19.路上販売してみます
朝早くから荷車へと回復薬を積み込んでいたサナは、ロッチアの姿を見て笑顔を見せた。
「はよ、サナ」
「おはよう、ロッチア。仕事休んで、本当に大丈夫だった?ごめんね」
「別に平気だって。さて、今日はガンガン売るぞ!」
「うん!」
サナとロッチアは荷車を引きながら、徒歩二十分の所にある広場に向かって歩いて行った。
広場では沢山の露店が用意を始めていた。
ロッチアは、許可が降りた場所へとサナを案内して行く。
「あっ!ここだ。この場所がサナの場所だぞ」
ロッチアに案内された場所は、少し人の流れから外れた場所ではあるが、明るい場所だった。
まあまあ人気のある場所だが、露天を開くには小さ過ぎる場所の為、空いていたのだとか。
後ろへの縦長な土地で、道路に面している部分は二メートル位で、縦は五メートル位。
分かりやすく言うと、駐車場の車が一台停められるスペースよりも少し小さい位だ。
サナのお店は、小さな荷車だけなので、此処でも少し余裕がある。
この場所の所有者は勿論お城なので、場所の使用料は、毎月管理事務所に納めなければならない。
あまり広さがないので、サナが解約するまでは、毎月二万円払えば、継続してこの場所が使えるらしい。
今回はお餞別として、ロッチアがニヶ月分を払ってくれたらしい。
返すと言ったが、そんな事を気にするよりも売る事に気を使え!と怒られた。
でも確かにその通りだと思う。
お金が貯まって来たら、絶対に返そうと心に誓い、サナは開店の準備に取り掛かった。
準備と言っても、荷車で持って来た看板を、お客さんに見えるように設置して、小さな机に、何本かの回復薬を並べて置くだけ。
あとは気力が続く限り、呼び込みをするのみだ。
「いらっしゃいませ!回復薬は、いりませんか?」
大きな声で宣伝していると、チラチラと歩いている人達がこちらを見始めた。
看板を読んでいた彼らは、不思議そうな顔をする。
そのうちの一人の男性が、歩み寄って来た。
「不味いって、どういうこと?」
「効能は鑑定士さんのお墨付きです。でも、味が美味しくないんです」
「美味しくない……?」
「はい。そうなんです」
そんなサナの後ろから、ロッチアが助け舟を出した。
「俺も飲んだけど、効能は間違いなく回復薬だったぜ。でも、飲めない程じゃないけど、味は不味かった。だから価格が安いんだよ」
「へぇ……。って、Aランクが千ニ百リェン?本当かよ」
「ああ!お買い得だろ?」
「うーん、そうだけど……。俺は昨日、Bランクを飲んだばかりだからな。買っても試せるのは一週間後なんだよな……」
あまりの安さと胡散臭さから、男性は買わない方を選んだらしく、お店から離れていった。
千ニ百リェンとなると、販売所の一般的なAランクの正規回復薬の販売価格より六百〜七百リェンも安い。
怪しく思っても無理はないのかもしれない。
みんな気にはなるものの、偽物なんじゃないかと疑って買っていってはくれなかった。
それでもサナは諦めずに、声を出してお客さんを呼び込み続けた。




