第80.5話 魔女王コルネリア①
遠くから声が聞こえる。
─あなたは、コルネリア。
コルネリア?私の名前はリリィよ。なにを言っているの?
─魔女王コルネリア、それがあなたの前世。
前世?
─目覚めなさい、コルネリア。
「はっ!?」
リリィは飛び跳ねる様に目覚めた。
「ようやくお目覚めね。リリィ。今日は召喚師様がお越しになる日よ。早く支度なさい」
「…はぁい」
リリィは今年で15歳。
15歳になると、この国では召喚士の適性を確認され、適性を認められると国立の召喚士養成校に通うことになる。
今日は王国から召喚士が派遣され、召喚士の適性審査をする日だった。
異世界から、あらゆる生命を呼び寄せる術を使う召喚士。
小動物、魔法生物、異世界の兵器、そして…
異世界人。
召喚士に不可能は無い。神にも近いその能力。この世界においては、誰もが憧れる職業だ。
「私も召喚士になれるかなぁ」
リリィは朝食のパンを頬張りながら天井を見上げた。
すると、天井には美女の顔があった。天井をすり抜けているのか、なぜか顔だけが出ている。
「ぶっ!」リリィはパンを吹き出した。
「どうしたの!?」母親が驚く。
「天井に!」リリィが指した先には何もなく、いつも通りの天井。
「…早く食べなさい!」
ーーーーー
「今年の15歳はこれだけかね?」
召喚士が不満そうに見渡す。集会場に集まった15歳の子どもは五人。去年の半分だった。
「ええ…15年前はちょうど、経済が芳しくなく…」村長が手をこすりながら言い訳をした。
「…良いでしょう。では1人ずつ前へ」
四人が調べられ、全員適性無し。
「最後は君だな」
召喚士がリリィの頭に手を伸ばす。
「むっ…!?ぬぅ…これは…!」
「リリィに適性が!?」村長は興奮している。召喚士候補生を輩出した村には助成金が入るのだ。
「…いや、しかし、なんだこれは…むぅ…」
召喚士はリリィの頭に手を乗せながらしばらく悩み、手を離してからも何分も考え込んだ。そして。
「この娘は…とてつもなく強大な力を手に入れる事が出来る…出来るはずなのだが」
「何か、あるのでしょうか…?」村長が不安げに問う。
「どんな人間にでも、必ず備わっているはずの魔力が…カケラも無い…魔力が無ければ召喚術は一切使えないのだ」召喚士は渋い顔をした。
「そんな!どういうことですか!?」村長が召喚士に訴える。
「分からぬ…魂から魔力を根こそぎ抜き取られたとしか思えぬほど…まったくもって魔力が無いのだ」
─コルネリア。
「誰?」リリィは天井から聞こえる声に反応する。
「なんだリリィ?誰かいるのか?」村長は周囲を見渡す。どうやら他の者には聞こえない声らしい。
─コルネリア。もう、自覚しているはずよ。あなたの、前世を。
「…」
─目覚めなさい。そして、力を求めるのです。まずは、その男から…
「うぅ…あぁ…」リリィは頭を抱えてしゃがみこむ。
「どうした、君!」召喚士がリリィに近づく。
その瞬間、リリィの手が召喚士に伸び、顔を鷲掴みにする!
「な、何を…!?」
「…私はコルネリア…」リリィは召喚士の顔面を更に強く圧迫する。
召喚士は両腕で彼女の腕を振り解こうとするが、ビクともしない。
「コルネリアだと!?貴様…ラトルガルドのコルネリアか…!?なぜこの世界に!?」
「魔力を…よこしなさい…あなたの様な者に、魔力は要らないわ…」
「くっ…そんな!俺はこんな所で死ぬワケには!あのお方が…あがっ…ぐっ…」
召喚士は倒れた。
リリィの体に魔力が満ち、薄ぼんやりと光りはじめる。
「…ふぅ。苦労させてくれるじゃない。ナターシャちゃん」
リリィ…いや、コルネリアは首をコキコキと鳴らした。
驚き、恐れる周囲の人間達を無視して、コルネリアは悠々と集会場を後にしていった。
本編につづく




