表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/154

24杯目 アパートから出て分かったみんなの自分への思い、それとお肉への思い

ハチャメチャなティーナと初めて飲んでから、もう1か月が経った。

いろんなところへ行くというわりには、あれから3回くらい飲みに来ているね。


そして、とうとうアパートを引き払ったよ。


日本からは何でも問題なく自分の部屋までは持ち込むことができた。

飲み部屋へは、まだまだ持っていけるものが少ないんだけどね。

でも自分の部屋にさえ持ち込めれば、アパートが無くても大丈夫。

これからはこの空間を完全に自分の家として生活していくよ。


てなわけで今夜はお祝い。

ティーナを除いたいつものメンバーで飲んでるよ。


「おめでたいのにゃー。今夜は飲むしかないのにゃー」


毎日飲んでるけどね。


「本当にめでたいでござる。拙者も嬉しいでござるよ」


自分にとっては大きなことなんだけどね。

でもみんなにしてみたら何も変わらないよね。こっちの世界に来られるわけじゃないし。

それなのにお祝いしてくれて自分も嬉しいよ。


「別にタクノミのお祝いだけじゃないわよ。みんな嬉しいのよ」


えー?何かアパートのことで迷惑かけてたりした?ごめんね。


『そういうことじゃないですよー。タクノミさんはにぶちんですよー』


いやー。鈍いとかそういうことじゃないでしょ。

アパートから出ることでまたこの空間の自分の家がレベルアップしたりするのかな。


誰も同意しないや。間違ってるみたいだね。

うーん。わからないな。とりあえず今日のメインのつまみを持ってこよう。


「なんなのにゃー!肉が美味しすぎるのにゃあああ!!!」

「肉に濃い味をつけてるのに、その味に負けない肉の美味さが伝わってくるでござる」

「この甘さは味付けだけじゃないわね。肉も甘いわ。でもこれはお菓子とは違って美味しい料理と認識できる甘さだわ。とんでもない肉よ、これは」


さすがグリンナ。良くわかってるね。

今日はすき焼き。しかも黒毛和牛だよ。お高いよ!!!

スーパーで100グラム1000円の肉って売ってるんだね。

こんな価格の肉を値引きシール無しで買ったのは初めてかもしれない。手が震えたよ。

しかも1人200グラムにしたから5人で1キロ。牛肉だけで1万円だよ。1日の神様ペイの入金額を超えちゃったよ。


お祝いだからね。でもやっぱり買うときには勇気が必要だった。

値段相応の価値があるものは高いとは言いたくないんだけど、やっぱり高いと思っちゃったよ。

だからお高い。価値があるのはわかるんだけど、自分のお財布事情を考えるとその価値を求めちゃいけないような値段って意味を込めて、お高いと言うことにしたよ。お高い。ご立派。

でも今日はお祝いだからね。結局は奮発しちゃった。


味付けは市販のすき焼きのタレ。

変に自分で料理するなんて、高級牛肉様に対しておこがましい。

まだまだ自分の料理の腕前じゃ、市販の完成された調味料に頼るのが良いのさ。

マルマルコロリンに負ける戦闘力と同じくらいだからね。


だから市販のすき焼きのタレを鍋に入れて沸騰させたらぐらぐらしないように火を調整してから牛肉を入れて、3分くらい火を通したものを出したの。

3分は長すぎって思ったでしょ。もったいないって思ったでしょ。

これは出汁に使ったような感じなんだよね。


すき焼きのタレだけだと、本当にタレの味だけでしょ。

牛肉が合わさることで、猛烈に美味しい味になるじゃない。

だから、すき焼きのタレを入れた鍋に牛肉を100グラムだけ入れて火にかけたの。

そうしたら、牛肉のエキスが溶け込んだ美味しいすき焼きのタレになるでしょ。

普段ならスーパーに置いてある牛脂を入れてタレを美味しくさせるんだけどね。

せっかくお高いご立派な牛肉を買ったんだから、味付けもご立派さんを使おうと思ってさ。


そのタレに豆腐を入れて火を入れる。

中まであったまったら火を止めて2時間くらい放置。

そうすると豆腐の中に味が染みてくよ。

おでんみたいな薄味だったらもっと長い時間放置したほうが良いけど、すき焼きみたいな味の濃いものならこれくらいでも大丈夫。

何もしてないすき焼きのタレに豆腐を入れるのとはまるで違うよ。


それでさっきみんなにつまみとして出したのは、2時間放置した鍋に入ったタレと豆腐を温め直してから、3分くらい火を通していた牛肉取っておいて改めて入れて温め直したやつだったんだ。

