第四章 婚約者ができました~!?4(終)
~謁見の間扉前~
扉の前には、国王の護衛をよくしている騎士二人がいた。
『やぁ、いつもご苦労様!
父上から来るように言われてるんだけど入っても大丈夫かな?』
「はっ!勿論でございます。」
騎士二人が頭を下げ、扉を開けてくれる。
ジェイルが外にいないのを見ると中にいるようだ。何故か国王は、ジェイルをとても信頼している。
僕からしたらただの変態なんだけどなぁ~。
「カイル様が来られたようですよ?」
案の定、ジェイルは国王の座ってる玉座の近くにいる。
「うむ、そのようだな。」
そして国王とジェイルの前には、三組の親子がいた。
あちゃ~、やっぱり嫌な予感的中…そしてこれから国王の話す内容が手に取るように分かった。
「カイル、こちらに来なさい。」
『はい。』
僕は、足取りは先程と違い重くなりゆっくりと父上の近くにいく。
「ここにいる者は、お前に紹介しようと思って呼んだ。
本当は、八歳になる前に会わせたかったのだが、三人揃っての方がいいと思ってな…。」
『ええっと?』
勿論、会わせたいと言うのは、僕の婚約者になる人…しかし何故か三人いる。
二人は、分かる…ルーベンス公爵の娘ルベルナ、ブロッサム公爵の娘リリィだ。
もう一人の女の子は、見たことがなかったが、近くでにこにこしている男を見てなんとなく予想ができた。
金色の髪に真紅の瞳…彼も大三家の一人、ヴァイセル公爵だ。おそらくもう一人の女の子は、ヴァイセル公爵の娘の"マリアンヌ・ヴァイセル"。
彼女も、リリィと同じで、理由は不明だが公の場で見たことがなかった。
マリアンヌは、ヴァイセル公爵の後ろに隠れており、何故かビクビクしていた。歳は同じで瞳は父親譲りの真紅色で髪はこの世界では、珍しい漆黒の髪をしていた。
「お前も、分かっているだろうが、この者達はクロウド国を支えてる大三家だ。」
『はい、存じております。
ルーベンス公爵家にブロッサム公爵家、そしてヴァイセル公爵家ですよね。』
「ふむ、流石は我が息子よ…」
いや、父上よ…ここで親バカ出さないで下さいよ。
『それでどうしてその大三家の人達と僕を会わせたんですか?』
あえて、知らない振りをした。
その時、ふふと笑ったのを見逃してないからね?ジェイル?
「うむ、この中からお前の婚約者を選ぼうと思ってな…もし、カイル王子が望むなら三人でも良いがな。」
いやいや、大三家の娘を三人も婚約者にしたらそれこそ権力争いに参戦したと思われるじゃないですか!?
この五年間が水の泡ですから!
『むむ…』
どうしたものか…考えますと言って先送りしたい所だけど…。婚約者一人はいないと色んな人を紹介されそうだし。
僕は三人の女の子達を見る。
ルベルナ嬢は自分が選ばれて当然のような顔をしているし、リリィ嬢はにこにこと愛想笑いを浮かべている。
マリアンヌ嬢は未だにビクビクしていてこっちが心配になった。
まぁ、もし選ぶならと心の中で決めていた。
『国王様、僕はまだ未熟者で三人を一度に愛せるとは思えません。なのでこの中で一人選んでもよろしいですか?』
「そうか…ならお前は誰を選ぶ?」
国王は、面白そうににやにや笑っている。その近くにいるジェイルも同じく嫌な笑みを浮かべていてカイルは苛立ちを感じたが、にっこりと笑い我慢して彼女の前に立って片足をついた。
「へ…?」
彼女は、エメラルドグリーンの瞳を大きく開いて驚いていた。
やはり、自分が選ばれると思っていなかったのだろう。
『リリィ嬢、先程の貴女の令嬢らしい振る舞いに感銘をを受けました。
どうか、僕の婚約者になって頂けませんか?』
「えっ、えっ!?なんで我輩!?」
………ん?わがはい?
『リリィ嬢…?』
「あ、申し訳ありません。ちょっと驚きのあまり噛んでしまいましたわ…。」
おほほと誤魔化しているリリィ嬢の後ろでは、ブロッサム公爵が"やってしまったか"みたいな顔をしていたので彼女の素が出てしまったのかもしれない。あまり触れないでおこう。
『そうですか…。それでリリィ嬢の答えは?』
「勿論、慎んでお受けいたしますわ。」
まぁ、王族からの申し出なので断れないし断る理由もないだろう。
「カイル様、発言よろしいですか?」
後ろにいた、ブロッサム公爵が神妙な面持ちでそう言ってきたので…
『はい、どうぞ。』
とにっこり笑う。
「ありがとうございます。
失礼の上で言わせて貰いますがうちの娘はあまり…その…王族の妃に向かないかと…。」
さっきの少し見せたリリィの素が原因なのかブロッサム公爵の中のリリィの評価は低いらしい。
『はい、その事は大丈夫ですよ。僕も未熟者なのでそこはリリィ嬢と支え合うつもりです。』
「え?…いや、まぁ…カイル様がよろしいのであればよろしくお願いします。」
どうやら、ブロッサム公爵は諦めたようで軽く頭を下げ一歩下がった。
チラッと横を見るとルーベンス公爵は相変わらずにこにことしていた、が、背後に何か黒いものが見えた。
ルベルナ嬢にいたっては、リリィ嬢をキッと睨み付けていた。でも流石に国王の前なので何も言ってこなかった。
『父上もよろしいですよね?』
自分で選べと言ったのだから異論は認めませんよと言う意味でニコッと笑っておいた。
「あぁ、勿論だ。
お前が選んだのだからな。
それでは、解散だ。だが、ブロッサム公爵は、後で私の部屋へ来るように。」
「はい!かしこまりました。」
国王は、それだけ聞いてさっさと行ってしまった。
いや、放置するなよ!と思ったが、カイルもさっさと退散しようと思い辺りを見るとリリィ嬢だけが見えなかった。
「もぅ~カイル様ぁ?
どーして、ベルを選んでくれなかったのぉ~??」
可愛く頬を膨らませたルベルナ嬢が迫ってきた。
今更、ぶりっ子してもさっき睨み付けてた所、ちゃんと見てたからね!?
『いや、その…』
「カイル様、先程リリィ・ブロッサム様が裏庭に行くと言ってましたよ?」
どう逃げようかと思っていたらジェイルがそう言ってくれたので…。
『あぁ、そうなんだ!
ルベルナ嬢すみません、まだリリィ嬢と話したい事があるので失礼します!』
僕は半ば無理やり話を終わらせてその場を去った。
ルベルナ嬢が何か言いたそうにしてたけどスルーさせて貰った。謁見の間を出るときジェイルが軽くウィンクしてきたけど…
べ、別にかっこいいとか思ってないからね!
僕はツンデレを発動させてプイッとそっぽを向いてやった。まぁ、これもジェイルからしたらご褒美なんだろうけど。
こうして、カイル・ディ・クロウドにめでたく婚約者が出来たのだった。