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植人  作者: NAO
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――――――後年(日本の高校生が使っている現代世界史教科書より)

――――――――――【7月18日~同月21日】世界各地


 人間が突然溶解する歴史的異常事態に世界は震撼し、パニックに陥った。


 全世界の国々は可能な限りの人員を投入して治安維持と事態の収束をったが人々の溶解は止まず、世界情勢は悪化していった。



(以下、15年後に教科書検定で採用された日本の高校生が使う現代世界史教科書の記述より)


――――――7月18日 平壌標準時 正午


 北朝鮮軍が突如として中朝国境地帯を越えて中国吉林省に電撃作戦を展開し侵攻、同省内に在る人民解放軍ミサイル基地を占拠した。


 これにより北朝鮮は実戦配備可能なICBMを入手する事に成功した。


――――――同日深夜


 吉林省のミサイル基地から複数のICBMが発射され、日本海上空、北太平洋上空のそれぞれ高度400キロで核弾頭が爆発した。


 核弾頭爆発直後に大量の電磁パルスがロシア極東からアジア・太平洋地域に降り注ぎ、大半の電子機器がショートしたために大停電が発生して電気、ガス、水道、鉄道など社会インフラの殆どが使用不可能となり、各国社会では生活や経済活動が麻痺状態となった。


――――――7月19日 北京時間 早朝


 中華人民共和国政府中枢である北京の中南海地区において、汚職名目で失脚した政治局員と人民解放軍高官による軍事クーデターが発生、共産党指導部の大半が射殺された。


――――――同時刻


 上海、南京、瀋陽、西安で地方政府が北京共産党からの訣別を宣言、北京政府支持派の人民解放軍に地方政府支持派部隊が攻撃を仕掛け各地で交戦状態となり、中国全土に内戦が拡大した。



中東では黙示録の最終戦争アルマゲドンが近づいたとイスラム原理主義宗教指導者がイスラム機構各国に主張、応じたイランとイエメンが核兵器の使用準備を開始した。

 

 周辺国の先制攻撃を察知したイスラエルはイランの首都テヘランと郊外にある核施設とイエメンの首都サヌアを中性子爆弾で攻撃、イラン政府指導部とテヘラン、サヌア両都市住民の大半が、大量の中性子で細胞を破壊されて死亡した。


テヘラン核攻撃の3時間後、シリア、リビア、エジプト、ヨルダンがアラブ・イスラム殉教有志国による報復を宣言してイスラエルに宣戦布告、第五次中東戦争が勃発した。


 その日のうちにイスラエルのヨルダン川西岸とクネイトラ、シリア首都ダマスカス、リビア首都トリポリ、エジプト首都カイロ、ヨルダン首都アンマン等の都市部、アラブ有志国連合軍が集結していたゴラン高原でイスラエルとアラブ双方の核兵器が使用されこれらの都市と、ゴラン高原で対峙していたイスラエル軍守備隊とアラブ有志国連合軍は壊滅した。


 各国の核兵器使用により中東地域では放射能汚染が拡大、戦闘は自然的に停止した。


――――――7月20日 日本標準時 午前5時


 朝鮮半島38度線に展開する北朝鮮軍砲兵隊が突如として韓国首都ソウルを砲撃、ソウル市街の7割が壊滅し700万人が死傷した。


――――――同午後1時


 米帝からの同胞解放を宣言した朝鮮労働党の文委員長の命令で北朝鮮軍機甲師団が38度線の非武装地帯(DMZ)を越えて電撃作戦を展開してソウルを占領。


 北朝鮮 朝鮮労働党代表の文委員長は首都を平壌からソウルへ遷都し、南北統一による朝鮮人民連邦政府樹立を宣言した。


 アジア・太平洋のブラックアウトと北朝鮮の奇襲攻撃に狼狽して在韓米軍との連携が失敗してソウルを失った韓国政府は、釜山を臨時首都として政府機能を移転させ、国連に対して国連軍の出動と平壌、開城への核攻撃を要請した。


――――――同日夕刻


 北朝鮮の平壌放送は「公海上で操業していた漁船が日本軍国主義勢力の攻撃を受けた」として文委員長が「懲罰的な行動を取らざるを得ない」と短波ラジオで主張した。


 平壌放送の主張から2時間後、日本列島各地の在日米軍基地に北朝鮮弾道ミサイルによる飽和攻撃が行われた。


 日米のミサイル防衛システムは日本の三大都市圏を防衛する事に成功したが、中東や欧州向けに在庫の多くを搬出しており、迎撃ミサイルが不足して米軍基地への着弾を許す事になった。


 幸い北朝鮮弾道ミサイルは全て通常弾道だったが、搭載されていた放射性廃棄物が着弾地点を汚染され一時的に在日米軍は基地機能停止を余儀なくされた。


 

――――――7月21日


 インドとパキスタン双方の正規軍がカシミール地方で軍事衝突、全面戦争にエスカレートした。


 カシミール地方の両軍陣地とインドの商業都市ムンバイ、パキスタン首都イスラマバードは核兵器で破壊され、その後の放射能汚染と混乱で双方合わせて4億人が死亡した。


 朝鮮半島では韓国臨時政府の要請に応じた国連軍として米国戦略空軍がグアム島から出撃、北朝鮮首都平壌、軍需都市開城に核爆弾を投下し両都市は壊滅した。


 朝鮮労働党文委員長は消息不明となった。


――――――同日夜


 朝鮮人民連邦に代わり「北朝鮮共和国」臨時政府代表となった元人民農業相が韓国臨時政府と国連に停戦を申し入れた。


――――――同日、ヨーロッパ中央時間午後11時


 バチカン市国のサンピエトロ大聖堂でローマ法王が救済ミサを行った。


 人類は「審判の日」を迎えており、直ちに全ての戦闘行為を停止して人類全体の試練に立ち向かうべきとのローマ教皇メッセージが全世界に発信された。


――――――7月22日 グリニッジ標準時 午前4時


 7月18日からの4日間で世界人口75億人のうち3分の1が戦争により死亡、人類滅亡の危機を間近に感じた全ての人が戦慄していた。


 ニューヨークの国連本部で緊急総会が開催され、全ての国家が直ちに戦闘行動を停止する決議を全会一致で採択、世界各地の戦争は同日をもって急速に終息へと向かった。

(四省堂書籍 「世界史 21世紀初頭の世界情勢」より)



――――――その頃日本では、人間溶解現象によって赤や黄色に拡がった液体から、スライムのような生物が身じろぎをすると光を放ちながら、ある形に成ろうとしていた事に気づいた者は少なかった。

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