21.訪問販売始めました
水曜日の昼過ぎ。
今日も広場での販売を済ませた私は、家に帰ると荷車から荷物を下ろした。
そして、家の中で百本の回復薬を箱へと入れた私は、今度はそれを台車に乗せて歩き出す。
そして、移動馬車に乗ると上級層へと向かっていく。
下級層から上級層までの一本道をゆったりとした移動馬車で進むと、上りで一時間ちょっと、下りで三十分程かかる。
停留所に着き、馬車から降りると、私は黒の城へと向かって台車を押しながら歩いて行った。
ロッチアから預かっていた、入城許可証を見せて中へと入って行く。
第一騎士団の練習場の場所を教えて貰い、そちらの方へと歩いて行った。
私が到着すると、ロッチアが直ぐに駆け付けて来てくれた。
「おっ!来たな」
「うん!でも……ここで売って本当にいいの?」
「別に構わないさ。給料日前で金欠な奴らばかりだ。逆に助かるさ」
そう。私は今日、ここに薬を売りに来たのだ。
騎士の皆さんは、割と裕福な人が多い。
しかし、そうでない人も沢山いる。
給料日前になると、薬を買うのにも、ひと苦労するのだとか。
広場での販売は、まあまあ順調にいっているが、Aランクの薬は、切れるまでの期間が長いので、繁盛とまではいかない売れ行きだった。
在庫が溜まり始めて来ているが、消費期限は無いし、売れる時は売れるので作るペースは変えていない。
とは言え、あまりにも売れないと困ってしまう訳で……。
そこでロッチアが、再び案を出してくれたのだ。
私は休憩に入った騎士の皆さんの横を、台車を押しながら歩いて行った。
「回復薬は、如何ですか?味は美味しくありませんが、効能だけは鑑定士さんのお墨付きです!」
不思議そうに私を見ていた騎士の人達は、私のすぐ横に立つロッチアの姿を見て、歩み寄って来た。
「美味しくないってのは、どう言う意味なんだ?」
「ハッキリ言って不味い!」
ロッチアは、キッパリと断言した。
ビックリした私は、ロッチアの顔を見た。
「そんなに、ハッキリ言わなくてもいいじゃない……。あまり美味しくない……位に言ってよ」
「俺は嘘はつかないんだよ」
「嘘をついて欲しい訳じゃなくて、もっと柔らかく言って欲しいの!」
プウッと頬を膨らませて抗議すると、集まって来ていた騎士達が一斉に笑い出した。
「なんだ。ロッチアの彼女か?」
「違う!」
「薬を売りに来るから買ってやってくれ、なんて頼んでくるから、何事かと思ったら、そう言うことかよ」
「だから、違うって!」
揶揄われたロッチアは、不機嫌そうにそっぽを向いてしまった。
揶揄われたりするのがとても嫌いなタイプなのに、私の為に仲間の人達に宣伝してくれていたらしい。
そんなロッチアの優しさを無駄には出来ない。
私は集まって来た騎士の人達へと視線を移した。
「あの!味は美味しくありませんが、効能はAランクです!価格も千ニ百リェンです。如何ですか?」
「そうだな。一本貰おう」
「俺も、一本」
「はい!ありがとうございます!」
私が薬を手渡すと、騎士の人は蓋を開けて一気に飲み干した。
「ウガッ!これは確かに、ちょっと不味いな……」
「不味いけど、効能は嘘じゃないな」
「だろ?俺は嘘は言わない!」
自信満々なロッチアを見て笑っていた金欠の騎士達は、その後次々と薬を買い求めて来てくれた。




