第20話 転移者がいる!②
「転移者が近くにいます」
女神フォンはそう表示している。
…この中に、転移者がいる!
なんという幸運。同じ職場に転移者がいれば、確実に1人クリアした様なものだ!
問題は誰が転移者で、どうやって女神ナターリャの前に連れていくか、だな…
ミーティングルームに集まった営業3課メンバーは、等々力の指示でそれぞれ自己紹介を始めた。
「よし。じゃあ名前、年齢、社歴、あとはプライベートな事は言える範囲でいい。俺から言おう。等々力雄介だ。39歳、バ…独身だ。16年目、課長昇進と同時にここに来て4年。東雲、栗田より後に来た事になるな。この課の成績を過去最高にしたいと考えている。よろしく」バツイチか…
「栗田源蔵、23歳っス!彼女募集中!しのぶさんと同期で5年目!高卒でもデキるとこ見せるつもりっス!あ、ちなみに俺は契約社員Bランクっス。たのまりちゃんは正社員ね。よろしくおねがいしやっス!」高卒で清光商会に入社か。すごいヤツなのかな。
「田野島真理衣ですぅ。年齢は新卒1年目なのでバレバレだから言いますけどぉ、23歳ですっ。タイプの男性はぁ、ダンディで優しい人でぇす」田野島は等々力をチラッと見ながら言った。コイツ…課長を狙ってんのか…?っていうか合コンじゃないんだぞ…
「作田洋平だ。58歳、ここは55歳で一度定年が来るから今の立場は隠居ってヤツだな。役職も剥奪されてヒラだ。お前ら3人の指導という役目を仰せつかっているが、大体は田野島のお守りだ。よろしく」
「サクさんお守りってなんですかぁ?ひっどぉい」田野島が身体をくねらせる。
「あと、ここにはいないが営業サポートメンバーに内勤の梅木菜々子さんがいる。30歳、事務処理の達人だ。困ったら梅木さんに色々聞いてくれ」等々力が補足した。
「じゃあ、しのぶさんもお願いしまぁす」田野島が俺に自己紹介を振ってきた。記憶喪失設定なんだから何も言えるわけない…いや、俺を試してる…のか?こいつが転移者か?
「おい、田野島…」
「いえ、大丈夫です課長。東雲しのぶ、25歳独身です。記憶喪失になる前はご迷惑をおかけしたみたいですが、昔の性格に戻った今の方が皆さんのお役に立てると思います。今は入社したての様な状態になってしまっていますが…この通りまともに話せるので営業はすぐ行きます!よろしくお願いします」
よし、こんなもんだろう。
…と、思ったら全員が俺を見て硬直している。何かおかしかっただろうか。
「しのぶさん…本当に変わったんスね…」栗田が信じられないという顔をしている。
「なんかデキる女って感じぃ」
「よし、こんなもんだな!では事業計画の説明と意識合わせだ!」
等々力が締めた。
自己紹介じゃ何も分からないか…。田野島が多少、怪しいくらいだ。
その後等々力による事業計画の説明があり、時間は16時半になった。
「明日の準備でもすっかぁ」栗田は自分のデスクでデータのチェックを始めた。
田野島はメイク直しをしている。おいおい…
「東雲、ちょっといいか」
作田が話しかけてきた。
「はい」
「記憶は戻るのか?医者はなんて言ってるんだ?」
「…記憶は、絶望的だそうです。性格もこのままみたいですね」何か疑われているのだろうか。
「そうか。なら…またしばらく、俺がついて営業周りするか」
「ありがとうございます。えっと、田野島さんの方は…?」
「あれには栗田か等々力をつけりゃいい」
「はぁ…」
「あとな…」作田は急に小声になった。なんだ…?




