第34話 友人 坂巻心愛②
俺は坂巻心愛が店長を務める天衣社系列の店に来ていた。
店には露出度高めの派手な服がずらりと並び、しのぶが以前着ていた様な服も沢山陳列されている。
「でさー、アンタ昔っからそうでさぁ!バッキバキにメイクしててー!そんで理由聞いたらなんて言ったと思う?『魔除け』だって!ウケる!」
さっきからこの調子である。坂巻は一人で延々と思い出話と言う名の暴露話を俺に聞かせてくる。
坂巻心愛はしのぶの専門学校時代の友人で、しのぶは営業、坂巻はアパレルに就職し、そのまま友人関係も続いているらしい。
坂巻は金髪、焼けた肌、デカ目メイクに長すぎる付け爪、ほとんど水着のようなトップスにヒョウ柄のミニスカートという、一昔前に流行った黒ギャルの様なスタイルだ。
「…でもさ、しの。アンタ変わんないわ。仕事の時だけクソやる気無い感じ出してたけど…アタシの話も聞いてくれてさ、バカにしても怒んねーし」
まぁ…俺のことじゃ無いからな…ただ、しのぶはこの友人の前では心を開いていたのかもしれないな。
「でもさ!本当にウチ…エンジェルクロースの服買わないの!?てか捨てたってマジ!?」
「うん…なんか、自分の物に思えなくて…捨てちゃった。あと、なんか肌を出すのが苦手になって」
「っかあぁー!マジ!?そんなに肌キレーなのに!美肌よ美肌!つるっつるん!もったいねー!」
「恥ずかしくなったんだから仕方ないじゃん…」
「あー…しの、アンタさ…そういう路線?男作りたくなった系?記憶喪失もウソとか?」坂巻はニヤついている。
「違う違う!本当に性格も変わっちゃったんだって!」
「まぁ、アンタがそういうならそうだよね。ウソはつかないから。男も滅多作んねーし…」
そうなのか。そして、しのぶは坂巻にかなり信頼されていた様だ。
「はーぁ。アタシもそろそろ潮時かなー。飽きたわ、この世界」
「転職?」
「あ?あー。そっか。んー。記憶喪失だからなぁー…信じるかなー…」
ん?
「アタシね、異世界人なの」
「はぁ!?」
ふ、2人目!?
「ほーらやっぱ信じない」
「いや、信じるよ。心愛が言うなら」
俺は女神フォンを見た。
「転移者が近くにいます」
坂巻も転移者だった。
そしてしのぶはその事を知っていた様だ。
「しの…やっぱアンタ、天使だわ!」また天使扱いされた。異世界人の決まり文句なのか?
「いや、大げさな…」
「しのー!大好きー!」突然坂巻に抱きつかれた。
「心愛…ちょっと…」やんわりと引き剥がす。
「はぁ…久しぶりにやったわ。魔除けメイクしてねーから天使度マックスだし。スーツじゃなかったらもっと天使だべ」
いつもやってたんかい。
「ねぇ、心愛。本当にこの世界、飽きちゃった?」
「あー?うーん。まぁ、どっちでもないわ。ガルガトルじゃアタシ、でっけー国の第5王女だったからさー。あのままでもセージの道具?にされるだけだったからね。でもこっち来ても結局、つまんねーわ。ハハハ」
ガルガトル!?これは…色々出来そう…だが…
「ねぇ、心愛。本当にこの世界に飽きて、ガルガトルに戻りたくなったら言って。何か協力できるかもしれないから」
「しの…あー!やっぱムリ!アタシアンタと離れたくない!」
また抱きつかれた。
「…そっか」
「…ねぇ、しの。アンタも何か悩んでない?記憶喪失になって、傷付いてない?それこそ、アタシが力になるよ」
「ん。大丈夫」
転移者は他にも沢山いる。
それよりも、俺が本物のしのぶでない事が、この上なく申し訳なかった。
つづく




