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第35話 危険なデート!?①

挿絵(By みてみん)

胸がないから。

元々のしのぶの友人、坂巻心愛は転移者だった。しかし、しのぶを心の支えにしている彼女を無理に元の世界に還す気にはなれず、俺は何もしなかった。


もし、俺が本物ではないと坂巻にバレてしまった時だけ、元の世界に還ってもらおう。

世界の魂バランスが彼女のせいで狂っていたとしても…俺は俺を、東雲しのぶを必要とする人を還したくはなかった。



坂巻と色々話した後、会社に戻った俺は、天衣社の内部情報と営業成果を等々力に報告した。

等々力は俺を絶賛したが、素直に喜べる心境ではなかった。


その後数日、ぼんやりしながら仕事をした。ぼんやりしていても誰も咎めず、日数だけが過ぎていった。



「…しのぶちゃん、最近元気ないね」ナターリャが俺の頬を突きながら言う。


「やめなさい」


「出た、お母さん」


「お父さん!」


「もー、本当に男に戻るのぉ?今のしのぶちゃん、可愛いのに」


「本当は男っていうか、元の身体に戻りたかったんだよなぁ…」


「…しのぶちゃん、もしかしてその身体が大事にしてた人たちの事、気にしてる?」


図星だった。


「あぁ…」


「その身体は本当は死んでるの。だから、どんな状態でも生きててくれるだけで嬉しい人だっているでしょ」


「まぁ、な…」


「暗いなぁ。まぁ、明日はデートでしょ!ミクちゃんと楽しんでストレス発散しておいでよ!」


「あ。」


すっかり忘れていた!


「やっべ…何も準備してないぞ!えーと、女のオシャレってどうすんだ?えーと、えーと…」


「オシャレしないと叱られるんじゃなーい?」ナターリャは笑いながら忠告してきた。くそっ!昨日言ってくれよ!


「あー!もうダメだ。怒られよ…」



翌日。


「しのぶちゃん!おまたせー…ってその服、私が買ったやつじゃん!新しく買ってないの!?だめじゃない!」

案の定、喜多嶋に怒られた。


「すいません。えーと、ミクさんの今日の服は、なんかカッコいいですね!」

喜多嶋はジャケットにタイトなジーンズ、ハットを被り、ジェンダーレスな装いだ。


「でしょ!今日は私がエスコートするからねっ!男役だよーん」

喜多嶋は機嫌よくその場で一回転する。うまくごまかせた。


「今日はどこにいくんですか?」


「まずは…しのぶちゃんが服買ってないと思ってたのでお洋服買いに行きます!」

ごまかせてなかった。




「しのぶちゃん、かーわーいーいー」


「絶対思ってませんよね!?」


「似合ってるよぉ、ロリータ!」


俺は喜多嶋の着せ替え人形になっていた。白とピンクのヒラヒラワンピースを着せられた。


「嫌ですよこんなの!」


「じゃああっちの店にしよ!」


「えぇ…」


あちこち歩き回って、たどり着いた店は…


エンジェルクロース…坂巻心愛の店だった。


「そ、そこはダメです!ギャル服しかないし!」


「それがいいんじゃない。ほら!」俺は喜多嶋に引きずられる様に店の中に連れ込まれた。


たのむ、休みであってくれ…!


「っしゃーせー…って…しの!?アンタ…やっぱ彼氏できたんじゃん!」


「残念、彼女でーす」喜多嶋が紛らわしいことを言う。いや、そうだったら嬉しいんだが…


「はぁ!?しの、アンタ女もイケたの!?」


「あ、いや…」


「いやいや、じょーだんじょーだん。っていうか知り合いなのね」

喜多嶋は坂巻を品定めする様に見る。


「そっす!アタシ、しのの友達の坂巻心愛っていいます。よろしくおねがいしゃっす」


「…ねぇ…坂巻さん。ちょっとお店から出られる?」


「ミクさん?」


喜多嶋は俺にウィンクした。

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