第60話 ホワイト企業の闇②
清光商会。言わずと知れた大企業、キヨミツホールディングスの前身となる会社の社名を受け継ぐ子会社で、法人に対するオフィス用品の販売を主力とする総合商社だ。
俺たち関東圏第3営業課は、東京から少し離れた中小企業がメイン顧客で、大企業の大型新規案件を取り扱う第1営業課や、大企業の各種要望に応えるルート営業の第2営業課とは全く異なる仕事内容だ。
人員も他部署の30分の1。要するに窓際、閑職扱いだ。
「清光は殿様商売で、大企業しか相手にしない」という批判をかわすためだけに存在する部署。
そんな部署に自分達の仕事を取られたとあっては、第1営業課が嫌がらせをしてきても不思議は無い…
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「等々力、本当にあのアポが第1の連中の嫌がらせだったんなら、俺が言ってやるぞ」
ミーティング中。等々力が天衣社再訪について話したところ、作田が等々力に意見した。
「サクさん…確実ではないから、今回はやめておこう。ハレーションが起きるかもしれない」
「…仕方ないな」
ハレーション。本来は「影響を与える」という意味しかないのだが、ビジネスにおいては「多方面からの批判を受け悪影響が生じる」という意味になる。
「天衣社の話はここまでにしよう。栗田、国枝食品はどうした」
「はい!順調っス!オフィス内全取っ替えっスよ!しのぶさんのおっ…おかげっスね!」栗田は俺の胸に言った。
おまえ今おっぱいって言おうとしただろ。
「しのぶさんの格好、AV女優みたいでしたねぇ。ノリノリで男の人をいじめてましたぁ」田野島が俺を見ずに言う。
「いじめ…?」等々力が眉をひそめた。
「ビンタしてくれって言ったバカな客がいたんだよ。たしかにすごいボディコンだったが…」作田が古い言葉を使う。うーん。転移者がそんな言葉を使うかな…?
やはり怪しいのは田野島か…?
「…ともかく、今回は本当に東雲のおかげだな。恥ずかしい格好だったらしいが…セクハラ案件にするか?」等々力は栗田を見てニヤリと笑った。
「勘弁してください!」栗田は机に両手をついて頭を下げた。
「…どうだ東雲?」
「ちょうど金曜だし、一杯おごれば水に流しましょう」
「しのぶさん…マジで優しくなったっスね…」栗田は顔を上げて俺の胸に言った。
「まず胸に話しかけんのやめてくれない?」俺は栗田を睨む。
「あ、いや!誤解っス!でもしのぶさんとサシ飲みは歓迎っス!」
「…東雲、もっとおごってもらえ。あと襲われても問題だ。サクさんに付き添ってもらえ」
等々力は笑いながら言った。
「そうします」
「そんな…」
栗田はうなだれた。
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「で、なんでたのまりちゃんまでついてくるんだよ!」
居酒屋には俺と栗田の他に、作田と田野島がいた。
「だってぇ、しのぶさんが心配だしぃ」
心にもない事を…
「ま、お前は自分と東雲の分だけ出せや」作田は一杯目から日本酒を煽っている。
「それならいいっスけど…」
「でも成功して良かったね、栗田くん」
俺と同じく高卒で頑張って来た栗田は素直に褒めてやりたくなる。…そして、俺の女言葉もサマになってきた。
「しのぶさん…マジで女神っス!あの変なメイクやめてから俺…」
「ねぇ、栗田くん、そういえばぁ、私と飲みに行く約束はどぉしたのぉ?」
栗田の言葉を遮って田野島が栗田に迫る。
「あー、約束したっけ?」
「ひどぉい、楽しみにしてたのにぃ」
田野島は等々力にアプローチしていたはず…栗田にも気があるのか?
ごちゃごちゃ言い合いしているのを聞くのも面倒だ。トイレ行こ…
「あ、私もぉ」
俺が立ち上がると田野島がついてきた。なんで女って連れ立ってトイレに行くんだ?
「ちょっと」
田野島が話しかけてきた。
「なに?」
「私の邪魔しないでくれる?」




