サナ!今日は、どうした?」


「あのね。お弁当を届けに来たの」


「ああ!マノアか。それはすまなかったな」


 お弁当を手渡すと、ヌェイリブさんの顔が少し緩みを見せた。


「愛妻弁当、嬉しい?」


「……まあ、そうだな」


 ヌェイリブさんは、ちょっと照れながら答えてくれた。

 二人は結婚して二十年らしい。

 それなのに、今でもラブラブなままだ。

 ちょっと羨ましい……とか思ってしまう。


 二人のラブラブぶりにあてられた私は、もう一つのお弁当に視線を移した。


(私が作りたかったな……)


 時間的に無理だった事は分かっているけれど、それでもロッチアの分のお弁当は私が作りたかった。


(この間のお礼に、今度私が作るねって、約束してから帰ろっと)


 私はロッチアに久しぶりに会えると、ウキウキしながら執務室を出た。



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