だから火が通りすぎてるし、ちゃんと料理したやつに比べれば美味しさは減ってると思うけど、それでも黒毛和牛さんは美味しいみたい。


じゃあなんでこんな作り方をしたのか。

まだ飲み部屋にカセットコンロを持って行けないんだよね。

自分の部屋で料理したのを取り分けて持って行くしかないんだ。


すき焼きは肉を少しずつ入れて食べて入れて食べてを繰り返すから肉の味が出て他の具も美味しくなるでしょ。

でも今はそうやって少しずつ美味しさを育てていくのが難しいんだよね。ずっと鍋を見ているわけにもいかないし。


だから最初に肉の味が染み込んだタレと豆腐を作ったんだ。

あとは食べたいときにネギを入れて火が通ったら牛肉を投入すれば良いだけ。

残ってるうちの3分の1くらいの量の牛肉を入れて、火が通りすぎない程度で器によそって次のが完成だよ。


「なんてことにゃー!さっきのよりとんでもなく美味しくなってるのにゃー!」

「劇的でござる。さっきので美味しいと言っていた自分が愚かだったと伝えたいでござる」

「この肉はなんなの。味の存在感が凄いのに物質としての存在感ははかなく消えていくわ。それとこの豆腐。美味しさが染み込みまくりよ。そしてネギのアクセントも最高じゃない」


そうでしょうそうでしょう。お次の3分の1の牛肉はもっと汁の味が濃くなってるから生卵一緒に持っていくよ。


ゴロンニャの座布団と一緒にゴロゴロするやつ。リンコのジタバタダンス。進化しすぎでしょ。

そこって壁だよね。床だけじゃなくて壁を使ってゴロゴロジタバタ。どうなってるの?

グリンナまでそこに入りたそうにうずうずしているように見える。まさかグリンナまで何かやりだすの?


こんな感じでお祝い用に用意した高級な牛肉は好評だったようで良かったよ。

残りの3分の1は最後の締めに。


そんな感じで飲んでたけど、結局なんでみんなも喜んでるのかわからなかったな。自分のことを一緒に喜んでくれてるんだろうな。


「だから違うのにゃー」

「そうでござるよ。タクノミ殿は大変な思いをしているかもしれないでござるが、拙者たちはそれを喜んでしまっているのでござるよ」


うーん。やっぱり良く分からないなあ。


『タクノミさんはにぶちんさんー』


サクラミまで乗ってきた。なんだかなあ。


「タクノミには悪いと思ってるわ。でも少し安心できてしまうのよ」


本当にわからないよ。誰か教えてよ。と思ったらグリンナが自分にくっついてきた。

頭の方に手を伸ばそうとしてるからなでなでされるのかなと思ったけど手を引っ込めた。またなでそうになっては手を引っ込める。

もしかして、ふにゃふにゃ感謝モードになるのをこらえているのかな。


「そんなこと無いって信じてたわ。信じてたけど少しだけ不安だったのよ。もしかしたらタクノミはそっちの世界に行ったままいつか戻ってこなくなるんじゃないかって。でもちゃんとここを自分の家だと言ってくれて、それまでの住んでる場所も生活もすべてなくしてここにちゃんと住んでくれるようになったのよ。こんなに・・・こんなに・・・・・・ありがとうねありがとうねありがとうね」


ああ最後にふにゃふにゃ感謝モードになっちゃったね。

というか、そういう風に思ってたんだ。

自分としてはやめるとかそういうことは全く考えてなかったんだけどね。

でもそんな感じで心配されてたんだね。ちょっとびっくり。

もうこの空間は自分の家だと思ってたけど、改めて自覚したよ。


そのうちゴロンニャもリンコも寄りそってきてくれて。

こんな感じでお酒を飲めるなんて、ここは天国か!

でも残りの牛肉があるって言った途端に3人がサッと自分から離れたんだよね。

そうだよね。肉のほうが大事だよね。美味しいもんね。持ってきますよ。


てなわけで最後は牛丼を作ったよ。

せっかくの美味しいタレ。最後はご飯に染みさせていただいちゃいました。

いつも美味しそうに食べてくれるけど、今日は特に美味しそうに食べてたな。

やっぱり黒毛和牛は特別だよね。

毎日でも食べたいって言われたけどお値段がね。また特別な日にね。


そんな感じで贅沢な牛肉に満足していたらサクラミから凄いお知らせがあったんだ。


『ぱんぱかぱーん。レベルアップですよー。ゴロンニャさんたちの扉が持ち運べるようになりましたよー』


ここから異世界にもっともっと深く関わっていくことになったんだよね。



評価、ブックマーク、感想、レビューなんでもすべて嬉しいです。

めちゃめちゃめちゃめちゃ嬉しいです。


読んでいただけるだけでうれしょんするほど喜びますが、反応していただけるのは最大のご褒美です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