~未改稿~
ポピガイは真っ暗な室内で、ベッドに寝転びながら瞑想していた。
「なあ、ポピガイよぅ。」老人の声がする。これはクシマだな、とポピガイは感じた。
「おぬしの目的は儂らと同じじゃろう?」
ポピガイは''心の中''で肯定した。
「なのに、何故あそこまで肩入れするのじゃ?」
それはクシマ達も同じでしょうに。
「アッハッハ、そうじゃな。だが、おぬし程過激ではないぞい。」
人類は追い詰められないと、本気を出さない。この地で長く共産主義を視てきたから。
明確な''敵''が居ないと人類は本当に、本気になれない。
勿論、やり過ぎて人類そのものを滅ぼすことは考えていない。核は使わせない。
「そうか、一緒に進めなくて残念じゃ。また会おうの。」クシマの声が遠ざかっていった。
真っ暗な室内でポピガイは僅かにふぅ、と嘆息した。
その嘆息は扉の外で見張っているKGB職員の耳には入らなかった。
「そろそろ始めよう。」
ポピガイは部屋から出ていった。
7月31日 午後8時【米国 コロラド州 シャイアン・マウンテン地下 NORAD(北米航空宇宙防衛司令部)】
ノイズ混じりの音声がスピーカーから流れる。
「こちらアンカレッジ早期警戒、ミサイル攻撃を確認………」
「アラスカ基地、沈黙。少佐、ロシアからの大規模なミサイル攻撃を確認しました。多数の弾道弾です。」管制員が冷静に報告する。
「全米に緊急警報を発令しろ。」管制官の少佐が命じる。
「400基以上の弾道弾を確認。」管制員が青ざめながら報告する。
別の管制員が報告する。
「衛星軌道上から多数の宇宙ゴミ(デブリ)が大気圏に突入。北米西海岸一帯に落着の見込み。」
「直ちに迎撃しろ!」さすがに管制官が叫ぶ。
「落下速度が速すぎて、間に合いません。」
更に別の管制員が声を上げる。
「ロシア上空のKH(米国偵察衛星の呼称)No.1からNo.11までの各基に異常発生!姿勢制御が利きません。」
「NASAに繋いでくれ。」堪らずに、統合管制官の大佐が指示する。
「それと、ワシントンにも非常回線で連絡しろ!」
NORADは混乱状態に陥った。
30分後、クシマの警告を日向首相経由で受けたペンス大統領の指示により、カンザス州ホワイトマン戦略空軍基地、ネバダ州グルームレイク研究所(通称エリア51)、フロリダ州ケープカナベラル宇宙センターから特殊な衛星攻撃ミサイル(ASAT)を搭載したF15戦闘機が出撃し、90度の飛行姿勢でミサイルを発射、衛星軌道上のロシア軍偵察衛星、通信衛星を次々に攻撃し、破壊していった。
更にバレンツ海に展開していた英国、フランス、米国の原潜が、多数のトマホークミサイルを発射してベラルーシの首都ミンスク郊外のロシア連合軍前線司令部と、ロシア本土ロストフの物資集積基地、同じくムルマンスクのロシア海軍基地を通常弾頭で報復攻撃した。
7月31日の米露双方の応酬は、結果的には米国の損害が大きいものとなった。
米国西海岸最大の軍港であるサンディエゴ海軍基地がデブリの直撃で消滅。
ロサンゼルスとサンフランシスコにもデブリの雨が降り注いで、30万人の犠牲者を出した。
また、パナマ運河もデブリの直撃で破壊され、使用不可能となった。
ハワイの真珠湾海軍基地は幸い迎撃に成功して無傷だったが、通信衛星がロシアに破壊された為、本土から孤立状態となった。
こうして第3次世界大戦の初日はロシア軍にとって、優勢のうちに終わろうとしていた。
多数のデブリ落下と米偵察衛星の機能停止はロシアの''訪問者ポピガイ''の能力によるものである。
第3次世界大戦は『地球外文明』による初の戦争介入事例となる。
大戦は始まったばかりだった。
ここまで読んで頂きありがとうございましたm(__)m
また(^^)/